4人組ボーカルグループ・et-アンド-が配信シングル「宵宵」をリリースした。
2022年に入り、“春夏秋冬4部作”のシングルを連続リリースしているet-アンド-。その第3弾となる「宵宵」は秋を彩る失恋ソングだ。タイトルの「宵宵」は「毎晩毎夜」という意味を持つ言葉で、元恋人への思いをなかなか断ち切れない自分に対して、夜な夜な「どうして?」とマイナス思考に陥ってしまう女の子の気持ちが歌われている。音楽ナタリーではこの曲のリリースに合わせてメンバーにインタビューし、4人で共作したという歌詞の制作過程、お披露目からの約1年半の日々で感じた変化、グループがステップアップするための課題について話を聞いた。
取材・文 / 小野田衛撮影 / つぼいひろこ
失恋の苦しみを表現するためにしたことは……
──新たにリリースされた「宵宵」は“春夏秋冬4部作”の第3部にあたる楽曲です。メンバー4人で歌詞を共作したとのことですが、ズバリ聴きどころを教えていただけますか?
野島樺乃 この曲は私たちet-アンド-にとって、初めての失恋ソングです。「どうして私じゃないんだろう?」「どうしてうまくいかないんだろう?」という心の奥底に秘めた“病み”の感情が表現されています。
山崎カノン そもそもet-アンド-って失恋どころか恋愛ソング自体が少なかったんですよ。前作の「夏海月」も「夏に向けて気持ちがワクワクしてくるね!」ということを歌った、明るめのテーマの楽曲でしたし。
モラレスきあら ちなみに春にリリースした「花心」は背中を押してくれるような応援ソングで、聴く人を元気付けるタイプの曲でした。
栗本優音 「同世代の女の子たちに共感してもらえる曲を歌いたい」というのは、et-アンド-が結成当時から一貫して思っていることなんですよ。そこは今回の「宵宵」も同じなんですけど、ここまでシックな曲調や切ない歌詞は私たちにとって新しい挑戦でした。曲調に合わせて、歌い方もだいぶ変わりましたし。
──切なさを出すように歌ったということですか?
栗本 そこが難しかったところで、レコーディングでは「あまり重苦しい気持ちを前面には出さないでほしい」とプロデューサーの菊池(一仁)さんから言われたんです。「むしろ無機質というか、ロボットみたいに感情を殺したほうが伝わるから」って。なので自分なりに声のトーンとか試行錯誤しながら、切なさを表現したつもりです。
山崎 今回、歌い出しは私が担当しているんです。曲のイメージを決定付ける大事なパートだから、プレッシャーと同時にやりがいも感じて。私はet-アンド-の曲の中でウイスパーボイスで歌うことが多いんですけど、今回はそれこそ本当にささやくような感じでレコーディングしました。
モラレス 逆に私はほかの3人との違いを出すために、力強く低いトーンで歌っています。カッコいいイメージにしたかったので。
──野島さんと山崎さんはアイドルグループにいたとき、基本的に恋愛禁止でしたよね。おそらくその規則を守っていたと思うんですけど、あまり経験がないであろう失恋の苦しみを表現するのは難しくないですか?
野島 「おそらく」ってどういうことですか(笑)。きちんと守っていましたよ。でも真面目な話をすると、そこは本当に苦労した点なんです。だって恋愛経験がないのに、失恋の感情なんて表現しようもないじゃないですか。それで具体的にどうしたかというと、他人の恋愛経験を片っ端からリサーチしました。
──具体的には?
野島 まずは友達の恋バナを聞くんです。でも、それだけじゃ足りないから「失恋 病み」とかインターネットで検索する。そうすると、SNSなどから、失恋で苦しむ人たちの心の叫びが出てくるんですよ。「そうか、こうやって絶望するんだな」と学習していきました。
栗本 「学習した」って(笑)。学校の勉強じゃないんだから……。
野島 いや、でも本当にそんな感じだったよ。もちろん恋愛映画もたくさん観たしさ。
山崎 私は映画やネットに頼るのではなく、自分の妄想で勝負しました。
モラレス 出た! ノン(山崎)は妄想力が半端じゃないからね。普段から妄想ばかりしているんですよー。
山崎 寝るときは必ず布団の中で妄想しますね。それもテーマはキュンキュンするような恋愛限定で。妄想の世界では、私、恋愛経験はかなり豊富なほうだと思います(笑)。
──ファンにとっては気になる発言かもしれません(笑)。詳しく教えていただけますか?
山崎 えっとですね、ずっと妄想の中で付き合っている彼氏がいるんですよ。Aくんと言うんですけど。身長は高めで175cm。「そこまで高くないじゃん」と思うかもしれませんが、私は背が低いからちょうどいいんです。目は二重で、髪型は黒色の短髪。実在しないにもかかわらず、ずっとAくんのことが好きなものだから、妄想するたびにニヤニヤしちゃうんです。ところが聞いてください! 私、Aくんとお別れすることになったんですよ!
