「アオペラ -aoppella!?-」浦田わたる×豊永利行|声優ならではの、個性が重なるアカペラ

浦島坂田船をカバーしてみたい

──9月24日リリースの2nd CD「アオペラ -aoppella!?-2」に、FYA'M'として2曲目となるオリジナル曲「Come on up, Baby」が収録されます。過去には「白日」や「天体観測」のカバーも経験されていますし、アカペラのレコーディング作業にも慣れてきましたか?

浦田 慣れてきてはいないですね……やっぱり難しいんで。ただ、この現場はけっこう個人の歌い方を尊重してくださるんですよ。もちろんキャラの方向性もありますけど、あまりアカペラでは使われないようなグッと張った声を「そっちのほうがカッコいいんで、それでいきましょう」と言ってもらえたりします。そのやりやすさはありますね。

豊永 僕の場合は、リードでは思いっきり自己主張をする一方で、ハモリコーラスでは自己主張をできるだけ消す感覚が、2曲目にしてなんとなくつかめてきたかと。わりとビブラートとかを効かせた歌い方をするタイプなんですけど、コーラスのときは極力その色を出さないようにするっていう作業ですね。それがアカペラならではの醍醐味でもあって。

──しかもそれを、キャラを演じながらやっているわけですよね? 自分ではない個性を演じつつ、その個性を抑える表現をするのは、難易度が高そうです。

豊永 そうですね。僕が僕として個性を消すわけじゃないので……そのへんの塩梅に関しては、ディレクターさんと協議しながら裏声と地声のバランスも判断していただいています。

──「ここに注目して聴いてほしい」というポイントは何かありますか?

浦田 第2弾ということで、前作の「Think About U」とはまた違うノリのよさがあるんです。少しだけキャッチーさが増したというか……言っちゃえば、仲村(FYA'M'の深海ふかみ役を務める仲村宗悟)さんによる“ワカチコ”効果ですね(笑)。

──“ワカチコ”、超いいですよね。ボイパ担当の仲村さんが手がけた“口ワウギター”。

浦田 僕のパートじゃないんでアレですけど(笑)。歌詞的にも、大人びていながら楽しさもあるので、僕自身その軽快さを出せるように心がけて歌いました。それと、曲ももちろんなんですけど、ドラマCDも含めて総合的に楽しんでいただきたいですね。

──豊永さんの注目ポイントは、やはり口笛ですかね?

豊永 まあ確かに、口笛は大変でしたね。なぜか僕のパートに口笛が最初から組み込まれてたんですよ(笑)。

──めちゃくちゃきれいな音が出てますよね。

豊永 どうすればいい響きが出せるかは、家でちょっと練習しました。というのもあるんですけど、聴いてほしいポイントとしてはやっぱり、浦田さんもおっしゃったようなキャッチーさとかになりますね。純粋にBGMとして聴いてほしいなっていう気持ちのほうが強いです。そもそも音楽って「ここに注目して聴くべし」と強制するものではないと思いますし。

──確かに。注目ポイントを伺っておいてなんですけど、おっしゃる通りです(笑)。

豊永利行

豊永 それと、これも浦田さんがおっしゃいましたけど、ドラマトラックとかでそれぞれの関係性なども描かれているので、それを加味したうえで改めて曲を聴いたら、また感じ方が変わるんじゃないかなと思いますね(参照:アオペラドラマCD試聴 | YouTube)。

──なるほど。「この部分のリードをこのキャラが歌っているのは、キャラ同士の関係性の中でこんなやり取りがあって決まったんじゃないか」みたいにファンが想像しながら聴くのも楽しそうです。

浦田 うん、そっちのほうが僕らもうれしいです。

豊永 実際、ドラマトラックでキャラ同士のやり取りを聞くと「裏でこういうやり取りが行われて、あやあや(綾瀬光緒)のロングトーンが決まったんだ」とかがわかるようになっていて。

──世界観が徹底的に作り込まれているんですね。

豊永 そうです。それと同時に、「今やってる」というリアルタイム感も味わえるようになっていますね。

──今後、FYA'M'でカバーしてみたい楽曲などはありますか?

豊永 それはもう、浦島坂田船さんですよ。

浦田 あははは、ぜひ(笑)。……でも真面目な話、それはそれでちょっと面白そうですね。

豊永 アーティストデビューしてる人それぞれの持ち曲をアカペラカバーしても面白いだろうし。

浦田 確かに! それ面白いですね。

豊永 本人はどういう気持ちで歌えばいいんだ、という(笑)。

浦田 ご本人名義の場合はキャラとしてじゃなく本人として歌ってるから、それをキャラとして、しかもアカペラで歌うとなったらどういう差が生まれるのか?という面白さはありますよね。

