アルカラ|ロック界の奇行師、15年の歩み

結成以来最大の事件は?

──15年を振り返ってみて、大きな出来事と言うと?

稲村 2010年の5月、東京に出てきたときかな。神戸は居心地よくて、バンドやりながら仕事するそれぞれのライフスタイルもできて、そうなると何かと保守的になりがちじゃないですか。そんな中、2009年にアメリカのシアトルでライブをさせてもらって、まだ可能性あるなと感じられたのが大きくて。30歳になる手前、ギリギリのタイミングで当時の環境を壊して、「東京でやってみようや」って決断できたことに意味があったと思います。そこから出会いもグッと増えたし、自分らが扉を開けることによって始まるストーリーがけっこうあるとわかった。

下上貴弘(B)

下上 上京する1年前くらいに、疋田が「どうしてもやりたい仕事がある」言うて就職したんですよ。それなのに辞めてもうて、コイツめっちゃアホやなって思った(笑)。

疋田 仕事は楽しかったんですけど、上京の話が出て天秤にかけたときにバンドのほうがやりたくて。東京でダメやったら、あきらめもつくし、人生1回しかないから。

田原 僕は島根から関西に出てきてたんで、住む場所が変わるのは全然よくて。ほかにやることもなかったし。

下上 あと、この15年で言うたら、田原が集合時間に現れなかった事件な。

全員 わはははは!(笑)

稲村 あったわー。2004年くらいか。

下上 大阪でライブがあって、当日の朝やな。いつもそんなに遅れない田原が来なくて、電話もつながらない。とりあえず機材を積んで家まで迎えに行くことにしたんですけど、最初は車内で「アイツ寝てんのか?」とか笑っとったのに、連絡がまったくつかなくてだんだん「もしかして、マジでヤバいやつか?」みたいに重い空気になって。

稲村 あんとき、バンドマンの失踪とか多かったしな。車から何回かけても電話出えへんくて。

下上 で、田原の家に着いたんですけど、玄関に鍵かかってなくてドアが開くんすよ。チラシとかめっちゃ散らかってるわ、床にマヨネーズがボンと置いてあるわ、もう不気味やったわー。恐る恐る中に入っていったら、奥にある布の塊みたいなんから「うわあ!」言うて田原が出てきたんよな。

田原 夜勤のバイト明けで爆睡しててな(笑)。田舎もんやから、鍵もかけないほうで。俺は俺で、真っ暗な部屋に誰かの人影が見えたんで「なんや!」思って。

稲村 こっちのセリフや! 「なんか事件あったんか?」思うくらい部屋が汚かったの覚えてるなあ。

疋田 人騒がせな(笑)。

稲村太佑(Vo, G)

稲村 しょうもない事件、いっぱいありますよ。「ツアー先でバーベキューした」みたいな話を誰かに聞いたら、そういう遊びに憧れて。長崎に行ったとき、夜のコインパーキングでバーベキューしたりな。

下上 最初はみんな「やんの……?」って雰囲気やった。真っ暗やから、肉焼けてるかわからんし。

稲村 でも、いざやり出したらおもろなってきたよな。雨降ってたから機材車のトランクを開けて、その下でジュージュー焼いてました。途中で警察や管理会社の人がやって来たけど、「いやー! パーキングのロックがヘンな感じで上がっちゃって、僕らも困ってるんすよねえ」とか言うて誤魔化して。まあ、15年間いろいろありました(笑)。

これまでのルールを崩した「KAGEKI」

──ニューアルバム「KAGEKI」についても聞かせてください。

稲村 これまでは、アルカラのアルバムは8曲入りでやってきたんですが、一旦崩してみました。僕らのストレートな部分だけじゃなく、幅広い魅力をいかに楽曲で見せていくか。そういうことを考えるいいきっかけになる1枚やと思います。

──さっきのお客さんの話じゃないですけど、8曲のアルバムの作り方に慣れてしまった?

稲村 それはありましたね。曲順にしても自分の中である程度ルールができてて、「これでひとストーリーやな」みたいな。でも、今回は12曲なので、いい感じに聴ける流れを何パターンも考えて。普段プラスアルファの部分をそれぞれが出そうとはしたよな?

疋田 うん。なるべくフレーズや音の振り幅が出るように考えて叩いた。

田原 制作後半にできた曲にはより違うテイストを入れて、音色に変化を付けてみたり。

──そのおかげもあって、今までの8曲入りのアルバムよりも聴きやすくて、短くすら感じる心地よさがありました。通して聴くと、アルカラの信念やユーモアがすごくクリアに伝わるし。

稲村 うれしいですね。

──「如月に彼女」のイントロなんか、とても新鮮でした。あのドリーミーなギターの音色はどんなイメージで作っていったんですか?

