「お邪魔します」って入ってきたら面白いかな
──「FABRIC YOUTH」は白井さん、磯部さん、リアドさんがアレンジを担当したそうですね。
磯部 はい。アルバム制作の最終段階では、同時進行でいくつか曲を作っていて。洋平は別の曲のアレンジをしていたから、「FABRIC YOUTH」はマーくん、俺、リアドの3人でやろうと。完成形の明確なイメージがある中で、ボイスメモで録ったアコギとボーカルの音源で始まって、そこから「こんな感じで仕上がってますよ」と共有しながら進めていきました。
川上 デモはうちのスタジオで録ったんだよね?
リアド そう。洋平のスタジオで作業してるときに、突発的に歌い出して、そのときに録ったデータが最初のデモになった。
磯部 リアドがその弾き語りのデモをアコギと歌のデータに分けてくれて、それを俺がパソコンに取り込み、みんなでアイデアを出し合って音を加えていきました。最初に洋平が弾いたギターの雰囲気もよかったんですよ。
川上 そうそう。シャカシャカした音なんだけど、なんとも言えない味を出してる瞬間があって。でもギター、ベース、ドラムを重ねていく中で、最初のニュアンスが抜けてくるんですよね。なので「WITH ALL DUE RESPECT」と同じように、デモのギターの音も採用しています。
──なるほど。白井さんのギターのギラッとしたギターも印象的で。
白井 洋平から「こういう感じでやってほしい」という共有もあったんだけど、あえてそれは聞かず、デモを踏まえて「自分だったらこうする」という感じで弾いてみたんですよ。案の定「イメージが違う」という意見もあったけど、お互いのやりたいことを混ぜつつ完成したのが今の形です。ギラッとした音はたぶん、12弦ギターだと思います。プリプロのときに「12弦が合いそうだな」と思ったので、貸してもらいました。ちなみにレコーディングで12弦ギターを使ったのは今回が初めてでした。
──1980年代のUKネオアコの雰囲気もありますね。ジョニー・マーが弾く12弦ギターのような。
白井 自分にはそこの引き出しがないんですけど、昔ギターの師匠に「名曲には12弦ギターが入ってるから、白井も弾けよ」って言われたことがあって。この曲をアレンジしているときに、そのことを思い出したんですよね。師匠はもう亡くなったんですけど、天国で喜んでくれていると思います。
──「Coffee Float(feat.hard life)」には、UKのバンドhard lifeをフィーチャーしています。
川上 曲を作り始めたときから、マレー(hard lifeのマレー・マトレーヴァーズ)が歌ってくれたらいいなと思っていて。まず自分1人で歌ってるバージョンを出して、あとからマレーが「お邪魔します」って入ってくるバージョンがあったら面白いかなと。
──「お邪魔します」という日本語で始まるマレーのパートはユニークだなと思いました。そして「VANILLA SKY2(feat. WurtS)」は、シングルの「VANILLA SKY(feat. WurtS)」とはアレンジが変わっていて。
川上 ボーカルの素材はそのまま使ってるんですけどね。僕もWurtSも録り直しをしていないので。
磯部 ただ、ベースはライブバージョンになっています。ライブでやっているとどんどんアップデートされるので。
作りたかったのは1stアルバムと同じくらいの衝動を持つ作品
──アルバムの完全生産限定盤には、リアレンジアルバム「CHANGED MY MIND」も付いてきます。「Kill Me If You Can(:D)」「Dracula La(:D)」「todayyyyy(:D)」など9曲のリアレンジバージョンが収録されていますが、ライブの中でアップデートされたアレンジを音源にした感じですか?
