アンテナ「モーンガータ」特集|メンバーインタビュー&高橋茂雄(サバンナ)対談で紐解く “ニューレトロ”なバンドの正体

仙台発の4人組バンド、アンテナがミニアルバム「モーンガータ」でメジャーデビューを果たした。

歌謡曲を想起させる耳なじみのいいメロディと、あらゆる洋楽を消化した独自のサウンドを融合させた“ニューレトロ”なるジャンルを掲げて活動する彼ら。全7曲を収録した本作には、日常の中で誰しもが感じるであろうさまざまな感情の機微を繊細に紡ぎ出した、心地よい世界が広がっている。

音楽ナタリーではメジャーデビュー作のリリースを記念し、メンバー4人へのインタビューを実施。バンドの成り立ちや本作に込めた思いを聞いていく。また特集後半では、アンテナの渡辺諒(Vo, G, Key)とサバンナ・高橋茂雄との対談も掲載する。高橋がMCを務めるJ:COMの音楽番組「MUSIC GOLD RUSH」へアンテナが出演したことをきっかけに親交が始まったという2人によるクロストークを楽しんでほしい。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 上山陽介

アンテナインタビュー

悔しい思いをした2年間

──アンテナは2010年結成とのことなので、もう7年のキャリアになりますね。

渡辺諒(Vo, G, Key) そうですね。ただ結成当初からのメンバーは僕1人ですし、当初は地元の仙台からほとんど出ることもなく活動してたので、バンドとしての土台が固まり始めたのは2012年くらいからで。

池田晃一(G, Key, Cho) そのタイミングで前任のギターの人が辞めることになって、大学の後輩だった僕が紹介されて加入しました。当時僕はライブハウスで照明のバイトをしていて、アンテナのライブは何度か観ていたんですよ。そこで聴いた曲の感じがすごく好きだったんで、すぐに「いいっすよ」って返事をして。

本田尚史(Dr, Cho) 僕も同じタイミングで声をかけられて。最初はレコーディングのサポートとして誘われたんですけど、その後はライブにも出るようになり、明確な加入の話もないまま今に至る感じですね。

鈴木克弘(B, Cho) まだ正式メンバーじゃないもんね(笑)。

渡辺 そろそろちゃんと言わないと(笑)。

本田 あははは(笑)。僕は歌モノがけっこう好きなので、すごくきれいな歌が印象的だったアンテナの音楽の世界にはスッと入ることができたんですよ。なので「俺でよければ全然叩きますよ」みたいな感じでしたね。

渡辺諒(Vo, G, Key)

渡辺 そこでバンドとして改めて形になったあと、実は2年間くらい某レコード会社と育成契約を結んだんですよ。そのときに僕らは、なんでもかんでも大人の人たちがやってくれるんだろうなっていう勘違いをしちゃったんですよね。なので、その間は自分たちから能動的な動きをほとんどしなくなり、結果としてはメジャーデビューに至ることもなく契約が終了したんです。

──なるほど。そこでバンドとしては悔しい思いも経験しているわけですね。

渡辺 そうなんですよ。でも、その2年間の悔しい経験を通して、自分たちの足元を改めて見つめ直すこともできたし、自ら発信することの大切さも学んだんです。で、2014年に自主レーベルを立ち上げて、セルフマネージメントで活動するようになって。

──鈴木さんが加入したのはいつなんですか?

