蒼井翔太が6月29日にライブBlu-ray「蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe」をリリースした。
本作には2021年12月から今年2月まで開催されたライブツアー「蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe」より、ファイナルの東京・東京ガーデンシアター公演の模様を収録。さらに全公演のバックステージの様子を含むドキュメンタリー映像「SHOUTA AOI LIVE DOCUMENTARY ~make a coRe~」も収められている。
2020年に開催予定だったツアー「蒼井翔太 LIVE 2020 WONDER lab. DIMENSION」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止に。ひさしぶりのツアー実施にあたって、蒼井は「僕の中に眠る僕という本質と、まだ見ぬ可能性、変わらないものを、色んな姿に変えて皆んなに楽しんで欲しいと思っています」とコメントしていた。ツアーを断念してから2年の間に蒼井はどのような思いを抱いていたのか? そしてその思いを最新ツアーにいかにして注ぎ込んでいったのか? 自身の言葉でじっくりと語ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 斎藤大嗣
「うたいびと」は蒼井翔太の今後を左右する、勝負のライブだった
──2020年5月から開催予定だった全国ツアー「蒼井翔太 LIVE 2020 WONDER lab. DIMENSION」がコロナ禍の影響を受けて中止になりました。そこから約1年半にわたってツアーができない状況が続いていたわけですが、その間、蒼井さんはどんな気持ちで過ごしていましたか?
どのアーティストさんも同じだったとは思うのですが、2020年の初頭はコロナ禍という未知の出来事に対して大きなダメージを受けていましたし、なかなか前を向いて一歩を踏み出せる雰囲気ではなかったですよね。「蒼井翔太 LIVE 2020 WONDER lab. DIMENSION」に関しても実現させる気持ちで念入りに計画をしてはいましたけど、結果的には中止せざるを得なくなってしまって。もちろん悔しい気持ちは強くありましたし、一方では「仕方ないよね」と事態を飲み込まなきゃいけない感じもあったと思います。
──ここまでコロナ禍が長引くと想像はしていましたか?
想像はしてました。「これはいつ終わるかわからないな」って。だから、そこからの期間は改めて自分自身と向き合うことを大事に、日々を過ごしていた感じでしたね。いつかまたライブができる日が来たら、自分はそこでどんなことをしたいのか、何を一番に伝えたいのか。そんなことを常に考え続けた日々でした。
──そこで考えたことを、昨年12月から今年2月まで開催された「蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe」に注ぎ込んでいったわけですね。
はい。「DIMENSION」ツアーはなくなってしまったけど、そのために準備をしていたことのすべてがなくなってしまったわけではなかったですしね。例えば、「DIMENSION」のために細かく打ち合わせをして作り上げていった衣装を、「coRe」のオープニングで着ることにしたりとか。また、ひさしぶりの有観客ツアーができるならば、僕は自分の声、自分の歌を第一に届けたいと思うようになっていたんです。なので「coRe」ではあまり飾りすぎないシンプルなセットの中でパフォーマンスすることを決めたんですよね。
──「coRe」のライブを拝見して強く感じたのは、蒼井さんのボーカル力の進化でした。その1つの要因になっているのが、2021年3月に開催されたオンラインライブ「蒼井翔太 ONLINE LIVE at 日本武道館 うたいびと」だったと思っていて。ピアニストと2人だけでステージに立つことで、蒼井さんのボーカリストとしての魅力をより鮮明に感じられましたから。
もともとは有観客でライブをするために日本武道館を押さえていたんですけど、それができない状況だったので、だったらオンラインでやってみようということになって。日本武道館でのライブは5年ぶりでしたし、自分にとっては大きなターニングポイントになった大事な会場でもあったので、開催できたのはすごくうれしいことでした。ただ、ライブというものは本来、皆さんと直接向かい合い、同じ空気を吸いながら、その場所にしかない雰囲気を全身で感じてもらうものだと思うんですけど、オンラインだとそこを実現するのがやっぱりなかなか難しい。となれば、蒼井翔太の歌の力だけで通常のライブと同じくらいのものを伝えなきゃいけないし、みんなの背中をちゃんと押さなきゃいけないわけで。そういった意味では、“うたいびと”である蒼井翔太の今後を左右する勝負のライブでもあったんですよね。自分で自分に大きなハードルを用意し、めちゃめちゃプレッシャーをかけたなって思いましたけど、それくらい強い決意をもって臨んだライブでした。
──その結果、自ら用意したハードルを軽々飛び越え、ボーカリストとしてステップアップできたことを実感したんじゃないですか?
