音楽ナタリー Power Push - Aqua Timez

10周年を経て見つけたもの、今鳴らすべき音楽

「ロックが好き」って言う自由

──アルバム「アスナロウ」に収録された楽曲のアレンジも本当に多彩ですよね。アコギと歌で始まってEDMサウンドに移行する「空想楽」、ヘビーなギターリフでスタートして、アウトロでも長尺のギターソロが炸裂する「We must」、アイリッシュパンクとクリスマスソングが1つになった「ソリに乗って」、UKロック経由の憂いのあるメロディを軸にした「三日月シャーベット」。1枚のアルバムでこれだけいろんな音楽が楽しめるって、なかなかないと思います。

太志 そうですね(笑)。

TASSHI そうやって言葉にしていただくと「確かに」って思いますね。

太志 メンバーそれぞれ音楽性も違いますからね。ロックだけが好きっていう人も1人もいないし。この2人(大介、OKP-STAR)はMetallicaが大好きなんですけど、「この人たち、ロックだな」と思ったことはないので。

OKP-STAR(B)

大介OKP-STAR ハハハハハ(笑)。

──「ナポリ」には「OKP-STARじゃない ついでに言うとROCKでもない」という歌詞がありますね。

太志 その後にある「OKP-STARはろくでもない」との韻の都合もあったんですけど(笑)。ロックじゃないのは真実ですね。ロックアーティストって生活感が見えないじゃないですか。でも、この2人はステージに立っていても生活感がすごく見えるし、「素敵な暮らしをしてるんだろうな」って思うので。でも、「ロックが好き」って言う自由もあるというか。そういう人たちが作ってる音楽なんですよね。

「昔のほうがよかった」はナシにしたい

──等身大であり、個性的でもあるメンバーがそろっているんですね。

太志 しかも全員が前に出るタイプではなくて「どうぞどうぞ」って譲ることが多いんです。だから僕は好き勝手に曲を作っていられるし、「こういうアレンジにして」と抽象的なことを言っても、メンバーがそれをしっかり形にしてくれて。そういう役割分担もできているんですよね、今は。

TASSHI うん、そうだね。

太志(Vo, G)

太志 ただ、一方では「仲良しのままではダメだな」という気持ちもあったんですよ。最初の10年はそれでよかったのかもしれないけど、15年、20年と続けていくためには、仲間意識みたいなものに甘えてちゃいけないなと。「アスナロウ」という曲では、まさにそのことを歌ってるんですよね。

──音楽を長く続けていくためには、このタイミングで意識を変えなくちゃいけないと?

太志 そうですね。時代の流れみたいなものもあると思うんですよ。流れがついて来てるときはいいけど、来てないときにどういう音を鳴らすかが大事だし、ファンの人たちはそこを見ていると思うので。僕らはしぶとくやっていきたいし、「昔のほうがよかった」というのもナシにしたいんですよね。だから今回のアルバムでは、自分なりのミクスチャーの中で、今まで一番の曲を作らなくちゃいけないと思っていたいんです。それを形にできたのが「アスナロウ」なんですよ。メンバーの熱量も高かったし、アレンジもいつも以上に丁寧に仕上げてくれたし。

TASSHI 「アスナロウ」はアルバムの1曲目という前提で作っていたし、来年から始まるホールツアーの1曲目でやりたいというイメージもあって。サウンドだけではなくて、「ステージもこうしたい」ということも考えていたんですよね。もちろん太志がこの曲を持ってきたときの思いも感じていたし、自分たちとしても「今までの曲を超えるミクスチャーサウンドにしよう」という気合いがすごくあって。途中で難航もしたけど、いい曲になりましたね。「太志の歌にどう寄り添うか?」という根本のテーマもうまく詰め込めたんじゃないかなって。

mayuko 今までにないカッコよさを出せた曲だと思います。歌詞を見たときも、喝を入れらるような感じがありました。

15周年、20周年を目指す

──楽曲を通して、まずはメンバーに思いを伝えたかったんでしょうね。

太志 あまりないことだと思いますけど、自分自身がそのことを強く感じていたので、それを歌詞に書かないのはおかしいなって。ぬるま湯状態なのはバンドとしてよくないと思ったし、楽曲を通して「ここからがんばっていくんだ、もう1回進むんだ」と伝えたかったんでしょうね。もちろん、裏側ではもっといろんな話をしてますけどね。「今のままでは20年持たないよ」「自分から動けない人は置いていくよ」くらいの気持ちがあるので。誰かに「これをやって」と言われるのを待つなんて、10年選手はやっちゃいけないと思うんです。楽曲にしても「言われたからやるんじゃなくて、勝手にどんどん書いてほしい」って。今回のアルバムのタイミングではあまり強い曲がなかったから、最後は自分を追い込んで書きましたけどね。その結果、15曲まで増えて、内容も濃いものになったからよかったんだけど。

──なるほど。メンバーそれぞれ、音楽との向き合い方を見つめ直すタイミングでもあったんですね。

大介(G)