川上 いや、ライブで変化してきたものをさらにリアレンジしたという感じですね。
磯部 それが「曲が育っていく」ということなのかなと。
リアド 俺にとってはこっちのほうがスタンダードなんですけどね(笑)。
──リアドさんが加入する前の曲に関しては当然、ドラムのプレイがかなり違いますからね。
リアド はい。今回のリアレンジバージョンは、原曲とライブバージョンとの差が大きい曲をチョイスしたところもあります。レコーディングもすごく楽しかったです。
川上 アレンジに関しては、ずっとアップデートし続けていて。例えば「Kill Me If You Can」は2012年リリースの曲ですけど、十数年の間にいくつものバージョンができて。ライブアレンジは「こんなふうにやろう」みたいなことを意識しなくても、自然にできていくんですけどね。
白井 録った音源を聴き直して「こうすればよかったかな」と思うことがあると、ライブでそれをやったりするんです。その感じを生かしながら録れたのはうれしい限り。意識していたのは、オリジナルの熱量に負けない演奏をすること。もちろんいい音、いいセッティングで演奏するんだけど、落ち着いてしまったらダメだなと。
──原曲に負けないエネルギーを注ぎ込もう、と。
白井 これも初期衝動の話になるんですけど、オリジナルバージョンが持つエネルギーってやっぱりすごいんですよ。どんなに演奏が下手であろうが音が悪かろうが、パワーは絶対にある。それをさらに上回るような熱量を込めたいと思っていたし、「まだまだ足りない」と自分に言い聞かせながら、何回も録り直しました。
──アルバム自体もそうですが、やはりポイントは初期衝動なんですね。
白井 そうですね。キャリアを重ねると技術は高まっていくんですけど、うまいだけになるのは嫌で。「若いからやれた」ということも多分にあるんだけど、過去の自分と勝負するみたいな感覚もありますね。
川上 うん。1stアルバムって、アマチュアの頃から作ってきたいろんな曲を持ち寄って作るじゃないですか。実は構想にもすごく時間をかけているし、いいものになるに決まっているというか。ずるいんですよ、1stアルバムって。
磯部 (笑)。
川上 実は「もう1回、1stアルバムのような衝動と構想を持つ作品を作りたい」という思いがずっとあって。それをやり切れたのが今回のアルバムなのかなと思ってます。
──素晴らしいですね。5月からはアルバム「PROVOKE」を引っさげたライブハウス、ホールツアーがスタートしますし、11月1日、2日には2度目となる主催野外フェス「THIS FES '25 in Sagamihara」が開催されます。
川上 制作の中で溜め込んだクリエイティビティをライブの場でようやく放出できると思うと、ゾクゾクしますね。絶対に楽しい空間になると思うので、楽しみにしててほしいです。フェスもめちゃくちゃ楽しみです。
磯部 相模原でのフェスは2年目なので、前回よりアップデートしたものをお届けしたいです。できるだけ続けて、相模原にフェスが根付いたらいいなと思っているので。
公演情報
[Alexandros] PROVOKE JAPAN TOUR 2025
- 2025年5月2日(金)宮城県 SENDAI GIGS
- 2025年5月3日(土・祝)宮城県 SENDAI GIGS
- 2025年5月16日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年5月17日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年5月23日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年5月24日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年5月30日(金)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年5月31日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年6月6日(金)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年6月7日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年6月13日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年6月14日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年6月21日(土)石川県 金沢歌劇座
- 2025年6月22日(日)新潟県 新潟県民会館
- 2025年6月28日(土)岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
- 2025年6月29日(日)愛媛県 松山市民会館
- 2025年7月5日(土)福島県 けんしん郡山文化センター
- 2025年7月6日(日)山形県 シェルターなんようホール
- 2025年7月12日(土)三重県 四日市市文化会館
- 2025年7月13日(日)奈良県 なら100年会館
- 2025年7月15日(火)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2025年7月18日(金)広島県 上野学園ホール
- 2025年7月20日(日)熊本県 熊本城ホール
- 2025年7月26日(土)沖縄県 那覇文化芸術劇場なはーと
[Alexandros] presents THIS FES '25 in Sagamihara
- 2025年11月1日(土)神奈川県 相模原ギオンフィールドおよびその周辺
- 2025年11月2日(日)神奈川県 相模原ギオンフィールドおよびその周辺
プロフィール
[Alexandros](アレキサンドロス)
川上洋平(Vo, G)、磯部寛之(B, Cho)、白井眞輝(G)、リアド偉武(Dr)からなるロックバンド。2007年に本格始動し、2010年インディーズレーベルRX-RECORDSから1stアルバム「Where's My Potato?」をリリース。2015年3月にシングル「ワタリドリ / Dracula La」でメジャーデビューした。2024年10月に神奈川・相模原で主催野外フェス「[Alexandros] presents THIS FES」を初開催。2025年4月に9thアルバム「PROVOKE」をリリースし、5月より「[Alexandros] PROVOKE JAPAN TOUR 2025」で全国を回る。11月には2度目の主催野外フェス「[Alexandros] presents THIS FES '25 in Sagamihara」を開催する。