傷つき、悩んでいる人たちに向けて

──2曲目には蒼井さんが作詞・作曲を手がけた「SPOTLIGHT」が収録されています。ファンクの雰囲気がある、蒼井さんの新境地を感じさせる楽曲になりましたね。

たぶんこんな曲が来るとは誰も予想してなかったと思うんですけど（笑）。ブラスをたっぷり入れることで、カッコよく色っぽい仕上がりを目指しました。

──聴き手の気持ちを鼓舞する前向きなメッセージを、ソウルフルなボーカルがしっかり伝えてくれていて。

こちらも歌のテーマは“解放”でしたね。最後のサビはかなりエモい感じにもなりましたし、ブラックミュージックによくあるふくよかな女性コーラス隊をイメージして声を重ねた部分もあったりして、ものすごく気持ちよく、楽しく歌えました。メッセージとしては、人は誰しも自分にスポットライトが当たる時期があると思うので、そのときが来たら躊躇や遠慮なんかせず、思い切り楽しく前へ進もうよっていうことを伝えたかったんです。結果として、自分にも喝を入れる曲になったかなと思いますね。

──一度きりの人生において、新しいステージは自分の気持ち次第でいつからでも始められるんだ……そんな言葉はつらい時期を実際に経験してきた蒼井さんが放つからこそ説得力を持って響いてくるところもありますよね。

ブログで自分の過去をカミングアウトしたこともそうですけど、人前に立って表現する人間としては、自分の経験を元にしたリアルな感情を発信する使命があると思っているんです。そういった気持ちはこの曲の歌詞にも出ているような気がします。いろんなことに傷つき、悩んでいる人たちに対して、「負けるなよ！ 負けないで進んでいこうぜ！」という力強い思いはしっかり込めたつもりですね。

初のドラマで思い切り演じた歌姫

──そして3曲目は、蒼井さん出演のテレビドラマ「REAL⇔FAKE」のエンディングテーマとなる「Fake of Fake」。ダークでヘビーだけど、美しさもある。そんなミステリアスな1曲ですね。

ドラマの世界観を楽曲として見事に表現していただきました。重めのサウンドに乗るメロディは心に残る中毒性がありますよね。かなり高い音域の曲なんですけど、それを全部地声で歌い切ったのは初めての挑戦だったかもしれない。もちろん蒼井翔太として歌いましたけど、僕の演じる歌姫・朱音っぽさもほんの少し感じてもらえるような、不思議な仕上がりになったと思いますね。

──意味深な歌詞はドラマを見ると理解できる部分もありそうですよね。

そうそう。落ちサビで僕の声だけになる部分があるんですけど、そこの歌詞に出てくる「あなた」が誰なのかは、ドラマを全部観たときにきっとわかると思います。これから放送が始まる地域もあるので、ぜひ曲と一緒に楽しんでほしいですね。「何が真実で何がフェイクなのか」みたいな部分はドラマとのリンクはもちろん、僕らの実生活にも当てはまると思うので、主人公を自分に置き換えて聴いてもらっても面白いかもしれないです。

──しかし、男性の蒼井さんが歌姫を演じるのもインパクトありますよね。それもまた蒼井さんにしかできないことだと思います。

ねー！ 「そんなのほかの人に演られてたまるか！」くらいに最近はもう吹っ切れているところがあるので（笑）。思い切りやらせていただきました。ただ、僕はドラマに出演するのが初めてだったから、なかなかその環境に慣れないところもあって。共演している染谷（俊之）くんは声優でもあるんですが、いつもいろんな現場で「しょーたん、ここはどうしたらいいの？」って僕に相談してきてくれるんですよ。でも今回は逆に僕が染谷くんをすごく頼りにしていたというか。いろんな面で甘えさせていただきましたね（笑）。

──今回のシングルリリース後、11月には大きなプロジェクトも動き出しますね。

はい！ 僕にとって初めてのブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の上演が始まります。今後も活動を続けていくにあたっては、このミュージカルが乗り越えなければいけない1つの大きな壁だと思っているので、「Harmony」のリリースで勢いづいたテンションをもって全力で臨みます。で、それを乗り越えることができたら、自分の中に秘めているいろんな企み、野望なんかを1つずつまた具現化していけたらいいなと思っています。その時々の自分にできる最高のものを、ここからもどんどん皆さんにお届けしていきたいですね。

──年が明けた1月25、26日には大阪と東京でシングル「Harmony」のリリースイベントもあるんですよね。

はい。ファンの皆さんと直接お会いすることがなかなか頻繁にはできないので、僕にとってリリースイベントはすごく大切な時間なんです。まだ少し先になっちゃいますけど、それまでぜひこのシングルを聴きながら待っていてくださいね。早くみんなに会いたい！