大介 そうですね。バンドにもよると思いますが、活動期間が長くなってくるとどうしても“なあなあ”なところが出てくるんですよ。それでうまくいけばいいけど、この先のことを考えると「危機感、向上心を持って自分を奮い立たせないと、落ちていってしまうな」ということを自分自身も感じて。そうならないために、自分は何をするべきかをすごく考えてましたね。曲作りもそうだし、バンド全体のこともそうだし、自分の楽器演奏のこともそうだし。最低限、自分が脱落しないようにがんばらないといけないので。今は音楽をやれる環境が整っていて、すごく恵まれていると思うんですよ。こういう状況のうちにやれることをやっておいたほうがいいですからね。

OKP-STAR 「アスナロウ」の歌詞もそうだし、個人的にも太志からいろいろ言ってもらったんですよね。自分は一応、バンドのリーダーとしてやらせてもらってるんですけど、どう引っ張っていいかわからない時期もあって。喝を入れてもらうじゃないけど、太志に言ってもらったことで「考え過ぎてた部分もあったな」と気付けたんですよね。太志にそういうことを言わせてしまったこと自体、申し訳なかったなという気持ちもあって……そういう状況の中で、今までで一番カッコいいと思える曲を作り上げることができたのは、すごくよかったです。15年、20年を目指す上で、大事な1曲になると思いますね、「アスナロウ」は。

──メンバー間の率直なコミュニケーションに裏付けられた楽曲なんですね。

太志 はい。メンバーとそういう話ができなくなったら、たぶんバンドは終わると思うんです。何もしないでいたら、1年くらいアッと言う間に経つじゃないですか。そう思うとそのままにしておくことはできないなって。365日のすべてをバンドに使うと息が切れちゃうだろうし、映画を観たり、散歩したり、友達と遊ぶことも音楽に還元されると思うけど、今回の場合は「12月14日にアルバムを出す」って決めて、その中でベストを尽くして。人に喝を入れられるほど自分は完璧ではないけど、何も言わず、コミュニケーションがなくなるのが一番よくないですからね。今は意見交換がしっかりできているし、それが再スタートにつながっていると思います。

ニューアルバム「アスナロウ」 / 2016年12月14日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] / 3900円 / ESCL-4767~8
通常盤 [CD] / 3200円 / ESCL-4769
team AQUA限定盤 [CD+DVD+オリジナルデザインタオル] / 5000円 / ESC8-21
CD収録曲
  1. アスナロウ
  2. 最後までII
  3. 空想楽
  4. We must
  5. 冬空
  6. 12月のひまわり
  7. ソリに乗って
  8. サンデーパーク
  1. ナポリ
  2. Dub Duddy~ライブ前日に見た夢~
  3. 三日月シャーベット
  4. 閃光
  5. Pascal
  6. 生きて
  7. 魔法を使い果たして
初回限定盤DVD収録内容
  1. 生きて Music Video
  2. 最後までII Music Video
  3. 12月のひまわり Music Video
  4. アスナロウ Music Video
  5. アスナロウ Music Video Off Shot Movie
  6. Aqua Timez 47都道府県“Back to You” tour 2015-2016 Live&Documentary 予告編ショート
team AQUA限定盤DVD収録内容
  1. ディレクターTASSHIによる「12月のひまわり」Music Video Off Shot Movie 特別編
  2. 「まだ、はじまったばかりプロジェクト」イベント20161002@岐阜Off Shot Movie
  3. Aqua Timez 47都道府県“Back to You” tour 2015-2016 Live&Documentary 予告編ロング
アスナロウ TOUR 2017
  • 2017年2月4日(土)埼玉県 狭山市市民会館
  • 2017年2月11日(土・祝)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2017年2月12日(日)山口県 スターピアくだまつ大ホール
  • 2017年2月18日(土)群馬県 渋川市民会館
  • 2017年2月19日(日)茨城県 常陸太田市民交流センター パルティホール
  • 2017年2月25日(土)静岡県 三島市民文化会館ゆぅゆぅホール
  • 2017年3月4日(土)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2017年3月11日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2017年3月12日(日)岐阜県 バロー文化ホール
  • 2017年3月17日(金)熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
  • 2017年3月18日(土)福岡県 福岡市民会館
  • 2017年3月20日(月・祝)福井県 鯖江市文化センター
  • 2017年4月1日(土)宮城県 電力ホール
Aqua Timez(アクアタイムズ)
Aqua Timez

太志(Vo)、OKP-STAR(B)、大介(G)、mayuko(Key)、TASSHI(Dr)からなるロックバンド。2003年の結成後、東京を中心に活動を展開し、2005年発売のインディーズ盤「空いっぱいに奏でる祈り」がクチコミを中心に話題を集め、70万枚を超えるセールスを記録する。そして2006年4月にはミニアルバム「七色の落書き」でメジャーデビュー。さらに同年リリースのシングル「決意の朝に」「千の夜をこえて」が立て続けにスマッシュヒットし、その年の「NHK紅白歌合戦」にも出演する。以降、さまざまなジャンルを融合させた独特のサウンドと、琴線に触れるエモーショナルな歌声、メロディを武器に16枚のシングルと6枚のオリジナルアルバムをリリース。そして2016年12月、7枚目のオリジナルアルバム「アスナロウ」を発表した。