“青春×アカペラ”をテーマにした音楽原作プロジェクト「アオペラ -aoppella!?-」の2nd CD「アオペラ -aoppella!?-2」が9月24日にリリースされた。
「アオペラ -aoppella!?-」は11名の男性声優が参加するプロジェクト。YouTube公式チャンネルでは声優がアカペラで歌唱しているカバー曲やオリジナル曲が公開されている。5月リリースの1st CD、新作の2nd CDにはオリジナル曲とドラマトラックを収録。ドラマトラックではアカペラに魅了された高校生たちがアカペラコンテスト「アオペラ」で高みを目指すストーリーが描かれる。2nd CDに収められるオリジナル曲は都立音和高校・リルハピによる「キセキノウタ」、私立奏ヶ坂中学高等学校・FYA'M'による「Come on up, Baby」の2曲。音楽ナタリーではFYA'M'の綾瀬光緒役を務める豊永利行、同グループの紫垣明役を務める浦田わたるにインタビューを行い、本作でアカペラに初挑戦した2人にプロジェクトやアカペラの魅力、「Come on up, Baby」のレコーディングについて語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 梁瀬玉実
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「アオペラ -aoppella!?-」とは
11名の声優が参加する、“青春×アカペラ”をテーマにした音楽原作プロジェクト。YouTube公式チャンネルでは声優がアカペラで歌唱しているカバー曲やオリジナル曲が公開されている。オリジナル曲のCD展開も行っており、CDに収録されるドラマトラックでは、アカペラに魅了された高校生たちがアカペラコンテスト「アオペラ」で高みを目指すストーリーが描かれる。
Topと2ndは融和性が高い
──まず、“青春×アカペラ”をテーマにした音楽原作プロジェクト「アオペラ -aoppella!?-」の出演オファーを受けた際の印象を教えてください。
豊永利行 「声優業界、ついにここまで来たか」と思いました。
浦田わたる あははは(笑)。
豊永 声優さんがなんでもやる時代になってきて、ラップをやったり、いろんなメディアコンテンツが増えていますよね。その中で「アカペラを」という話が来たときは、来るところまで来たなと。
──確かに、声優さんが歌手活動をするのはもはや珍しくない世の中ですし、ラップグループなりリアルバンドなり、“特別なことをやっている感”を出すためにはひと工夫必要な時代になってきていますね。
豊永 ただ、来るべくして来たという気もするんですよ。声優は声を武器にしている商売で、声の響かせ方に関してはプロフェッショナルではあると思うので。そういう人たちが集まってハーモニーを作り出したら、そりゃあ響きはよくなるわなと。着眼点としては、すごく理にかなっているなと思いましたね。
──言われてみれば確かに、アカペラって楽器を使わない声だけの音楽表現ですもんね。原理的に声優さんとの相性が悪いわけがない。
豊永 そうですね。
──浦田さんはいかがですか?
浦田 「マジか」と思いましたね。アカペラというものに触れたことがまったくなかったので、「僕がやっていいんかなあ」という感じでした。「ハモネプ」(フジテレビ系「全国ハモネプリーグ - 青春アカペラ甲子園!」)とかは観てたんですけど、自分がやるものとして考えたことはなかったので。
──それでも「やろう」と思えた裏側には、「やれる」という思いがあったからですよね?
豊永 ……まあ、仕事ですからね(笑)。
浦田 (笑)。僕はけっこう、やってみたさがあったんですよね。コンテンツとしても新鮮さを感じたので、お話をいただいたときは「ぜひ」と。
──豊永さんがTopの綾瀬光緒役、浦田さんが2ndの紫垣明役を務めています。そもそものお話で申し訳ないんですけど、この「Top」と「2nd」というのはどういう役割のパートなんですか?
浦田 Topはソプラノで、2ndがアルトですね。
豊永 基本的には、3声から4声で構成されるハーモニーの中で一番上を歌うのがTopです。その3度下を担うのが2ndだと思うんですけど、「アオペラ」に関してはけっこう入れ替わり立ち替わりで。
浦田 僕の演じる紫垣明は2ndなんですけど、実際に歌っていると「あれ、これ一番上じゃね?」という瞬間もあって。
豊永 けっこう高いところを録ってましたよね。
浦田 はい。「2ndって、こんな高い音も出すんだ?」と思いつつ。
豊永 それぞれソロパートがあったりするので、その前後だけちょっと橋渡し的に僕が2ndに回ったり、逆に浦田さんがTopへ行ったりとかがあるんですよ。
──確かに、皆さんそれぞれリードを歌う機会がありますよね。そこが通常のアカペラグループと最も違う特徴的な部分のように思います。
豊永 そうですね。その意味では、Topと2ndはけっこう融和性が高いというか、入れ替わりの多いポジションだと思います。
──パートはどのように決まったんですか?
