[Alexandros]インタビュー|信頼と衝動で作り上げた最高傑作

[Alexandros]が9枚目のアルバム「PROVOKE」を4月23日にリリースした。

「But wait. Cats?」から3年ぶりのアルバムとなる本作は、挑発を意味する「PROVOKE」と名付けられ、[Alexandros]らしいそのタイトルを裏切ることなく、聴く者の心をかき立てる15曲が収められている。

「But wait. Cats?」を発表してすぐに本作の構成を考え、そこに当てはまる楽曲を制作してきたという[Alexandros]。その中にはドラマ「プライベートバンカー」の主題歌「金字塔」やアニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」第1クールオープニング主題歌「超える」といったタイアップ曲も多数含まれているが、アルバムの前半でひと際輝くロックチューン「WITH ALL DUE RESPECT」をはじめとする新曲も並々ならぬエネルギーが宿った傑作ばかりだ。

音楽ナタリーでは「PROVOKE」の魅力を紐解くべく、4人にインタビュー。彼らが“衝動”を大事にしながら、こだわりぬいて制作した本作についてじっくりと話を聞いた。

取材・文 / 森朋之撮影 / 須田卓馬

自他ともに認める“いいアルバム”

──約3年ぶりのフルアルバム「PROVOKE」がついに完成しました。締め切りギリギリまで制作が続いていたそうですね。

磯部寛之(B, Cho) マスタリング作業を直前までやっていましたからね。最後の最後まで「ここをもうちょっとやりたい」という感じで。ジャケットのアートワークが完成したのもけっこうギリギリでしたけど、リリースには間に合ったのでOKです(笑)。

川上洋平(Vo, G) そうね(笑)。ジャケットはアーティスト写真を加工したデザインにしたくて。作品が気に入ったウクライナのアーティストの方に依頼したんです。DMを送ったものの、なかなか連絡が取れなくてヒヤヒヤしたんですけど、ギリギリのタイミングで「ぜひやりたい」と連絡が来て、すごくカッコよく仕上げてくれました。

[Alexandros]「PROVOKE」通常盤ジャケット

[Alexandros]「PROVOKE」通常盤ジャケット

──カッコいいジャケですよね。もちろんアルバム自体も最高でした。今の[Alexandros]の創造性が思い切り発揮されているし、すさまじいエネルギーにあふれた作品だなと。

川上 うれしいです。僕もこれまでで一番いいアルバムになったと思っています。今回は絶対にカッコいい曲を作ってカッコいいアルバムにするというのが目標だったんですけど、ちゃんと達成できたと思ってます。独りよがりの感想ではなく、客観的に「いいアルバムだ」と言えるところまで到達しました。

磯部 まったく同じ感想ですね。前作の「But wait. Cats?」を発表してから3年かけてじっくり制作に取り組むことができました。洋平が言った通りバンドとして「自他ともに認めるいい曲を作る」という目標があったので、客観的な視点も持ちながら制作を進めていって。個々に刺激を受けて成長した部分も反映できたので、やっぱり時間というのは、この作品を完成させるうえで重要でした。

──なるほど。リアドさんにとっては、バンドに正式加入してから2作目のアルバムになりますね。

リアド偉武(Dr) はい。もちろん「めちゃくちゃいいものができた」と思っているし、9作目にして、これだけいい曲がそろったアルバムが作れるのはすごいなと。この3年間でやってきたことがしっかり込められているし、とにかく自信作です。

──白井さんはどうですか? 制作に時間をかけたことで、ギタリストとしても幅広いアプローチができたアルバムだと思うのですが。

白井眞輝(G) 確かにアルバム全体を通してギターの出番が多い感じはしますね。みんなが話してるように時間をかけて作ったアルバムではあるんですけど、制作が進むにつれて無我夢中で、とにかくすごいエネルギーを持って臨んでいたから完成まであっという間で。「すごくいいアルバムができた」と感じたのはマスタリングのときなんですよ。前日までバタバタと作業をして、マスタリングした曲を並べて聴いたときに「すごいアルバムだな」と驚いたというか。

白井眞輝(G)

白井眞輝(G)

構成から始まったアルバム制作

──3年の制作期間の中で、アルバムの全体像が見えたのはいつ頃なんですか?

川上 「But wait. Cats?」の制作の終わり頃には、次に作りたいアルバムの構成がなんとなくあって。「But wait. Cats?」は11曲だったんですけど、もう少し長編にしたくて、とにかくたくさん曲を作りました。それを少しずつメンバーとシェアしながら、「1曲目はこういう感じ、2曲目はこういう曲」という全体の流れをまず考えていったんです。その時点で「15曲くらいかな」って言ってて。

磯部 うん。

川上 そこから「イントロダクションが欲しいよね」とか「こういう曲があったほうがいい」とちょっとずつ固めて、作品を額縁から作っていったというか。1つの枠に3、4曲くらい候補があって、そこから選んでアルバムの曲がそろいました。

──選りすぐりの精鋭が集まった、と。

川上 そうですね。もちろんいきなり想定外の曲ができたりもするんですけどね。

川上洋平(Vo, G)

川上洋平(Vo, G)

磯部 そういうのはアルバム制作の最終段階で起きるんですよ。そして、駆け込みタイミングでできた曲には衝動がある。今回はそういうものと同時に、3年間の中で得たものもちゃん入っていて。

川上 そうそう。予定外のことや多少のブレは全然いいんだけど、しっかり統一感を持ったうえでそれをやりたかった。今までは行き当たりばったりで作っていたところもあったから、その点ではかなり違いますね。

──アルバムの完成形を共有しながら制作していた、と。

川上 ただ、すべてをみんなにシェアしていたわけではないんですよ。それをやると完成形をただなぞるだけになるかもしれないし、僕もすべてを説明できるわけではなくて。はっきりしない部分に関しては「自分を信じてほしい」とみんなに伝えて、僕自身も「大丈夫、最終的には絶対によくなるから」と強く思いながら進めていました。例えば「PROVOKE」という曲は最後の最後までどういう曲になるかわからないまま制作を進めていたし、「FABLIC YOUTH」は3人にアレンジをやってもらった曲。お互いに信じて任せ合うというか、そこはかなりインタラクティブに進めていました。