渡辺 前任のベースが難聴になってバンドが続けられなくなってしまったんです。

鈴木 それで僕に声をかけてもらって。正式に加入したのは去年の10月ですね。当時別のバンドもやってたんですけど、メンバーが抜けたりしてけっこうヒマな時期で。だから「OKOK、全然やりますよ」って、すんなり入りました(笑)。

初期衝動を取り戻した今、メジャーに飛び込む

渡辺 そこでようやく今の4人がそろったんですけど、このメンバーでの最初のライブはだいぶひどかったですね。思い出したくないくらい(笑)。今のアンテナのライブでは俺とギター(池田)がシンセサイザーを弾く曲もあるんですけど、それまではまったく使ってなかったんですよ。

──あ、そうなんですか。シンセを使うようになったのは最近のことなんですね。

渡辺 そう。しかも鈴木が入ってからの初ライブが、シンセを導入した初ライブでもあって。もういろんなことでいっぱいいっぱいになっちゃって(笑)。

鈴木 そうだね。でもそこからライブを重ねていくことでまとまっていくんですけど。

本田 今はもう大丈夫だよね。人間関係的にも演奏的にもレベルは上がってると思うんで。

──結成から紆余曲折を経て今回メジャーデビューにたどり着いたわけですから、その喜びもひとしおなんじゃないですか?

渡辺 そうですね、単純にうれしい気持ちはあります。最初、今のスタッフの方に声をかけてもらったときはだいぶ警戒してましたけどね。「おいしそうな話にはもう乗るもんか」みたいな(笑)。セルフでやっていくことでのメリットを感じていたところもありましたし。でも今はすごく信頼してるし、安心感もある。だからこそ、メジャーという場所に飛び込んで挑戦してみることもいいんじゃないかと思えたし、支えてくださる方々の期待に応えられるようにがんばりたいなっていう思いも強くなってきています。

鈴木克弘(B, Cho)

池田 とは言え、バンドの心境的には今まで通りに作品を作ってライブをしていくことだけだなとは思ってます。拠点を東京に移すこともまだ考えてませんし。いつかは仙台を背負って立つバンドになりたいですけどね。

鈴木 バンドとしては、いい曲作って、いいライブするってことが大前提ですから。そこはメジャーでも一切変わらず。

渡辺 楽曲に関しては、自分の気持ちに正直に作れてる感覚が今すごくあるんですよ。ある意味、結成当時の初期衝動を取り戻せていると言うか。売れそうな曲とか、誰が聴いてもいいと思ってもらえるような曲を作らなきゃって気持ちになってしまっていた時期もあったんですけど、今は音楽の本質を見ることができている。そういう意味ではすごくいい状態でメジャーデビューできるなっていう気持ちもありますね。

アンテナ「モーンガータ」
2017年10月18日発売 / BOGUS RECORDS
アンテナ「モーンガータ」

[CD]
1800円 / TECB-1006

Amazon.co.jp

収録曲
  1. イダンセ街
  2. アルコール3%
  3. 呼吸を止めないで
  4. 無口なブランコ
  5. 深海おまじない
  6. モーンガータ
  7. ぼやけた朝陽

アンテナ
「メジャーデビュー1st mini AL『モーンガータ』release tour『Late at Night 2017』」

  • 2017年10月29日(日)宮城県 仙台MACANA(ワンマン)
  • 2017年11月18日(土)北海道 Spiritual Lounge
  • 2017年12月7日(木)愛知県 APOLLO BASE
  • 2017年12月9日(土)広島県 CAVE-BE
  • 2017年12月10日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
  • 2017年12月15日(金)東京都 TSUTAYA O-NEST(ワンマン)
アンテナ
渡辺諒(Vo, G, Key)、池田晃一(G, Key, Cho)、本田尚史(Dr, Cho)、鈴木克弘(B, Cho)からなるロックバンド。渡辺を中心に2010年に結成、2011年12月にタワーレコード限定販売の1stミニアルバム「さよならの代わり」を発売する。その後は仙台を中心に精力的なライブ活動を行う傍ら、2015年5月に初の全国流通盤2ndミニアルバム「バースデー」をリリース。2016年2月には3rdミニアルバム「底なしの愛」を発売、10月に現在のメンバーが集まる。翌2017年1月に4thミニアルバム「天国なんて全部嘘さ」を発表。10月にメジャーデビュー作「モーンガータ」をリリースした。