豊永 最初から「このパートで」とお話をいただきました。各キャストさんの得意な音域を踏まえて割り振ったのか、あるいはキャラクターを優先してのことだったのかは、ちょっとわからないんですけど。
スタッフ そこに関しては、キャラクターが優先です。そのキャラが劇中で担当しているパートを、そのまま演者さんにも担当してもらっています。
豊永 だそうです(笑)。
リズム感と絶対音感
──なるほど。音域については理解しましたが、音楽的な機能としてはどういう感じなんでしょう? 主旋律に対するハーモニー、コードトーン構成の一角、あるいは裏メロ的な役割など、アカペラコーラスにはいろんな要素があると思うんですけども。
豊永 それに関しては、全員が全部をやります。いわゆるウーアーコーラス(メインボーカルに「ウー」「アー」というフレーズを重ねるコーラス)もやりますし、サビに入ったらリードに対するハモリになったりとか。「アオペラ」の楽曲はだいぶテクニカルなアレンジになっているので、一概に「この人はこう」という決まったポジションはないんですよね。かなり流動的な感じだと思います。
浦田 ベースとボイスパーカッションに関してはかなり明確な役割があるんですけど、それ以外の僕らはけっこう複数ポジションを行き来していますね。
豊永 それこそ拓也(FYA'M'の宗円寺朝晴役を務める佐藤拓也)さんとか、担当は4thだけどTopの音を出すこともあったり。
浦田 キャラクターを際立たせる意味合いもあると思います。高校生グループであれば、「ここで僕、メイン歌ってもいいよね?」みたいに無邪気に我を出すケースも実際ありそうな気がしますし。実際の楽曲で行われていることは、高校生にしてはかなり高度なんですけど(笑)。
豊永 だいぶ難易度が高いですよね。
──ちなみに、楽曲のデモってどんな形で届くんですか? 普通に6声入りのデモを聴いたところで「僕のライン、ここだな」とわかるものなのかな?という素朴な疑問があるんですけど。
豊永 デモはパート別で来ます。全部入りの2ミックスと、それぞれのパートに分けられた単品のファイルと。
浦田 パート譜ももらいますよね。
豊永 あ、そうね。
──それはそれで、1人分のパートだけが録音されたものを聴いても「なんのこっちゃ」になりそうというか(笑)。
浦田 確かに(笑)。まず全部入りを1回聴いて、そのあとに譜面を見ながら自分のパートのみのファイルを開いて「ああ、ここか」と確認していく感じですね。
豊永 1線だけの音源を聴くと、まったく全貌は理解できないです。全部入りのを聴いて初めて「ここをこう歌ってるのか」と把握できる感じなので、僕は交互に聴いてますね。
浦田 自分がウーアーをやっているときは、誰かほかの人がメインで歌っている瞬間のはずなんですけど、そこは全部入りを聴いたときの記憶だけが頼りというか。レコーディングではだいたい濱野(FYA'M'の猫屋敷由比役を務める濱野大輝)さんが先にベースを録ってくれているのでちょっとは楽になるんですけど、1人で練習してるときはけっこう「何やってるんだろう?」ってことは多いですね。
豊永 うんうんうん(笑)。
──ちなみに、リアルに6人で集まって練習をする時間などは取れているんですか?
豊永・浦田 ないです。
──あ、やっぱりないんですね。まあ、ご時世もあるでしょうし、単純に皆さんお忙しいでしょうし。
豊永 ですねえ……。
──これは完全に素人考えながら、「声の重なりの中で、自分の声をどう出したらどう響くのか」みたいな感覚って、実際に一緒に声を出すことでしか養えないものなんじゃないだろうかと想像しているんですよ。リアルの音合わせなしで自信を持ってやれるものなんですか?
浦田 一般的な本格アカペラって、複数の透明感ある歌声が重なり合って混ざり合うものだと思うんですよ。それに対して、「アオペラ」でやっているのは個性的なキャラクターたちの声が重なるカッコよさだと思っていて、また別のジャンルなんじゃないかと考えていますね。アカペラを専門的にやられている方々だったり、そういうアカペラを好きで聴いている方々が聴いたら、もしかしたら違うものに聴こえるのかもしれないなって。
豊永 確かに、そういう人たちにどう聴こえているのかは気になりますね。
──なるほど、つまり声優さんがやる意味のあるアカペラという方向性に振り切っていると。
浦田 そうですね、それは絶対的にあると思います。
──これまでに声優や歌手として経験されてきたことが今回の「アオペラ」に生かせているな、と感じるポイントって何かあったりしますか?
浦田 うーん……難しいですけど、強いて言うならリズム感ですかね。リズム感はちょっとあるほうだと思うんで、それは生かせたんじゃないかなと思います。
──確かにアカペラって、「なんだかんだ言って一番大事なのはリズム感だ」という話もありますね。
浦田 そうなんですよ。一度ズレたら、どんどんズレていっちゃいますし。
豊永 そういう系で言うと、僕は絶対音感持ちなので、そこはありがたいなと思ってますね。
──ああ、絶対音感はアカペラにおいてものすごいアドバンテージになりそうです。
豊永 1回聴いた音であれば、基本的には同じ音程が出せるので。あと、僕はもともとミュージカル経験者なので、舞台で培ってきた“音の合わせ感”みたいなものも経験として持っているのかと。そういうことを経てきているので、経ていない人であれば苦労するはずのステップを多少は省略して挑めているのかな、とは感じますね。
──なるほど。
豊永 まあFYA'M'に関しては、アーティスト活動やキャラソンなどの経験がめちゃくちゃある人たちばかりなので、歌を歌うこと、ステージで歌うこと、スタジオのマイク前で歌うことに対する経験値はみんな高いと思うんですよ。そこらへんも、声優として芝居の表現だけをやってきた方よりは、つかめる感覚がちょっと多くあるんじゃないかな。
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浦島坂田船をカバーしてみたい
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