コンプレックスを歌い上げることで、誰かの光になれる
渡辺 芸人さんもお笑いに対して熱い気持ちを持っている方がすごく多いですよね。音楽に関してもそうなんですけど、僕もそういう部分を感じることでその人のことが好きになるタイプなんです。だから「ガッツのある人が好き」っていう高橋さんとは通ずるものがあるなって。
高橋 好き好きやとは思いますけどね。いろんな人たちが介入することでめちゃくちゃヒットする曲ももちろんあるし、めっちゃカッコいい人たちが踊ってる音楽もあって、それが好きな人たちもたくさんいる。でも僕は、そういうイケてるヤツにはあんまり魅力を感じないんですよ。だからと言ってアンテナがイケてないという意味ではないですよ。
渡辺 はい(笑)。
高橋 要はね、「お前はなんにもせんでもモテるやろう」ってヤツにはあんまり惹かれないんですよ。むしろ逆襲のために音楽やってる人のほうが、僕は「カッコいいな」って思ってしまうので。
渡辺 その感覚はすごくわかります。僕自身、見返してやりたいとか反骨精神みたいなものが音楽をやるルーツになってるところがあって。僕は日常生活の中で自分が発言する権利がほとんどない学生生活を送ってきたんですよ。中学時代には学校に行けなくなってしまったこともあった。だから歌に言葉を乗せようと思ったし、そのことが救いになったんです。もちろんそこには高橋さんの存在、お笑い芸人さんの存在が大きな救いになったところもあったんですけど。
高橋 うんうん。
渡辺 で、今はそうやって自分の中のコンプレックスを歌い上げることで、同じようなコンプレックスを抱えている人たちの光になれればなと思って音楽をやっているところもあって。そこにはやりがいも感じるし、単純にすごく楽しいことでもあるから。
高橋 お笑いに関してもね、成功者の自慢話なんて誰も聞きたくないやろなって気持ちがどこかにはあるんですよね。それよりは、何かで挫折した、失敗した、うまくいかへんかったことを語るほうが笑いにはなるなとは思う。だからと言って、わざと失敗しようとも思わへんけどね(笑)。
渡辺 そもそもクリエイターとしては、胸の中に熱いものを持っていなきゃおかしな話だとも思うんですよ。それはお笑い芸人さんでもバンドマンでも一緒だろうなって。ただ、それをどう表現するかのバランスは大事ですよね。熱い部分をそのまま出して、それが受け入れられる人もいるとは思うけど、僕はそこが狙わずともにじみ出ているものが好きなんだと思うんです。楽しい気持ちとか、叫び出したい気持ちに素直に従っていれば、狙わずともお客さんも同じものを感じてくれるだろうなって。挫折や苦労したことなんかもそうですよね。それを無理やり感じてもらおうとすると押し付けがましくなっちゃうものだから、苦労の中から生まれたものをあくまでも自然に表現すればいいのかなって。そこでどう受け取られてもいいんですよ。結果として楽しんでもらえれば、娯楽としては成功なんじゃないかなと思うんですよね。
渡辺、全力で犬井ヒロシやります
──ここからメジャーで戦っていくアンテナに対して、高橋さんはどんなことを期待しますか?
高橋 アンテナという名前を誰しもが知ってる状況になったらうれしいですよね。ロックフェスでお客さんをダイブさせるような音楽性ではないと思うんで、ワンマンライブでの規模をどんどん広げていって、そのチケットがどんどん取れへんようになっていくっていう売れ方が似合うような気はします。それができるバンドやと思うし。
渡辺 うれしいです。今回こうやって対談させていただきましたけど、高橋さんはまだまだ遠くにいらっしゃる存在なので、そこにバンドとして追いつけるようにもっともっとがんばろうと思います。で、いつかは僕にとっての高橋さんのように、アンテナというバンドが誰かに影響を与えられる存在になれたらいいなと思いますね。
高橋 渡辺くんはすごく正直な子なんでね、そこは大事にしてほしいですよね。バンドが売れたときに、周りにちやほやされて変わってほしくないなって。「犬井ヒロシのエピソードはNGで」とか、僕のことを黒歴史扱いしたら思い切り告発してやろうと思います。
渡辺 あははは(笑)。絶対そんなふうには変わらないので大丈夫です。
高橋 あとそうや、僕がアンテナのライブを観に行ったらステージ上で渡辺くんが犬井ヒロシをやってくれるらしいんですよ(笑)。
渡辺 来てくださるときは必ずやります! 振り切ってやります!
高橋 それは観たいけど、前フリなしでやったらお客さん「何してんの?」ってなるでしょ(笑)。そのときは僕が舞台でまずしゃべってからやってもらうようにしますわ。
渡辺 ほんとですか!? いつか実現できるようにがんばります。ほんとに今日はありがとうございました。
高橋 いやいや、こちらこそありがとう。
- アンテナ「モーンガータ」
- 2017年10月18日発売 / BOGUS RECORDS
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[CD]
1800円 / TECB-1006
- 収録曲
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- イダンセ街
- アルコール3%
- 呼吸を止めないで
- 無口なブランコ
- 深海おまじない
- モーンガータ
- ぼやけた朝陽
アンテナ
「メジャーデビュー1st mini AL『モーンガータ』release tour『Late at Night 2017』」
- 2017年10月29日(日)宮城県 仙台MACANA(ワンマン)
- 2017年11月18日(土)北海道 Spiritual Lounge
- 2017年12月7日(木)愛知県 APOLLO BASE
- 2017年12月9日(土)広島県 CAVE-BE
- 2017年12月10日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2017年12月15日(金)東京都 TSUTAYA O-NEST(ワンマン)
- アンテナ
- 渡辺諒(Vo, G, Key)、池田晃一(G, Key, Cho)、本田尚史(Dr, Cho)、鈴木克弘(B, Cho)からなるロックバンド。渡辺を中心に2010年に結成、2011年12月にタワーレコード限定販売の1stミニアルバム「さよならの代わり」を発売する。その後は仙台を中心に精力的なライブ活動を行う傍ら、2015年5月に初の全国流通盤2ndミニアルバム「バースデー」をリリース。2016年2月には3rdミニアルバム「底なしの愛」を発売、10月に現在のメンバーが集まる。翌2017年1月に4thミニアルバム「天国なんて全部嘘さ」を発表。10月にメジャーデビュー作「モーンガータ」をリリースした。
- 高橋茂雄(タカハシシゲオ)
- お笑いコンビ・サバンナのボケ担当。1994年に八木真澄とコンビを結成し、1997年に「ABCお笑い新人グランプリ」優秀新人賞を受賞。その後テレビ、ラジオ、CMと多方面で活躍し、現在は日本テレビ「ヒルナンデス!」、TBS「アッコにおまかせ!」などにコンビで出演。音楽への造詣も深く、J:COM「MUSIC GOLD RUSH」では西脇彩華(9nine)と共に番組のメインMCを担当している。