“青春”というイメージを大切に
──では、ここからは新曲のお話を聞かせてください。お二人は現在放送中のテレビアニメ「この音とまれ!」に声優としてのみならず、主題歌アーティストとしても関わっています。
内田 はい。「この音とまれ!」は高校の箏曲部を舞台にした物語なんですけど、登場人物たちがみんなものすごく真っすぐなんですよ。でも、それゆえの不器用さもあって、いろんな悩みを抱えてもいる。そういった思春期ならではのうまく表現できない感情が描かれている部分に、僕はものすごく愛おしさを感じるんです。そんなアニメーションに自分の声を吹き込ませていただけるのは本当に幸せなことだなと思っています。
蒼井 曲についてはどう?
内田 物語が持っている魅力を音楽でも表現できるのはすごく光栄なことだなと感じています。人には言葉以上に伝えたいことがある、人には言葉じゃないもので伝えられる思いもあるという意味を込めて、「Speechless」という曲にしました。アニメの登場人物たちは言葉でうまく表現できないことを箏を通して感じ合おうとするんですけど、それって僕らが普段やっているお芝居でも同じだなと思うんですよね。言葉を交わさずとも相手の気持ちを感じ取り、相手を思いやったりすることで生まれるお芝居があるから。なので自分の思いも投影しながら、説得力のある曲になるように作り上げていきました。
──青春っぽい雰囲気を感じさせる楽曲が、物語のいい余韻を演出してくれていると思います。
内田 そうですね。部活が終わって家に帰ったらそこで終了かというと、それは違うと思うんですよ。各登場人物たちは家でも箏のことを考えて、明日のこと、未来のことを考えて前に進もうとしていると思うんです。なので、そういった気持ちをこの曲から感じてもらえたらいいなという思いを込めました。同時に、視聴者の方にとって「来週のお話が楽しみだな」という気持ちのスタートになるような、そんなエンディングテーマになればいいなという願いもありますね。
──一方の蒼井さんの楽曲「Tone」もまた青春っぽさが詰め込まれているさわやかな楽曲になりましたね。
蒼井 はい。僕も青春というイメージを大切にして作っていきました。お箏の音はきっと本編でたっぷり聴けると思うので、そことは違った方向性で楽曲を作っていったんですけど、そこはエンディングテーマとも共通しているように思いましたね。アニメが「この音とまれ!」というタイトルなので、さまざまな変化の予兆を感じつつも、同じ思いを持っている者同士ならしっかりとつながっていける、そんな気持ちを込めた楽曲に仕上がっています。この2曲でサンドウィッチのように作品の世界を挟み込むことで、より広がりを持って視聴者の方に届いてくれたら、それほど幸せなことはないですね。僕が演じるキャラクターはまだ登場が先なんですけど、アニメは2クール分制作されることが現段階で決まっているようなので、そこに向けて物語をつないでいく役割も担っていければなと思っています。
──どちらの楽曲にも、自分らしさを肯定してあげることの大事さが描かれています。そこもきっと1つの重要なメッセージになっていますよね。
蒼井 そうですね!
内田 思春期って、自分自身にしかないものを肯定することがすごく難しいと思うんですよ。その個性を周りが評価してくれたとしても、自分では「本当にこれでいいのかな」ってどこか恐れてしまうこともあったりして。だから今回の曲では、周りの人とつながっていくことで自分なりの色が見えてくる、それって素敵なことなんだよというメッセージを音に乗せて伝えられたらなと思っていました。
“チャレンジすること”を全力でおすすめしたい
──どのような思いでレコーディングに臨みましたか?
