近藤晃央が9月13日にニューシングル「存在照明」をリリースする。メジャーデビュー5周年を記念した本作には、サウンドプロデューサーに江口亮(la la larks、Stereo Fabrication of Youth、MIM)を迎えたタイトル曲のほか、カップリングとしてmayuko(Aqua Timez)とコラボレーションした「ベッドインフレームアウト」、近藤が作詞作曲から編曲までを自身で手がけた「ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ」など多様な楽曲が収められている。
今回音楽ナタリーでは近藤とmayukoによる対談をセッティング。女性視点の歌詞が印象的な「ベッドインフレームアウト」について2人に語り合ってもらった。また特集後半には近藤の単独インタビューを掲載。「存在照明」や、9月23日に東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催されるメジャーデビュー5周年ライブ「KAIKAKI」について話を聞いた。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 須田卓馬
近藤晃央×mayuko(Aqua Timez)対談
「どうか幸せになってほしい!」と祈りながら
──メジャーデビュー5周年おめでとうございます。ニューシングル「存在照明」に収録された楽曲はどれも近藤さんの音楽的な振り幅の広さを示していますが、その中でもAqua Timezのmayukoさんとコラボレーションした「ベッドインフレームアウト」は衝撃作ですね。
近藤晃央 僕が去年三十代に突入したときに、スタッフから「大人のエロい曲が聴きたい」と言われたんです。その楽曲を作るにあたり紹介したい人がいるということで今年の4月頭ぐらいにmayukoさんと会う場をセッティングしてくれて。短い付き合いですけど、会ってる回数はけっこう多いですよね。
mayuko(Aqua Timez) うん。ライブを観に行ったり。
近藤 ご飯を食べに行ったり。先日はAqua Timezのラジオにも出させていただきました。普段僕は男性のミュージシャンと一緒にやることが多いので、女性の方とコラボできるのはすごく新鮮でしたね。「とりあえず僕の頭の中にあるものを送ります」って、つたない打ち込みのピアノと歌を入れた音源をワンコーラスだけ最初に送りました。
mayuko その時点で楽曲がかなり完成されていて「Aqua Timezではやったことない世界観だな」と思っていたんですけど、1週間後に届いた2番以降ではその世界観が加速度的に強くなっていくような内容で。どうピアノで盛り上げていこうか考えつつ、この歌の主人公の女性のことを考えると重い気持ちになって「どうか幸せになってほしい!」と祈るような気持ちで仕上げていきました。
──都合のいい身体だけの関係に、身も心も削っていく女性の歌ですもんね。
近藤 昔の昭和歌謡にはこういう歌、いっぱいあったじゃないですか? でも今のご時世に、こういうテーマに触れるのは勇気がいるかなというのもあって。言葉は選んだつもりではあるんですけど、結果的にそれでも思い切った内容になったかもしれない。
mayuko 見たくない現実が晒されちゃってるから「すごくグサッとくる曲だな」というのが第一印象でした。1番ぐらいだとまだ「そうだよね」って感じだけど、だんだん突き付けられていく真実がつらくて……でも「都合のいい状態に甘んじていていいのか?」みたいな問題提起でもあるわけだし、何回も聴いていると逆にそれが近藤くんの優しさだな、というふうにも思えるんですよね。
最後までがんばって聴いても救われない
近藤 歌詞を書くにあたって身近にいる女性にアンケートを取ったんです。もちろんみんな言ってることは違うんですけど、一貫して感じたのは「都合のいい身体の関係から抜け出さなきゃ」ってどこかで思っていたとしても、端から見たら現状をわかってないように思えるんですよね。自分はセカンドってわきまえてる人も中にはいるんですけど、「本当にわきまえてたらそんな言葉出てこなくない?」みたいな人もいて。言っていること全部に裏表がある感じで。「この人たちは別に救いを求めてるわけじゃないのかな」というふうにも見えたんです。必ずしも全員がそれで傷付いているわけではなくて。本当に一途なら相手に迷惑かからないように痕跡を消すんでしょうけど、実際はどんなに控えめな人でも自分の痕跡はちょっと残そうとするんです。
mayuko へえ! そうなんだ?