いや、それはわからないです。とにかく伝えようと思っていたのは間違いないですけど、それが自分にどんな影響をもたらしてくれたのかはまだわからないのが正直なところかな。ただね、目の前に皆さんがいない状況だったけど、僕の頭の中にはこれまで一緒に築き上げ、共有してきたたくさんの思い出が鮮明に浮かんでいたんですよ。みんなが笑顔でペンライトを振ってくれている光景が間違いなく見えていた。そういう経験ができたことは自分にとって一番の収穫でしたね。僕がこれまで歩んできた道のりで得たものへの誇りを感じることもできたし。僕を応援してくれる皆さんの存在と、その笑顔があれば、僕は自分の思いを常にまっすぐ伝えていける。あのオンラインライブを経て、そういった気持ちは改めて強くなりましたね。
止まった時間を取り戻すことよりも、新しい未来に向けた視点を大事にしたほうがいい
──コロナ禍になったことで、ライブ自体に対する思いの変化もあったはずですよね。当たり前だと思っていたことがそうではなかったんだと多くの人が気付いたと思うので。
そうですね。コロナ禍であるないにかかわらず、有観客であっても、無観客であっても、どんなライブにおいてもそこには参加してくださる皆さんの大きな決断と覚悟があるということに改めて気付きました。おっしゃっていただいたように、今までは普通にライブを開催できることが当たり前だと思っていたところがありましたけど、それは決して当たり前ではなく、実はすごいことなんだっていう気持ちに変わったというか。ライブは一番素の自分を見せられる場所であり、蒼井翔太が蒼井翔太でいられる場所ということはまったく変わっていないです。でも、そういう場所に立ち続けられているということは、たくさんの方々の決意と覚悟で守られているからこそなんだなって。そう考えると、ライブ1本に対してありがたみを感じる気持ちはより強くなりますよね。
──そういったさまざまなストーリーを経て、開催が決定した「蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe」へはどんな気持ちで向き合いましたか?
止まっていた時間を取り戻したいという気持ちがまずあったんですよ。もちろんコロナ禍においてもがむしゃらに前を向いて進んでいたとは思うけど、やっぱりどこかで時間が止まってしまっている感覚を持ってはいたので。ただ、「coRe」の開催が決まって、いろいろ準備を進めていく中で、気持ちの変化があったんですよね。このツアーでは、止まった時間を取り戻すことよりも、新しい未来に向けた視点を大事にしたほうがいいんじゃないかなって。そこからタイトルの“coRe”というワードも見えてきました。未来を見据えたうえで、自分の中に変わらずある“核=core”、プライドや信念、確信みたいな部分をテーマにしてツアーを回るべきだなと思いました。さらに、ここから改めてスタートを切りたい思いもあったので、“R”を大文字にすることで“Re”という意味も込めてみました。アンコールのラストに「START!!」を持ってきたのもそういった思いからです。みんなと作ってきたレールを今後もずっとつないでいけるように。
──待ってくれていたファンの方との再会はいかがでしたか?
「DIMENSION」の中止から約1年半、前回のツアー「蒼井翔太 LIVE 2019 WONDER lab. I」からしたら約3年ぶりの再会だったので、どの会場も、その間に膨らませ続けていたお互いの「会いたい」という思いのぶつけ合いのようなライブだった気がしますね。客席では声が出せない状況ではありましたけど、その分、ペンライトを大きく振ってくれたり、いつも以上に拍手をしてくれたりして、より距離を近付けようとしてくれている姿がすごくうれしかったです。今回、Blu-rayでリリースされる東京ガーデンシアター公演はツアーファイナルだったので、かなり緊張はしていたんですよ。グッとこみあげるものもあったし。でも、映像を確認したら1曲目から今まで以上に笑顔で歌っている自分がいて(笑)。ひさしぶりのツアーということでいろんな思いはあったけど、とにかく楽しかったなって改めて感じましたね。
──内容としては、オープニングから蒼井さんの多彩な魅力にグッと引き込まれる選曲になっていましたね。
僕自身のテーマでもある“変わらず変わる”スタイルを、「Tone」「ブルーバード」「Eclipse」という冒頭3曲でしっかりお見せできたなって思います。ライブを観ていただいた関係者の方からも「驚いた」という感想をたくさんいただけました。そこからの流れも、改めて見るとテンションの上がるセットリストですよね(笑)。
──Blu-rayのDISC 2に収録されているドキュメンタリー映像内では、「地獄の編成」だと自らおっしゃっていましたね。
そうそう。今回はね、「Powder snow」のようなゆったりめの曲はありますけど、バラードが1曲もなかったんですよ。基本的には今の自分として歌いたいと思った曲をめちゃくちゃ詰め込んだセットリストではあるんですけど、同時に夢の世界を一気に駆け抜けるような内容にもしたかったというか。気付いたら終わってしまっていたと感じてもらえるように、ずっと走り続ける内容にしたかったんです。改めて見ると、この内容でよく平気で走り切れたなって思いますけどね。まあでも、1曲歌って消耗した体力はみんなの笑顔ですぐ補充されるから大丈夫なんです。みんなが目の前にいないリハーサルでは毎回、死にそうになってましたよ(笑)。
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1年半のストーリーを感じてもらえたらうれしい