蒼井 僕はこれまで本当にいろんなタイプの楽曲を歌ってきました。和のテイストの曲もあれば、激しいロックナンバーもある。かと思えばミュージカルやオペラのようなタイプの曲もあったりして。そして今回の「Tone」のサウンドも、自分にとっては今までにない新しいタイプの曲調になっています。そういう意味ではすごくチャレンジでもありました。そのうえで、歌に関して大事にしたのはやっぱり“青春感”ですね。学園生活を送っている登場人物たちの背中を押してあげられるような声で歌えたらいいなって。だから今回は自分の癖などもなくして、聴いてくれた方の心にスッと入り込めるような歌声を目指しました。ただ、かなり細かく刻まれているメロディなので、レコーディングはすごく苦労しましたけど。
内田 聴いた瞬間、「難しそうな曲だなー!」と僕も思いました。音の細かさもそうですし、ハイトーンがたくさん盛り込まれていますから。蒼井さんがおっしゃったように癖を付けずにクリアに歌うのって実はすごく難しいことですし。癖を付けたほうが歌いやすかったりしますもんね。
蒼井 うんうん、そうなんだよね。
内田 楽曲の持っている透明感を損なわせない声を意識しつつ、でも聴き手にちゃんと引っかかってもらえるようなアクセントを付けていくのは本当に難しいだろうなと。ホントにいい曲ですよね。蒼井さん、本当にすごいです。
蒼井 ありがとうございます(笑)。「Speechless」も本当に素敵な仕上がりだよね。この曲もさ、ゆーまんにとっては新しい雰囲気があるなって。
内田 そうですね。僕にとって初のタイアップ曲ということもあったので、作品の世界にグッと寄り添ったものにしたいなと思ったんです。高校を舞台にした青春っぽい雰囲気を出すために、じゃあ今回はさわやかで前のめりなロックサウンドに振り切ってみようと。僕は今までそんなにロックを聴いてきたタイプではないので、そこは挑戦でした。
蒼井 チャレンジするのはいいことだよね。全力でおすすめしたい。僕はもうチャレンジ、チャレンジでやってきたから(笑)。
内田 チャレンジャーでいることって素敵ですよね。
蒼井 タイアップをいただけることで新しいことに挑戦できる部分もあるよね。それもやっぱり素晴らしいことだなと思う。「Speechless」と「Tone」が描いているように、大切にしていくべき自分の中の新たな個性を見つけ出してもらえたわけだから。
ゆーまんが覚醒したら……
──内田さんの歌のレコーディングはいかがでしたか?
内田 本当に苦労しました。自分の考えている楽曲のイメージと実際の歌声を合わせるためにいろいろと試行錯誤して、今までで一番時間がかかったかもしれません。
蒼井 それはやっぱり新しく挑戦したサウンドだったから?
内田 そうですね。サウンドに合わせて、歌い方の雰囲気を今までとは違った感じに変えていくことに時間がかかりました。サウンド的にはロックなんですけど、全体的に温かな雰囲気もある曲なんですよ。だから強い歌い方はしないけど、青春ならではの前のめり感、ロックなノリを出さなきゃいけないという、そのバランスが本当に難しくって。ただ、普段はキャラクターソングを歌わせていただく機会が多いですけど、今回はそことは違った立ち位置でアニメに寄り添っていく形だったので、普段とはまた違った大きなやりがいと楽しさを感じることもできました。
蒼井 完成した曲を聴かせていただくと、さっきも言ったようにゆーまんのルーツがしっかりと見えている感じもあったんですよね。サウンドはロックだけど、R&Bをルーツにするグルーヴ感はしっかり生きているなって。そういう意味では新しいチャレンジではあったと思うけど、内田雄馬にしか作れない、内田雄馬の曲になっているなと思いましたね。
内田 ありがとうございます! 本当にうれしいです!
──では最後にアニメ「この音とまれ!」を楽しんでいる方々にメッセージをお願いします。
蒼井 僕はまだアフレコに参加していないので、現時点ではまず蒼井翔太としての楽曲「Tone」で作品世界の後押しができたらいいなと思っています。アニメ本編に関しては、ゆーまんが演じるキャラクターを含め、みんなのことをぜひ応援してあげてください。同時に「Speechless」という素敵な楽曲も楽しみ尽くしていただければなと。
内田 悩みや迷いに全力で向き合い、一生懸命生きている登場人物たちの姿が本当に美しい作品になっています。この作品を楽しむことで、今青春真っただ中の人はそれをより輝いたものにしてほしいし、年を重ねた方々には昔の青春時代の輝きを呼び戻してほしいですね。すべての方の琴線に触れる作品だと思うので、ぜひ「この音とまれ!」を楽しんでください!
──アニメではお二人の絡みが今後見られることになると思いますが、音楽でも何かコラボレーションできたりすると楽しそうですよね。
内田 やってみたいです!
蒼井 以前「KING SUPER LIVE 2018」でコラボさせていただいたことはありますけど、また何かできたらいいな。というか、きっとあるでしょ! 僕はね、ゆーまんはまだアーティストとして覚醒し切っていないと思っているんですよ。だからこれからも本当に楽しみ。完全に覚醒したらもう、いろんなゆーまんが今以上にどんどん出てくると思う。そうなったら先輩たちにもどんどん挑んじゃえばいいと思うので(笑)。
内田 ヒーッ! でも、高みにいる素敵な先輩たちがたくさんいてくれるのは楽しいことですよね。自分もそこに並び立ちたいとがんばっていかなきゃと思います。
蒼井 うんうん、そうだね。
内田 今日はありがとうございました。蒼井さんってホスピタリティの塊のような先輩なんですよ。ぜひ今後も仲良くしていただけるとうれしいです。こんなに優しい人はいないですから、ホントに。
蒼井 どんな人でも癒してみせます(笑)。 最近はカルシウムも摂ってるから、イライラすることもないからね!