近藤 だからそういう話を聞いていると、「あ、本当に盲目なんだな」と思えて。僕はそれをそのまま表現しようと、この人たちを救ってあげられないという前提で歌詞を書きました。
──mayukoさんはこの曲の女性を救ってあげたいけど、近藤さんは救ってあげられないと。
近藤 ずっと「いけない、いけない」と自分を抑えていたのに、最終的に「いきたい」という言葉で曲を終わらせたのも、救ってあげられないという思いから来てるかもしれません。
mayuko 私には最後の「いきたい」という言葉が衝撃的過ぎて。束の間でもいいからとにかく幸福感を、みたいなことなのかな。いたたまれない気持ちになりました(笑)。
近藤 アンケートに協力してくれた子に音源を送ったら、「最後まで聴いたら救われると思ってがんばって聴いたのに救われないんだけど」と言われました。
mayuko みんな救いを求めてたんだね。でも、長い目で見ると絶対に救いだと思うんです。今回のシングルの表題曲の「存在照明」に「照らした絶望は希望だった」という歌詞がありますが、一度絶望したとしてもそこに向き合っていけば次の恋愛ができたり、違う視点で男性を見れたりするんじゃないかなって。
近藤 この曲がカラオケ配信されたら、女性たちに女子会で超ベロベロになりながら歌ってほしいですね(笑)。必ずしも女性全員にこういう経験があるわけではないでしょうけど、歌うことで疑似体験できると思うんです。そういう意味でも、ちょっとした官能小説を読んでいるような気分になってくれたら成功だと思います。
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ミュージシャンとしての経験値が上がった
- 近藤晃央「存在照明」
- 2017年9月13日発売 / アリオラジャパン
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初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / BVCL-827~8 -
通常盤 [CD]
1300円 / BVCL-829
- 初回限定盤CD収録曲
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- 存在照明
- ベッドインフレームアウト
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ
- 存在照明 -instrumental-
- ベッドインフレームアウト -instrumental-
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ -instrumental-
- 通常盤CD収録曲
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- 存在照明
- ベッドインフレームアウト
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ
- めぐり - Bonus Track -
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 存在照明 Music Video
- ベッドインフレームアウト Music Video
- メイキングムービー
- 近藤晃央「存在照明」リリース記念イベント
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2017年9月16日(土)
神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店
START 14:00
内容:ミニライブ&特典会 -
2017年9月17日(日)
愛知県 新星堂アスナル金山店
START 14:00
内容:ミニライブ&特典会
- 近藤晃央5th Anniversary Live 「KAIKAKI」
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2017年9月23日(土・祝)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 16:00 / START 17:00
- 近藤晃央(コンドウアキヒサ)
- 愛知県出身のシンガーソングライター兼グラフィックデザイナー。2012年9月にシングル「フルール」でメジャーデビューした。その後テレビアニメ「宇宙兄弟」のエンディングテーマ「テテ」、テレビアニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のエンディングテーマ「ブラックナイトタウン」、ドラマ「名もなき毒」の主題歌「あい」、ドラマ「ペテロの葬列」の主題歌「心情呼吸」など数々の楽曲を発表。グラフィックデザイナーとして自身のグッズやほかのアーティストの作品のデザインを手がけているほか、フリーペーパー「OKMusic UP's」ではグラフィックの連載を持っていた。2017年9月にメジャーデビュー5周年を記念したシングル「存在照明」を発売。同月にワンマンライブ「近藤晃央5th Anniversary Live『KAIKAKI』」を開催する。
- Aqua Timez(アクアタイムズ)
- 太志(Vo)、OKP-STAR(B)、大介(G)、mayuko(Key)、TASSHI(Dr)からなるロックバンド。2003年の結成後、東京を中心に活動を展開し、2005年発売のインディーズ盤「空いっぱいに奏でる祈り」がクチコミを中心に話題を集め、70万枚を超えるセールスを記録する。そして2006年4月にはミニアルバム「七色の落書き」でメジャーデビュー。さらに同年リリースのシングル「決意の朝に」「千の夜をこえて」が立て続けにスマッシュヒットし、その年の「NHK紅白歌合戦」にも出演する。以降、さまざまなジャンルを融合させた独特のサウンドと、琴線に触れるエモーショナルな歌声、メロディを武器に16枚のシングルと6枚のオリジナルアルバムをリリース。そして2016年12月、7枚目のオリジナルアルバム「アスナロウ」を発表した。