[Alexandros]インタビュー|ロックバンドの衝動を注ぎ込んだ4年ぶりのオリジナルアルバム「But wait. Cats?」を紐解く (2/2)

“洋平・口ずさみ集”が2000個くらいある

──そして4曲目の「どーでもいいから」は、「どーでもいいから 泣いてないで 笑ってごまかしてごらん」というユーモアあふれる歌詞が印象的なナンバーです。

川上 車を運転してるときに、ふと口ずさんだフレーズなんです。そういう“洋平・口ずさみ集”が2000個くらいあって(笑)。

リアド ははは。

川上 その瞬間に「これはバンドでやったら面白そうだな」と。そういうのって、すぐわかるんですよ。

川上洋平(Vo, G)

川上洋平(Vo, G)

リアド 「面白くなりそうだな」と思いましたね。確かにちょっとユニークなサウンドですけど、普段から洋平が聴いてるプレイリストも共有しているし、「なるほど、こういうのも楽しいよね」という感じで。けっこうすぐに形になったんじゃないかな。

川上 うん。歌詞もその場で作ったんですよ。今回のアルバムは、そういうことが多かったんですよね。特にサビのフレーズはすぐ書いたほうがいいと思っていて。その日と次の日では熱量が全然違うので。「どーでもいいから」は自分の中ではパンクなんですけどね。“どうでもいい”って“Never mind”なので(笑)。

根岸孝旨さんといつか一緒にやってみたかった

──そして「we are still kids & stray cats」はエレクトロテイストの楽曲です。このサウンドはバンドの枠を超えているような……。

磯部 そう聞こえると思うんですけど、この曲も実際に演奏しながら作ったんですよ。しかもリハーサルスタジオじゃなくて、レコーディングスタジオで。

川上 アルバム制作の最後に作った曲なんですよね。「最後に何やる?」って話して、もともとあったメロディと四つ打ちを組み合わせて。

リアド そう、この曲もパソコンは使ってないんです。洋平が「こんなメロディがあるんだけど」って聴かせてくれて、キックは4つ、ハイハットは16ビート……みたいな感じで。電子ドラムと生のシンバルを混ぜたり、いろいろ試しながら1日で形になりました。

川上 で、次の日に録って。

白井 めちゃくちゃ早かったよね。

リアド そんなやり方は初めてでしたね。

磯部 だろうね(笑)。新しいこともけっこうやってますね。冒頭にシンセベースを入れたり。サビではシンベと生のベースをユニゾンさせてるんですよ。

リアド 「こういう曲だったらアナログシンセが合いそうだな」と思ってスタジオに持っていったら、それを洋平が弾いて。

川上 けっこう遊びました(笑)。

──まさに“we are still kids”ですね(笑)。「クラッシュ」はアルバムの中でもっともアグレッシブな楽曲になっています。これはギターが際立ってますね。

白井 ありがとうございます。やってることはわりと王道なんですけどね。リフがあって、サビはさらに広がるようなコードワークになっていて。エフェクターはちょっと変わってるかも。ジャック・ホワイトが監修したエフェクターを使ったんですけど。

白井眞輝(G)

白井眞輝(G)

川上 何もツマミが付いてないやつね。つないで押すだけ(笑)。

白井 そうすると、「クラッシュ」のギターの音になります(笑)。この曲の制作あたりから、ギターの音色をいじることが増えてきたんですよね。

川上 破壊力がある音だよね。「クラッシュ」に関しては、アレンジに根岸孝旨さんに参加してもらって。日本のアーティストで「いいな」と思う曲のクレジットを見ると、根岸さんがプロデュースしてることがすごく多くて、いつか一緒にやってみたかったんです。このタイミングで実現したんですけど、スタジオに来てくれて、その場でアイデアを出してくれて。バンドの一員みたいな感じでやってくれたのがありがたかったし、楽しかったですね。一緒にアレンジしたことで、わかったことや勉強になったこともかなりあって。

──外部のプロデューサーと組むことのメリットもある、と。

川上 前作で初めて海外のプロデューサーと一緒にやったんですけど、そのときの経験で「ここを把握しておけば、あとは自分たち以外の人に任せても大丈夫」というバランスがわかってきて。納得できないことがあるのは絶対に嫌なので。

