音楽ナタリー Power Push - ART-SCHOOL

B面集で見えた本質

もっとみんながいい曲だねって思ってくれるような曲を作りたい

──歌詞の内容も第2期以降は少し変わってきましたね。以前のようなヒリヒリと尖った感じというよりは少し柔らかくなって。

木下 そうですね。今回マスタリングのときに昔の曲を聴き返して「こんなに苦しんでたのか」と思いました。キツかったんだなあ、と。

──アーティストが苦しんでいる分、その苦しみを分かち合えるファンがいたってことですね。そういう意味で、アーティストにとっても聴き手にとっても「青春」がここにあるという感じです。

木下 そうだといいな。でも、僕はもう一度青春を味わいたいですけどね。

──どんなにもがき苦しんでも、10代に戻れるならそれに越したことはない、と思いますね。また同じ間違いを犯すだろうけど。

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木下 今のスキルを持って戻りたいですよね。

戸高 でもそうして10代に戻ったとしても、周りの子と擦り合わなくて、結局1人になっちゃうんじゃないかと思うけど(笑)。

木下 戻らなきゃよかったって悩むんだろうな。

──結局青春って、バカだから青春なんですよね。

木下 本当あの頃はバカでしたね。毎回ドラムセットに飛び込んでたもんなあ。NirvanaやSonic Youthのライブ写真を見て「みんな飛び込んでるじゃん」と思って、僕も毎回飛び込んでましたね。

戸高 すげえ桜井さんイヤそうにしてましたよね。ドラムセットって繊細だから、金具がちょっと曲がっただけでも音がおかしくなるって。

木下 うん。「もうやめてくれ」って言われた。

戸高 僕の貸したギターをブン投げたりもしてましたよね。

──戸高さんには感謝しないとね。それでもこうして付き合ってくれてるんだから。

戸高 本当ですよ! なんで自分がまだART-SCHOOLに残っているのかよくわからないくらいです(笑)。

──でも今の4人になってからはバンドも安定しているように見えます。

木下 メンバーはみんな一流の人たちだから、もっとメンバーもファンのみんなもいい曲だねって思ってくれるような、そういう曲を作っていきたいなと思ってます。

──いいメンバーに支えられて音楽ができていると。

木下 そうですね。なので……もっと売れればいいなと思います。

戸高 全然売れそうな話してないのに(笑)。

「Cemetery Gates」はART-SCHOOLの心臓

──今作を作ってみて、今後の作品作りに何か生かせそうですか?

木下 ピュアな気持ちと軸はブレずに、ちゃんとカッコよく成長してる姿を、いい音楽を届けられればなって思ってます。本当にそれだけです。

──木下さんが書いた解説には「今の自分には書けない曲だ」というフレーズが何度か出てきます。

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木下 初期の楽曲ですよね。「ステート オブ グレース」とか「1965」みたいな。この頃の僕って本当にバカみたいですけど、とにかく汚れることや汚れてる奴とかがイヤだったんです。僕が言う汚れてるっていうのは、裏表があること。この曲を書いた頃、20歳頃の僕は外面はよくても内面は最悪みたいな、こういう大人にだけは絶対なりたくないと思っていた。今となってはそういう人たちの気持ちも少しはわかるようになりました。

──それは成長ですよね。

木下 当時の楽曲を聴いて本当にピュアな歌詞だと感じたし、同時に軸はブレてないんだなって思いました。こういう歌詞はもう書けないけど、そういう世界観みたいなものはいまだにブレてない。

──「失くしてしまうことは悲しいことじゃない」と佐野元春も歌ってますしね(「レインボー・イン・マイ・ソウル」)。

木下 失っていくことって、誰だって経験するじゃないですか。大人になって、年を取るにつれて。それは僕にとっては、もっとも心を揺さぶられる出来事なんです。失っていくことって、実は神秘的で、一番感動的なこと。僕らも生まれたことの意義なんて知るわけもなく年を取って死んでいく。その繰り返しでしょ、人類なんて。だから……何を話してるのかわからなくなってきましたけど(笑)。

──ツアーでは当然今作の曲もたくさんやると思いますが、曲を作った頃の気持ちになって歌えそうですか?

木下 精一杯がんばります。でも、決して歌ってて楽しくはないですよ(苦笑)。

──楽しくなくても、でも歌わずにはいられなかったってことですよね。

木下 この当時はそうでしたね。僕ももう38歳で「違う人間に生まれたかったんだ」(「LUCY」の歌詞)とか、「誰のため 鐘は鳴り続けるのだろう」(「MEMENT MORI」)って歌うのは痛いなあと思うし。でも痛さを自覚しながら歌うのがアーティスト……なんですかね?

──一度世に出した限りは責任があるってことですよね。

戸高 そしてそれを今もなお求められているっていう。

──幸せですね。

木下 うん。うれしいですね。

戸高 この作品にはART-SCHOOLの本質的なものがあると思います。あと、僕らはずっと、ファンの方からアルバム曲やカップリング曲にいい曲が多いと言われ続けてきて、自分でもそう思ってたので、今回ちゃんとコンパイルできてよかったなと。今、これをリリースすることで、次の作品にまたつながっていきそうだし。

木下 B面集だけど、このアルバムはART-SCHOOLの心臓みたいなものだから。このタイミングでこれを出せたことで、なんか振り切れた作品が作れそうな気がする。

B SIDES BEST「Cemetery Gates」 / 2017年1月25日発売 / 2700円 / Warszawa-Label / UK.PROJECT / WARS-003
「Cemetery Gates」
収録曲
  1. ニーナの為に
  2. ステート オブ グレース
  3. 1965
  4. プール
  5. I hate myself
  6. レモン
  7. LILY
  8. SKIRT
  9. LOVERS
  10. MEMENT MORI
  11. JUNKY'S LAST KISS
  12. LUCY
  13. カノン
  14. LITTLE HELL IN BOY
  15. LOVERS LOVER
  16. それは愛じゃない
  17. その指で
  18. Ghost of a beautiful view

ART-SCHOOL B SIDES BEST「Cemetery Gates」発売記念インストアイベント

2017年2月18日(土)
東京都 タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
START 21:00
<出演者>
木下理樹(ART-SCHOOL)
内容:弾き語りミニライブ&サイン会
2017年2月25日(土)
大阪府 FLAKE RECORDS
START 20:00
<出演者>
木下理樹(ART-SCHOOL)
内容:弾き語りミニライブ&サイン会
2017年2月26日(日)
愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店 イベントスペース
START 18:00
<出演者>
木下理樹(ART-SCHOOL)
内容:弾き語りミニライブ&サイン会

ART-SCHOOL LIVE 2017 B SIDES BEST「Cemetery Gates」

2017年3月25日(土)
大阪府 Shangri-La
2017年3月30日(木)
東京都 WWW X