野島 えー、何があったの!?
山崎 それは言えない(笑)。でも私はAくんのことが本当に好きだったから、ものすごく落ち込んじゃって……。おかげでその日は全然眠れなかったし、朝4時くらいまで茫然としていました。だからそのときの感情を「宵宵」の歌詞にして、レコーディングのときも歌に投影したつもりです。
モラレス すごい……。そこまでいくと、妄想も立派な才能だよ。想像力が豊かで、うらやましいもん。
作詞は本当に奥が深い
──作詞については、どうやって作業を進めたんですか?
野島 最初にそれぞれが自分の書いた歌詞をスタッフさんに提出し、全体のバランスを見ながら完成させていくスタイルでした。わりと偏りなく、均等に歌詞が採用された印象があります。
栗本 「Congratulation 苦しい 苦しいな 祝福すらできなくてさ」というパートは私が書いた歌詞で、自分で歌ってもいるんですけど、作詞するにあたって設定を作ったんですね。「自分が別れてしまった彼氏には、もうすでに新しい彼女ができている。でも私は素直に『おめでとう』なんて祝福できない」という物語なんですけど。
野島 うーん、切ないなあ。
栗本 私は高校3年生なので、学校の友達から恋愛トークを聞きまくりました。というか、女子高生が話すことなんて、ほぼ恋愛のことだけなんですよ。彼氏の愚痴とかも聞くし、結構エゲつない話も出ますし……。だから歌詞のネタ集めには苦労しなかったです(笑)。
モラレス 作詞って単に好きな言葉を並べるだけじゃなく、メロディやリズムに当てはめなくちゃいけないじゃないですか。そこが難しいんですよね。私は韻を踏むのが好きなので、ネットで韻を踏める言葉を検索することもあるんです。でも実際に作業していると字余りしちゃうこともいっぱいあるし、「もうー!」って頭を掻きむしりたくなります。
野島 作詞は本当に奥が深いですね。まだまだ学ぶことがたくさんあるし、もっと大勢の人に届くような歌詞を作りたいと改めて思いました。
──「宵宵」はミュージックビデオも今までと違う4人の姿が印象的でした。
野島 新機軸を意識した曲なので、今まで縦型サイズにこだわってきたMVも今回は横型に変えました。デビュー1周年を迎えたことで、心機一転というか、自分たちの新しい一面を見せようという気持ちがあったんです。
栗本 ここまでがっつり演技したのは初めてだと思います。しかも性格が悪そうな感じで、ずっと睨み合っている演技(笑)。そもそもがシリアスな曲なので。
モラレス 4人全員が恋のライバルで、“ハートのエース”を探しに行くというストーリーなんです。ありがたいことに監督から「モラレスの演技はいいね」ってお褒めの言葉をいただいたんですけど、どうせなら睨む表情だけじゃなくて笑顔の演技も褒められたい(笑)。
デビューから1年半、メンバー自身が感じる変化
──グループがお披露目されたのが2021年4月。そこから1年半が経過しました。自分たちで感じる進化や変化はありますか?
栗本 ライブで一番変わったのはMCじゃないですかね。今、「et-アンド-のskill up TIME」という自主ラジオ番組をSpotifyのMusic+Talkで配信しているんですけど、その収録でスタッフさんにビシバシとけっこうダメ出しされるんですよ。それで確実にトーク力は上がったと思います。
野島 あの番組は本当にありがたい! 去年のライブ映像を観ると、MCがダメすぎてビックリしますから。
栗本 トークって人の会話に割り込む度胸みたいなものも大事じゃないですか。そういうメンタルの部分も番組で鍛えられた気がします。
山崎 あと、私は表情が変わったと思います。1年半前の私だったら、「宵宵」の世界観に合ったシリアスな表情や表現はできなかったんじゃないかな。それこそアイドルグループにいた頃は、こんな曲を歌う自分が想像できない(笑)。et-アンド-としてデビューしてからいろんなライブを経験してきましたし、メンバーからも学んだこともたくさんあります。「宵宵」みたいな曲が似合う自分に、少しずつ成長できたんだと思います。
モラレス 当たり前だけど、歌とかダンスのパフォーマンス面も、デビューしたときよりは確実に進化しているはずです。それと個人的に感じているのは、4人の友情、絆がさらに深まったこと! もちろん最初から仲はよかったんですけど、ライブを重ねるたびに一体感が増していって。特にノンは人見知りだから、去年の段階ではここまでの妄想女王だとは知らなかったです!
山崎 そんなふうに言わないでー(笑)。
モラレス ツアーで各地を回っていると、移動中にくだらないことで爆笑したり、女同士での裸の付き合いがあったり、いろんなことを一緒に経験しますからね。楽屋でトランプに熱中したこととかも含めて、4人で濃密な時間を過ごしたからこそ絆が深まったんだと思います。
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4人の相性が奇跡的にいい