音楽ナタリー Power Push - ASH DA HERO
本物かフェイクか?自らヒーローを名乗る男の“反抗声明”
どういう音楽をやれば、音楽の歴史の中に正しく刻まれるのか?
──デビューミニアルバム「THIS IS A HERO」からも、いろいろな音楽のテイストを感じました。基本にあるのはロックなんだけど、R&B、レゲエなどの要素も混ざっていて。
それを感じてもらえるのはうれしいですね。1曲目から4曲目くらいまではかなりオフェンシブな曲が並んでるし、聴いてくれた人からも「攻めてますね」と言われることが多いんだけど、実はいろんな要素が散りばめられているので。例えば1曲目の「HERO IS BACK 2」は「Motley Crue万歳! ハードロック万歳!」みたいな曲ですけど、もともとのネタはレゲエなんです。ボブ・マーリーも大好きだし、ルーツレゲエも好きなので、それをハードロックに混ぜた感じなんですよね。ほかの曲にもブラックミュージックの要素は入ってたりしますね。
──ルーツはロックだけではない、と。
「パンクだけしか聴かない」とか「クラシックだけしか聴かない」というタイプではないですね。もともとのルーツもロックじゃないんですよ、実は。ただ、歌うと「ロックだね」「パンクだね」って言われるので、「自分はそういう人なんだな。僕が使うべき武器はロックンロールなんだな」と思って。たぶん、そういう音楽に向いてるんでしょうね。
──ロックシンガーとしての素質を生かしながら、自分が好きな音楽を混ぜるのがASH DA HEROのスタイルなのかも。
さっきも言いましたけど、バンドをやってるときはいつも疑問を感じていたんです。メロコアをやってたときも「流行ってるからメロコアをやるって、そんなのパンクじゃないよね?」って思ってたし。そのあとはハードコアのバンドに入ったんですけど、すぐに「自分にとってのハードコアって何だろう?」と考えてしまって。ハードコアが抑圧された状況を打破するための1本の針みたいなものだとしたら、もっと具体的なことを歌わないといけない。よくわからない英語を吠えてるだけでは、全然ハードコアじゃないよねって。そういうことを伝えると「それは違う」って言われて、メンバーとそりが合わなくなるんですよ。やっぱり、バンドは向いてないですよね(笑)。
──どんな音楽に対しても、「根本にあるものは何だろう?」と考えてしまうわけですね。
うん、そこは常に考えてますね。The BeatlesにしてもThe Rolling Stonesにしても、「なんでこういう音楽をやることになったんだろう?」「どうして“すごい”と思われてるんだろう?」って思うので。リアルタイムで経験しているわけではないから、そこが気になってしょうがないんですよ。「キャデラック・レコード」という映画にストーンズのメンバーがマディ・ウォーターズに会いに行くシーンがあるんですけど、「やっぱりそういうことなんだな」って思ったり。そしたら「じゃあ、マディ・ウォーターズはどんな音楽にインスパイアされたのか?」ということが気になって。
──音楽のルーツを遡っていく。
そうそう。そこから「2015年にいる僕はどんな音楽をやって、どういうメッセージを刻むべきか」って考えるんです。「どういう音楽をやれば、音楽の歴史の中に正しく刻まれるのか?」って。だいぶ大げさですけど、そういう血の通った音楽をやりたいんですよね。
──自分は音楽の歴史の中にいるという感覚もある?
その感覚はありますね、勘違いかもしれないけど。長い歴史の中で「ロックンロールはどこに向かうべきか?」ということもすごく思うし、「もっと先の未来の子供たちは、僕のことをどう思うだろうな?」ということも気になるんです。もちろん死ぬのはイヤだし、長生きしたいですけど、死んだあとのことに興味があるんですよね。そこで僕の音楽を聴いた人が何を感じて、何を紡ぐんだろう?って。大それた理想ですけど、そうなるためには生きてる間に結果が欲しいし、市民権を得たいんですよ。だから、めちゃくちゃ有名になりたいし、売れたいんですよね。
普段の自分にとってASH DA HEROは憧れ
──ASHさん、ライブのMCでも「売れたい、有名になりたい」ってハッキリ口にしますよね。ただ、何の説明もなく「売れたいんだよね」って言ってしまうと……。
「何言ってるんだ、こいつ」ですよね(笑)。でも、それくらいのバカさ加減じゃないと、歌なんて歌ってないと思うんですよ。基本はほら、ロクデナシだし、クズですから。音楽でゴハンを食べようって思うこと自体がクレイジーじゃないですか。でも、バカを隠そうとするほどカッコ悪いこともないですからね。
──ASHさん、クレイジーかもしれないけどバカではないですよね。冷静だし、じつはビジョンも明確だし。でも、ライブを見ると「この人、やばい!」という印象があるという(笑)。
(笑)。僕、ジミヘンも好きなんですけど、すごいキレ者だったという話もあるじゃないですか。ワイト島のフェスでアメリカ国旗に火を付けたときも、マネージャーと2人で練習してたっていう説があって。オーディエンスに危害を加えず、ステージに引火させることもなく、カッコよく国旗を燃やすにはどうすればいいか考えてた、っていう話を聞いて、やっぱりカッコいいなって思ったんですよね。「なんだ、ヤラセかよ」っていう意見もあるだろうけど、エンタテインメントですから。ジェームス・ブラウンもそうだと思いますけど、まず計算して積み上げたロジックがあって、それを壊す勇気もあって。レジェンドとは桁が違いますけど、僕もそういうことがやりたいんですよ。緻密に冷静に積み上げたものを台無しにするということを繰り返していきたいなと。
──もちろん表舞台に立つときはロックスターとして存在しなくてはいけないわけですが、注目されるのは好きなんですよね?
本名は野田なんですけど、野田くんとしては「いやいや、僕はそんなんじゃないんで」という感じですね。野田くんにとってASH DA HEROは憧れなんですよ。ASHとしてステージに立つときは、その憧れをやり切るという感じなんですよね。そうすることで、自分の中で辻褄が合ってくるというか。
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収録曲
- HERO IS BACK 2
- 結局なんにもやれてない
- 反抗声明
- WAKE UP ROCK AND ROLL BAND
- BABY GOOD NIGHT
- THIS IS LOVE
- 「THIS IS A HERO」発売記念イベントLIVE「IS THIS A HERO?」
- 2015年12月4日(金)東京都 TSUTAYA O-West
<出演者>
ASH DA HERO
GUEST ACT:Made in Asia / Fo'xTails
OPENING ACT:Outside dandy
- 「VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666」大阪・なんばHATCH公演
- 2015年12月5日(土)ゲスト:ASH DA HERO
- 2015年12月6日(日)ゲスト:Derailers
- 2015年12月9日(水)・10日(木)ゲスト:KNOCK OUT MONKEY
- 2015年12月12日(土)・13日(日)ゲスト:Nothing More
ASH DA HERO(アッシュダヒーロー)
「ロックンロールに夢と希望を。ロックンロールに栄光の光を。」という目標を掲げて活動する男性ロックボーカリスト。10代の頃から地元・愛知で音楽活動を行い、2013年まで在籍していたバンドでは海外のフェスにも出演した。2014年春よりASH DA HEROとしての活動を始め、VAMPSやMONORALが所属する音楽事務所・VAMPROSEに所属。2015年12月にミニアルバム「THIS IS A HERO」で日本クラウンからメジャーデビューを果たした。