蒼井翔太|自分の壁を破って、その先へ

本当の意味で腹をくくれた

──9月2日にアップされたブログには、小学校3年生から不登校になってしまったこと、そして自分のことが大嫌いだったことなどが赤裸々につづられていました(参照:Animelo Summer Live2019 ~STORY~ | 蒼井翔太オフィシャルブログ「BLUE FEATHER」Powered by Ameba)。

あんな長文のブログを読んでいただいてすみません(笑)。

蒼井翔太

──あの文章を読んだときに、蒼井さんはここに来てようやく生まれ持った自らの個性を受け入れ、それを最大限生かして活動していくことを決意したんだろうなと思ったんですよね。ある意味、腹をくくったというか。

生きることを絶対にあきらめないと20代前半で誓っていたし、自分ではだいぶ前から腹をくくれていたと思っていたんですよ。でも、過去を振り返ればまだ許せない時代の自分もいるし、学校に行っていなかったという事実が覆るわけではないじゃないですか。そういう意味ではまだ覚悟が足りなかったところもあったと思うんです。でもね、あの文章を書いたことで本当の意味で腹をくくれた実感があるんです。ありのままの“蒼井翔太”としてやりたいことを思う存分やって、みんなを驚かせて、一緒に未来に向かって突き進んでいきたいなって。また1つ吹っ切れた気がするんですよね。

──そうなった蒼井さんはもう無敵ですよね。

怖いものはないなという気はしますね。だからと言って、はちゃめちゃに大暴走するわけではないですよ(笑)。信頼しているスタッフさんたちとハーモニーを奏でながらモノ作りをすることは変わらない。でも、変なことで迷うことはもうないだろうなって。

学校っていいものなのかもしれないな

──あのブログの内容とここまでのお話を聞いたうえで「Harmony」のミュージックビデオを観るともうね、胸がグッと締め付けられるわけですよ。今回は学校でシューティングされているんですよね。

はい。僕は学校という言葉自体にトラウマがあったし、学校の建物を見るだけでちょっとモヤモヤしちゃうくらい負の感情が植え付けられていたんです。だからそもそも今回は学校で撮影する予定じゃなかったんです。でも、2019年は「この音とまれ!」も含め、お仕事で学校に関係する作品に関わらせていただくことがすごく多くて。毎週、共演する声優さんと会い、みんなでワイワイやっているうちに、小学3年からポコッと空いてた僕の青春時代がようやくやってきたような気持ちになれたんですよね。30歳を過ぎて初めて青春を感じたっていう(笑)。そんなこともあって「今回のMVは学校で撮影したいです」と言わせていただいたんですよね。

──「学校に行きたい」と自ら言えたわけですね。

うん。当日、現場を訪れるまではまだ若干の不安はありましたけど、いざ撮影が始まり、その映像をチェックしてみたらね、ものすごく楽しそうに歌っている自分がいたんですよ! 当時とは学校に対する印象が全然違ったし、外から見える景色も違ったし……って、そりゃ自分が通ってた学校じゃないから当然ではあるんですけど(笑)、なんかその空間にものすごい温かさを感じることができて。「あー、学校っていいものなのかもしれないな」と初めて思えて、これまでのトラウマを克服できた気がしたんです。時間はかかってしまったけど、そう思えた自分はすごく幸せだなって。僕と同じような経験をして、大人になってもなお学校を憎んだままの人もきっといるはずですから。だからね、そういった方の心を雪解けさせるというか、気持ちが少しでもポジティブな方向に向かっていけるような、そういったお手伝いがこの曲やMVでできたらいいなあって、そんなことも考えてましたね。

蒼井翔太

──蒼井さんがピアノを弾き、たくさんの学生たちと合奏するシーンはまさに青春ですよね。皆さんいい表情で。

撮影の日はものすごく暑くて、教室にはエアコンがなかったんですよ。だからみんな汗だくでしたけど、めちゃくちゃがんばって演奏してくれてましたね。その青春の光景は僕の携帯の中に思い出としてしっかり残っています(笑)。

──抜け落ちていた青春の日々を取り戻したことで、今後「Tone」や「Harmony」をライブで歌う際にはよりみずみずしい表現が加味されていくのかもしれないですね。

あー、そういうこともあるのかもしれないですよね。「Tone」は前回のツアーで披露していたんですけど、歌うにつれて曲自体がどんどん体に染みこんで、歌い方が変化していったところもあったんですよ。CDには初々しさのある青春感が詰まっていたけど、そこから成長して、また違った潤いのある青春感がにじみ出てくるというか。「Harmony」に関しても、きっとそういう変化はあると思うので、それが楽しみですね。