音楽ナタリー PowerPush - Aqua Timez

すべては言葉とメロディのために

Aqua Timez 6枚目のオリジナルアルバム「エルフの涙」がリリースされた。

2012年リリースの前作「because you are you」ではギターロックサウンドを前面に押し出したAqua Timez。しかし今回の「エルフの涙」は一転、ギターロックあり、シューゲイザーあり、レゲエあり、ヒップホップあり、ワルツあり。ソングライター太志(Vo)のメロディメーカーとしての実力と、楽器隊のアレンジメント能力の高さ、プレイヤーとしての腕を満天下に見せつける1枚に仕上がっている。

今年デビュー10周年イヤーへ突入した彼らにいったいどんな転機があったのか。5人に聞いた。

取材・文 / 成松哲

 
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ライブ三昧の果てに生まれた、ある欲求

──前作「because you are you」は、特に前半で顕著だったようにギターサウンドを前面に押し出した、いわゆるロック色の強い楽曲が中心のアルバムで……。

mayuko(Key, Piano) はい。

──ところが今作「エルフの涙」は1曲目の「アダムの覚悟」がギターを重ねまくったシューゲイザーテイストで、3曲目「ヒナユメ」はアコースティックでメロウなヒップホップ。6曲目「赤い屋根の見える丘へ」がフィドルの音が特徴的なワルツで、11曲目の「The FANtastic Journey」はレゲエ系のパーティチューン。バラエティに富んだ楽曲が並んでいます。けっこう大胆な転向をしましたよね。

TASSHI(Dr) そうですね……って僕から話し始めていいんですか?

一同 どうぞどうぞ(笑)。

TASSHI じゃあ改めて(笑)。去年1年、僕らはリリースらしいリリースをしてなくて、ライブに軸足を置いて活動をしていて。今までやってなかったような対バンを迎えてのツアーをやったり、秋の学園祭ツアーを組んだり、今年の春にはファンクラブツアーをやったりしていたんですね。で、そのツアーの最中、今年デビュー10周年を迎えることもあって「自分たちの求めるAqua Timezとはなんなのか?」「ファンの求めるAqua Timezとはなんなのか?」「どういう音楽を作りたいのか?」。そういう根本的なところをけっこう話し合ったんですよ。

──その話し合いをきっかけにサウンドに変化が?

TASSHI そうですね。前作を作っているあたりまでは、おっしゃる通り、メンバー全員いわゆるロックに対する意識が強かった。バンドである以上、やっぱりロックバンドとしていたいし、イマドキのロックシーンみたいなものへの憧れも強かったんですけど、自然と「自分たちの強みはそこじゃないんじゃないか?」って話になって。

mayuko 「because you are you」っていうアルバムができて、自分たちの中にあるロックみたいなものをやりきった感がすごくあったんですよ。ずっと作りたかった音質や音像をカッコよく表現できた満足感はあったんですけど、去年のツアーの頃からはそのさらに先。さらなる欲が出てきた感じなんです。

──その欲って?

mayuko 太志の曲を生かす楽器のニュアンスや歌い方を突き詰めたいっていう欲ですね。

TASSHI もちろんロックを目指した過去を否定するわけではないんですけど、ライブで過去の曲もたくさんやっていく中で、そもそも太志の作る曲ってジャンル的にすごく幅広いんだよな、って気付いたんです。それならそれぞれの楽曲が持ってる可能性をそのまま素直に表現したらいいんじゃないか。ラテンっぽいものはそのままラテンアレンジにするし、ヒップホップっぽいものはヒップホップとして打ち出すし、ファンクっぽいものはファンキーに。ライブの本数を重ねながら話し合いをしたことで、全員、太志の曲の持つ世界観やニュアンスを素直に表現することに楽しみを見出せるようになっていた気はします。それがサウンドデザインの変化につながってるのかもしれないですね。

太志の歌詞と曲に素直になる

──今は、mayukoさんの言っていたような「作りたい音質や音像」を構築したいという意識は薄い?

大介(G) ゼロではないけど、薄いですね。前作の頃は特にオレがギターをガーンと弾くことが多かったし、そういうサウンドを目指していたんですけど、TASSHIの言う通り、改めて昔の曲を聴き直してみたら「もっといいアレンジ、やり方があったな」って気付くことがけっこうあって。だったら曲が求めてるアレンジに素直に仕上げたほうが手っ取り早くいい曲になるというか(笑)。ギターをガーンと弾くことよりも、ギターは入っていなくてもいい曲、いいアレンジに仕上げることのほうが今は楽しいですね。

──もともとサウンドの幅の広いバンドであることは当然知ってはいたものの、それでもロックバンドたろうとしたAqua Timezが、もう一度太志さんの楽曲群の持つ多彩さを際立たせるアレンジを目指すのってけっこうな大事業のような気がします。

OKP-STAR(B) でもアレンジやレコーディングにはそんなに時間がかかってないんですよ。もちろん展開なんかに悩んだ曲もあるんですけど、でも太志の歌とピアノが入ったデモを聴いた瞬間「この曲が一番生きるアレンジはこれ!」ってイメージが湧くことが多くて。これまでだったらデモを聴いたとき「この曲をいかにロックっぽく仕上げるか」って考え込んでいたような気もするんですけど、今は「この曲はピアノとストリングスを前面に押し出すべき曲なんだから、それを前面に押し出す」。そうやってシンプルに考えられるようになった気はしますね。まあ、もちろん今作にもロックナンバーはあるんですけどね(笑)。

──「ゴールドメダル」なんかは本当に威勢のいいギターロックですもんね。

OKP-STAR でもそれも「どうアレンジすればこの曲が魅力的になるか」っていうことを考えた結果でしかなくて。「ゴールドメダル」はギターをガーンと鳴らす方向に振り切ろうって素直に思えただけのことなんです。

ニューアルバム「エルフの涙」 / 2014年8月27日発売 / ERJ
初回限定盤 [CD+DVD] 3900円 / ESCL-4265~6 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3200円 / ESCL-4267 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. アダムの覚悟
  2. イヴの結論
  3. ヒナユメ
  4. エデン
  5. オムレット
  6. 赤い屋根の見える丘へ
  7. 滲み続ける絵画
  8. ゴールドメダル
  9. hey my mem feat.OK.Joe
  10. Fly Fish
  11. The FANtastic Journey
  12. 手紙返信
  13. エルフの涙
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「エデン (lyric version)」「手紙返信」「ヒナユメ」のビデオクリップ
  • 「エルフの涙」レコーディングドキュメンタリー
Aqua Timez(アクアタイムズ)

太志(Vo)、大介(G)、OKP-STAR(B)、mayuko(Key, Piano)、TASSHI(Dr)からなるロックバンド。2003年の結成後、東京を中心に活動を展開し、2005年発売のインディーズ盤「空いっぱいに奏でる祈り」がクチコミを中心に話題を集め、70万枚を超えるセールスを記録する。そして2006年4月にはミニアルバム「七色の落書き」でメジャーデビュー。さらに同年リリースのシングル「決意の朝に」「千の夜をこえて」が立て続けにスマッシュヒットし、その年の「NHK紅白歌合戦」にも出演する。以降、さまざまなジャンルを融合させた独特のサウンドと、琴線に触れるエモーショナルな歌声、メロディを武器に16枚のシングルと5枚のオリジナルアルバムをリリース。そして2014年8月、6枚目のオリジナルアルバム「エルフの涙」をリリースした。