杏沙子「ファーストフライト」 PR

杏沙子|私だけの景色に向かって羽ばたくとき

杏沙子がABCテレビ連続ドラマ「ランウェイ24」の主題歌「ファーストフライト」と、NHK「みんなのうた」(4月・5月)に採用された「ケチャップチャップ」を収録した1stシングル「ファーストフライト」を8月7日にリリースする。

表題曲の「ファーストフライト」は前をまっすぐに見据え、等身大のまま、あらゆる困難や壁に立ち向かおうとする思いを歌った1曲だ。アートワークではこれまでのポップな方向性から一転し、大人の女性を感じさせる凛とした表情がフィーチャーされている。1stアルバム「フェルマータ」のリリース、東京と大阪でのワンマンライブを経て、どんな変化が彼女に訪れたのか。シンガーとして新たな高みに向かって飛び立とうとする彼女の“今”に迫った。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 星野耕作

実話から生まれた「ケチャップチャップ」

──アルバムリリース後、テレビの歌番組などで杏沙子さんの姿を目にする機会が増えました。

杏沙子

ありがとうございます。ありがたいことに1stアルバムをリリースしてからテレビに出させていただく機会が増えたんですけど、たくさんの人の目に触れたり、自分の曲が耳に入ったりすればするほど、自分を強く持ってないと簡単に“自分の色”が変わってしまうものだなと思って。そういうことを「フェルマータ」を出したタイミングで知れてよかったと思ってます。あのアルバムの曲は歌わされたものでもなく、誰かっぽいものでもなく、紛れもなく自分自身の音楽だなと思えた。その音楽を皆さんにいいと言ってもらえたことも自信につながったし、より自分のことを信じられるようになりました。

──周りの状況も変わってきましたか?

はい。でも、だからこそ、この半年で“自分の色”がわかったかもしれないですね。

──自分の色というのは、具体的にどういうものですか?

うーん、具体的には言えなくて。ただこの半年の間で、歌詞やメロディを作っていくときに、「これが正解だ」と思う瞬間に敏感になったんです。言葉選びに関しても、理由や根拠はないけど直感が働くようになった。まだ言葉にできないけど、自分の中の正解がわかるようになったんです。しかも、自分がいいと思ったものを形にして出せるようになった。

──歌声や歌詞からは変化の過渡期にあるような印象を受けました。ここからは曲が発表された順にお話をお伺いしていきたいのですが、まず「ケチャップチャップ」がNHKの「みんなのうた」に決まったときはどんな気持ちでしたか?

めちゃくちゃうれしかったです。1週間くらいで書いたので正直決まると思ってなかったんです。

──そんな速いスピードで作った曲だったんですね。どんなところから生まれた曲なんですか?

私がオムライスを作ろうと思ったときのエピソードがきっかけで。ケチャップが家にあると思って、それ以外の材料をスーパーで買って帰ったら実はなかったという。でも、もうオムライスを食べる口になっていたので、「絶対にオムライスを作る!」と思ってケチャップだけを買いにもう一度スーパーに向かったんです。そのときに階段をリズミカルに降りてたら「ケチャップチャップケチャップ」と鼻歌で歌ってて。

──無意識に歌ってたんですね(笑)。

はい。家に帰ってからすぐ録音して。最初は音の楽しさを優先して、子供たちも口ずさめたらいいなとか、「みんなのうた」ならお母さんや家族も一緒に観るだろうから愛が感じられるものがいいなとか思いながら歌詞を膨らませていったんですけど、オチでちょっと悩んでしまったんです。最初は“あなた”が買ってきたケチャップを、オムライスにかけて食べて終わるだけの話だったんです。でも、スタッフの皆さんと「そのオチは予想できるんじゃないか」という話になったときに、あるスタッフさんが冗談で「実はケチャップが家にあったみたいな話はよく聞くよね」と言ったのを聞いて「それだ!」って。

──それで、歌詞にある棚の奥にしまわれていた“脇役B(ケチャップ)”が誕生したんですね。

杏沙子
杏沙子

主婦の方には「管理能力のなさ!」とか「賞味期限が心配だ」と言われたりしまたけど(笑)。急いで買って帰ってきてくれた“あなた”に、実はケチャップが家にあったことを内緒にする、そういう気遣いも一種の愛だなと。それで、一緒に“幸せ”を作るような終わり方にしました。

──脇役Bの台詞パートの声はどなたがやってらっしゃるんですか?