豊永 確かに。

浦田 あとはJ-POPだけじゃなく、最近K-POPなんかもすごく流行ってるんで、言語の問題はありますけどやってみたいですね。それこそBTSとか。

──ブラックミュージック系のビート感はFYA'M'の得意分野ですし、BTSはぴったりだと思います。

浦田 そうですよね。

豊永 うんうん。……なんて言ってると、また難易度高いのが来るんだろうなあ(笑)。

左から浦田わたる、豊永利行。

ライブパフォーマンスは「絶対に無理」

──今後、実際にステージなどで6人の声だけを使った生パフォーマンスを観たいなという願望があるんですが……。

豊永 それ、偉い人たちがずっと言ってるんですよね。キャスト側は口をそろえて「絶対に無理」「やめとけ」と言い続けてるんですけど(笑)。

浦田 マジでどれだけ稽古を積めばいいのか、想像もつかないんですよ。

豊永 そうそう。まず、みんなで集まって合わせの練習をするスケジュールを確保するだけでも難しいし。アカペラってそんなに甘い世界じゃないし……と、役者陣はみんな思ってます(笑)。

──とはいえ、やはりファンは「絶対に観たい」と思っているでしょうから、何か「絶対に無理」以外の言葉をいただけたりしないですかね?

豊永 いや、絶対に無理。

一同 あはははは!(笑)

浦田わたる

浦田 人前で披露するとなったら、1曲だけとはいかないじゃないですか。「なんとかがんばって1曲やりました、終わり」というわけにはいかないんで、もっとたくさんの曲をできるようにならないといけないから。そうなると、少なくとも3年くらいは必要なんじゃないですかね。

──3年くらい、全然待ちますよ?

浦田 うははは(笑)。

豊永 そのくらい、我々は我々でこだわりたいんですよ。生でやるんだったら、きちんとアカペラ業界の方々にも失礼のないクオリティのものを届けたい。それはおそらく役者陣みんな同じ気持ちだと思います。それを考えると、今ここでライトなノリで「オッケー、やるよー!」とは絶対に言えない(笑)。

──生半可な気持ちではできないと。

豊永 ですね。そういうところも皆様には汲んでいただきつつ、長期的な視野で「アオペラ」さんサイドが動いてくださるのであれば、もしかしたら……5年後とかにあり得るかもしれないですね。

──しれっと期限が延びてますけど(笑)。

豊永 はっはっは(笑)。

浦田 豊永さんもおっしゃっているように、声のプロが集まっているからには生半可なものは見せられないし、本当にいいものを見せたいので。少なくとも現時点では、僕は生でアカペラのパフォーマンスをすること自体が怖いですね。そのパフォーマンスがダメだった場合、コンテンツ側にも迷惑がかかるし、キャストさん個人個人にも悪影響が出るかもしれない。だから、長い目で見て、1曲……いや1コーラス……。

豊永 そうだね。フル尺披露でなければ実現の可能性は上がるかもしれない。

──なるほど。大々的に「リルハピとFYA'M'のコンサート」みたいな形ではなく、「アオペラ」イベントの1コーナーくらいであれば。

豊永 可能性として、あるとしたらそっちのほうが高いかなとは思います。声が合わさったときの気持ちよさ自体はキャストの皆さん全員が知っているはずなので、そういう機会を持ちたいという思いそのものはみんなあると思うんですよ。「合ったー! きれいー!」っていうあの感動を皆さんと共有できる日が来るのであれば、そりゃあそんなに幸せなことはないですから。

──ありがとうございます。軽いリップサービスとして「生パフォーマンス、ぜひそのうちやりたいですね!」とかで終わるよりもずっと誠実なお言葉がいただけて、本当にうれしいです。

豊永 僕ら、真面目なんでね(笑)。

浦田 真面目担当でやらせてもらってるんで(笑)。

左から浦田わたる、豊永利行。
豊永利行(トヨナガトシユキ)
4月28日生まれ、東京都出身。スーパーエキセントリックシアター所属。2002年、OVA「ヨコハマ買い出し紀行-Quiet Country Cafe -」(タカヒロ役)で声優デビュー。主な出演作に「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(ポップ役)、「サクガン」(ユーリ役)、「風が強く吹いている」(清瀬灰二役)、「ユーリ!!! on ICE」(勝生勇利役)、「Free!」シリーズ(椎名旭役)、「デュラララ!!」(竜ヶ峰帝人役)、「デュエル・マスターズ!」(キラ役)などがある。シンガーソングライターとしても活躍しており、2014年4月に1stアルバム「MUSIC OF THE ENTERTAINMENT」をリリース。同年12月にシングル「Reason...」でメジャーデビューを果たし、2017年10月には自身のレーベル・T’s MUSICを設立した。
浦田わたる(ウラタワタル)
8月9日生まれ、埼玉県出身。スワロウ所属。主な出演作は「ACTORS -Songs Connection-」(神樂蒼介役)、「アオペラ -aoppella!?-」(紫垣明役)など。男性ボーカルユニット・浦島坂田船ではうらたぬき名義でリーダーを務めている。浦島坂田船は10月31日にオンラインライブ「Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船 ~本気か!MAGIC!マジカルミラクル!きゅるるるるん☆彡 お菓子くなっちゃう♡もうっ//♡ やメテオー!CHU♡ドーン!~」を開催する。