稲村 実は最初にイメージはほとんどないんですよ。弾いてみて「なんかええやん」という部分が多くて。僕らって、0を1にする工程に意味がない。だから「こういう感じの曲が書きたい」とかが最初になくて、それはもうちょい骨格が見えたあとに出てくる。とりあえず、それぞれ弾いて叩いて歌ってみるんです。で、「この曲って、こんな歌詞かなあ」「こんな歌詞が付きそうやし、こんなフレーズええかも」みたいな進め方。だんだん絵を描いていくような。

──なるほど。

田原和憲(G)

稲村 例えば、花の絵が完成形だったとしても、まず花を描こうとしないで適当に絵の具を壁にバーンってぶつけるんです。ほんで「これって、花っぽいよね?」とか、「ここが赤いから、薔薇ってことにしようぜ」みたいな曲作り、セッションをしていくっていうのがアルカラやと思います。

田原 「如月に彼女」のギターは、まさに曲を作りながらフレーズを当ててみる感じでしたね。

──「コンピュータおじさん」にしても、唐突な展開なのになぜかすっと入り込めて楽しめちゃう。そこに15年の積み重ねを感じたりもしました。

稲村 すごく腑に落ちる話ですね。って言うのは、「歌詞やフレーズを何かに寄せるとか、こうしたら聞こえがいいとか、もうええやろ」と思いながら曲を書いてたので。自分がやりたいファーストインプレッションに自信を持ってやればよくて、その感覚はホンマに15年やってきたからこそな気がします。「コンピュータおじさん」みたいな表現って音楽を作る人の唯一の場所と言うか、その人にしかない毒が出せるでしょ? ファンシーでふざけた曲に見せかけて、最後は悲しい歌にできたのもええなと。

──めっちゃ攻撃的な「さ・あ・な」がある一方で、真逆な「ひそひそ話」があったり、バラエティに富んだアルバムになりましたね。

稲村 そこがアルカラの魅力でしょうね。ただどの曲も基本的に勢い重視なんで、そこに一貫性が出るんやろうな。

アルカラ「KAGEKI」
2017年7月26日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
アルカラ「KAGEKI」初回限定盤

完全生産限定盤 [CD+グッズ]
4500円 / VIZL-1194

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アルカラ「KAGEKI」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64811

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収録曲
  1. 3017
  2. HERO
  3. キリギリスのてんまつ
  4. 如月に彼女
  5. さ・あ・な
  6. コンピュータおじさん
  7. ひそひそ話
  8. LET・IT・DIE(Album ver.)
  9. ピーターパンと夢の中
  10. 銀河と斜塔
  11. さすらい

ツアー情報

アルカラ「KAGEKIにやってくれないかチュアー」
  • 2017年10月27日(金)千葉県 K'S DREAM
  • 2017年11月1日(水)宮城県 仙台MACANA
  • 2017年11月2日(木)岩手県 Club Change WAVE
  • 2017年11月24日(金)北海道 苫小牧ELLCUBE
  • 2017年11月25日(土)北海道 Sound Lab mole
  • 2017年11月30日(木)香川県 DIME
  • 2017年12月1日(金)岡山県 PEPPERLAND
  • 2017年12月3日(日)広島県 SECOND CRUTCH
  • 2017年12月5日(火)福岡県 DRUM Be-1
  • 2017年12月14日(木)石川県 vanvanV4
  • 2017年12月15日(金)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2018年1月6日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2018年1月8日(月・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2018年1月27日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
アルカラ
アルカラ
稲村太佑(G, Vo)、下上貴弘(B)、田原和憲(G)、疋田武史(Dr)の4人からなるロックバンド。2002年7月に結成され、2003年2月に現メンバーとなる。2008年に1stアルバム「そうきたか」を発表。2011年7月にアルバム「こっちを見ている」でメジャーデビューを果たす。2013年には地元・神戸を舞台にしたサーキットイベント「ネコフェス」を主催し、以降毎年実施している。また9月にリリースしたアルバム「むにむにの樹」を携えて行った全国ツアーでは全25公演で10000人を動員した。その後もコンスタントにリリースを続け、2016年11月にアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「炒飯MUSIC」を収録したシングルを発表。2017年7月には結成15周年を迎え、同月にアルバム「KAGEKI」をリリースした。自らを「ロック界の奇行師」と名乗って活動中。