私です。

──ええっ!? 男性の方かと思ってました。

誰も私だって思ってないんですよね(笑)。家でいろんなパターンを1人で録ったんです。もっと高い声もあったし、お相撲さんみたいに低い声もあったし。最終的にお相撲さんみたいな声が採用されたんです。もともと曲中にセリフはなかったんですけど、スタッフさんと話していく中で「ケチャップを擬人化するとかわいいんじゃないか」という意見が出てきて。脇役Bは台詞があったから生まれてきたところがあります。

──自分の曲にアニメーションが付いたときはどう感じました?

感動しました! 録画を繰り返し観ました。でも、脇役Bがかわいそうで、すごい申し訳ないことしたなって(笑)。しかも、穏やかな顔をして戸棚に帰っていくんですよ。

──脇役Bの気持ちになって観ると切ないですよね。

はい。でも私はちょっと切ないけど、根底には愛がたくさんちりばめられた感じが気に入ってます。

──周りからの反響も大きかったのでは?

はい。歳上の友達やいとこから子供が歌ってる動画が送られてきました。それがすごくうれしかったです。今まで私の音楽を聴いてくれる子にちびっこがあまりいなかったので、リスナーの幅が広がったのを実感できました。ちびっこが聴いてくれているだけでなく、一緒に歌ってくれてるのは、ただただうれしかったですね。

自分と重なったドラマの主人公

──そして表題曲はテレビドラマの主題歌ですね。初めてドラマ主題歌を担当することが決まったときの気持ちはどんなものでしたか?

杏沙子

すごくうれしかったです。いつかドラマの物語に合わせて曲を作ってみたかったんです。今回はドラマのあらすじや資料をいただいて曲を書き下ろして。そしたら「ドラマの内容にぴったりです」と選んでいただけました。

──ドラマのプロットを読んでどう感じましたか?

「ランウェイ24」の主人公が26歳で、私と同世代なんですね。パイロットだったお父さんに憧れて、パイロットになる夢を追いかける話なんですけど、それも自分と重なって。私が今、歌を歌っているのも過去の憧れが“エンジン”であり軸になってるんです。歌に対する憧れがなくなったら自分の人生じゃなくなるというか。そういう感覚に共感できたので、主題歌では主人公の子に対してのエールとしても、今の自分の歌としても書けるなと思いました。

──過去のインタビューでもお話しされているかと思いますが、杏沙子さんの憧れ、“エンジン”というのは?

松田聖子さんの歌ですね。地元にいた頃、歌謡曲好きの母が車の中で聖子さんの曲をずっと流してたんです。聖子さんの歌って1曲ごとに声の色が変わっていくし、物語を語ってくれてる人みたいで聴くのがすごく楽しくて。松田聖子さんの歌に憧れを抱いたのが原点で、今も私の原動力になっています。

──杏沙子さんはこれまでご自身で物語を作って歌詞にしてきたと思いますが、今回はドラマの世界に合わせて歌詞を書かれていますね。

私にとっては初めてのことだったので、書けるかどうか自分でもわからなかったんですけど、むしろ書きやすかった。考えてみれば、これまで作ってきた曲も自分で物語を作って、その物語の主題歌を作ってるような感じだったんです。だから、すでに存在するドラマの物語の主題歌を作るという意味では、これまでと同じ感覚でスムーズだったし違和感もなかった。