ナタリー PowerPush - 安東由美子

踏み出す勇気に年齢制限はない 遅咲きシンガー1stアルバム完成

音楽業界のOLからアーティストへと転身し、昨年9月に根岸孝旨プロデュースでデビューを果たした安東由美子。この1年間、数多くのライブを経験することで実力を蓄えてきた彼女が、満を持して1stアルバム「年齢制限」をリリースする。

自身が愛してやまない「昭和」のテイストをたっぷりと盛り込むことで描き出した独自の世界。その制作の裏側について話を訊いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 上山陽介

バンドを組んだら心のバランスが取りやすくなった

──デビューからちょうど1年。じっくりと、でも精力的に活動されてきた期間を振り返るとどうですか?

ステージの上に立つ人のはがゆさ、大変さを感じる部分もたくさんありましたけど、逆に人の背中を押せることの尊さ、喜びをものすごく感じることができた1年でしたね。最近は緊張はなくなりましたけど今年はしんどいことも個人的にありました。家族の「他界」は私の人生を大きく変え、一時は精神的にも参りました。シングル3枚のリリース、全国フリーライブ、ワンマンライブ、路上ライブなど、ほぼ休みなく突っ走ってきた中で身に染みて感じられたそういうことは、OL時代には絶対に手にすることができなかったことだと思います。反対にOLから離れてみて改めてOLのほうの大変さも知りました。

──プロとしての意識も高まりました?

安東由美子

デビューの頃は割とヘラヘラしていたのですけど(笑)、だんだん物事を真摯に受け入れられるようになったり、自分を客観視して見られるようになってきたところはあります。また同時に随分ナイーブにもなりました(笑)。あと、作曲は相変わらず机をたたいてリズムを取りながら鼻歌で作ってるんですけど、2~3カ月くらい前からギターを弾くようになったんです。それは大きな変化だと思います。

──最近のフリーライブでは弾き語りをしているそうですね。

はい。今までは、「コード? そんなのいいよお」って思ってたんですけど(笑)、いざ始めてみたら楽器の面白さを感じられるようになってきたんです。まだ全然上手に弾けないんですけど、「いつかライブでも弾こう」っていうんじゃ物事は進まないので、とりあえず「いつか」を「今から」に変えて弾き語りを始めました。

──今後は曲作りにもギターを使うようになるんじゃないですか?

いや、それはアカペラでこそ作れる作曲の面白さがあるのでないかと思います。ものすごくうまく弾けるようになったとしても、机をたたきながら作るのに慣れてしまっているので、そこは変わらないと思います。出しっぱなしのコタツをたたいて作ってますよ、今も(笑)。

──あと最近、バンドを組んだそうですよね?

そうなんです! 元C-C-Bの渡辺(英樹)さんや田口(智治)さんたちと「安だらけ」というバンドを結成したんです。バンドはもうとにかく何も考えないで楽しく音楽をやるっていう感じなので、自分の本質的なものを出す安東由美子としてのソロ活動とはまた全然違っていて。そういった2つの柱で活動していくことができるようになったので、心のバランスが取りやすくなったところがありますね。昔からバンドに憧れていたので、純粋にうれしいっていう気持ちも大きいです。あくまでもソロがメインですけど、今後も年に数回はバンドでもライブをやっていくと思います。

デビュー1年で夢が叶ったんです

──ソロとしては、現在も進行中の全国都道府県フリーライブなどたくさんのライブを経験してきたわけですが、その中でも気持ち的な変化ってありました?

安東由美子

ステージに上がる直前は今でも「誰か客席に座っていて! 立ち止まって!」っていう感じになるんですけど、ライブに向けての精神面はものすごく強くなったと思います。路上ライブとかショッピングモールでのフリーライブとかは、歩いている人たちの足を止めないといけないじゃないですか。そこでやっぱり絶対に止めてやるんだっていう気持ちにならないとダメなので。私にとっては1人のお客さんもワンマンのたくさんも全く同じ気持ちです。

──ライブとしてはかなりシビアな状況ですもんね。

そうですね。あとはフリーライブで全国を回っていく中で、思い出深いこともたくさんあって。例えば三重県に行ったときはパーテーションで仕切られた会場で、ちょっとリサイタルみたいなライブになったんですけど、たくさんの人たちに花束をいただいたり、ちっちゃい男の子が私の体の半分くらいある大きなキティちゃんのぬいぐるみをくれたりして。今の世の中は冷たいなんてことをよく言いますけど、いやいや素晴らしい人との出会いっていうのはちゃんとあるなってものすごく思えたんです。

──先日、9月6日にはデビュー1周年を記念するワンマンライブも行われました。会場となった渋谷duo MUSIC EXCHANGEって……。

そうなんです! 前回のインタビューのときに、「夢はduoでライブすることです」って言ったと思うんですけど、それがデビュー1年で叶ったんですよ。そのライブでも新しい安東由美子はお見せできたと思うんですけど、アーティストとしての心意気はどんどん変わってきてる感じがしますね。音楽をやること自体の幸せも実感できているので、この先、自分の中にある音楽というものをこれまでとはまた違った視点で表現できるんじゃないかなって思ってます。

ニューアルバム「年齢制限」 / 2012年9月19日発売 / 3000円 / 未来RECORDS / AYMR-0003

収録曲
  1. 意固地
  2. ホームランは狙わない
  3. 平凡ガール
  4. ジョーカーになりたい
  5. 一ヶ月
  6. 月にナイショ
  7. はんぶんこ
  8. 9月の風
  9. 濡れた手紙
  10. 大人の胸キュン
  11. 転校生のお弁当
  12. いちごミルク
安東由美子ツアー「あんゆみの冬の陣」

2012年12月10日(月)
愛知県 名古屋TOKUZO

2012年12月11日(火)
大阪府 心斎橋 Music Club JANUS

2012年12月13日(木)
東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

安東由美子(あんどうゆみこ)

3月15日生まれ、東京生まれ広島市育ちの女性シンガーソングライター。音楽業界のOLとして働いていたが、2010年秋より作詞作曲活動を開始し、同時に都内でのライブ活動をスタートさせる。2011年9月に根岸孝旨のプロデュースによるシングル「平凡ガール」でデビュー。路上ライブ、47都道府県フリーライブ、都内でのライブを活発化させ、着実にファン層を増やしていき、OL時代から憧れの存在であったドラマー古田たかしにバンドマスターをお願いし、フルバンドで2012年9月には東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEでワンマンライブを完売、敢行した。1stアルバム「年齢制限」を2012年9月19日にリリース。12月には初の東名阪ツアーも決定している。