磯部 根岸さんはベーシストなので、個人的にもいろいろと刺激を受けました。フレージングや音の選び方もそうだし、いろんなアイデアを吸収しましたね。あと、この曲は根岸さんのベースを借りて弾いたんですよ。スティングレイなんですけど、バンド人生で初めて使いましたね。

磯部寛之(B, Cho)

磯部寛之(B, Cho)

──そしてアルバムの最後を飾る「awkward」はとにかくグッドメロディだし、4人の息遣いが感じられるバンドサウンドも素晴らしくて。これはすごい名曲だと思います。

リアド 俺もそう思います。

川上 ありがとうございます(笑)。「awkward」はGabe Waxというアメリカのプロデューサーに参加してもらったんです。うまくタイミングがあって、日本に来てくれて。まだ20代で、普段は「イエイ!」というノリなんですけど、制作はかなりストイックでした。「自分のやり方が君たちに合ってるかわからないけど、とにかく弾かせるから。それでもいい?」と言われて。「もちろん。やろう!」という感じで始めて、実際、めっちゃ演奏したんですよ。何度も演奏してるうちに、「このフレーズはいらないね」「俺もそう思った」みたいなことが増えてきて。周波数が合ってくるというか、グルーヴが高まってきたんですよね。ボーカルは最後に録ったんですけど、できあがった曲を聴くと、あのときのスタジオの匂いを思い出します。

1回答えを出したことに関しても、違うと思えば簡単にぶっ壊す

──どの楽曲も制作中のエピソードが鮮明ですよね。その瞬間の衝動が詰まっているというか。

川上 そうだと思います。初期衝動って、自分で何度でも作れると思うんですよ。頭で考える前に思いつく音もあるし、パッと出てくる音も実際にあって。さっきも言いましたけど、理論や理屈で構築するんじゃなくて、「まずはやってみよう」と思えるかどうか。今回はそれを実現できたんだと思いますね。

磯部 うん。

川上 これだけバンドの経験を重ねて、この年齢になっても、衝動ってあるんだなと実感しました。あと、ほかのバンドやアーティストがカッコいいことをやってると、めちゃくちゃ悔しいんですよ。ムカついたり、衝撃を受けたり、カッコいいと感じたり、そういうシンプルな感情を音に変換するのも得意だし、それをやりたいんですよね。私生活では「もう大人だし、ムキにならなくても」でいいけど、音楽で感情を押さえつけるのは違うかなと。

磯部 洋平は常に新しいものも求めているし、1回答えを出したことに関しても、違うと思えば簡単にぶっ壊す人なんですよ。たまに「この人、大丈夫?」って思うこともあって。

川上 ははははは!

磯部 周りが「やり切った」と思っていても、その先に行こうとするというか。作曲者であり、アイデアマンでもある洋平の力はもちろん大きいけど、そもそも洋平の曲を演奏したくてこのバンドにいるわけだから、それを「超えたい」とか、「負けたくない」という気持ちもあるんですよ。

白井 新鮮さや刺激は自分で見つけるものだし、出していくものだと思うんですよ。もちろん曲がないと始まらないんだけど、それを受け取って反応するだけでは自分のテンションが上がらないし、全員のアイデアをぶつけ合えばいいのかなと。従来の方法で挑んでもいいし、まったく違うアプローチでもいいんですよ。やりたいことをぶつけることで、その都度、初期衝動が生まれると思うので。

リアド ドラマーとして幅が広がるのも楽しいですね。以前はパソコンで曲を構築したり、リズムを作ったりすることに興味があったんですけど、[Alexandros]に加入してからは、「ドラマーとしてやれることはまだまだある」と気付かされて。

リアド偉武(Dr)

リアド偉武(Dr)

川上 スタジオで音を出していると、お互いに発見があるし、そこで新しいものが生まれるんですよね。すでにやれること、過去にやったことをもう1回やってもつまらないから。だから常に新しさを求めちゃうし、「これ、聴いたことあるな」と思ったら、「もっと面白いことあるんじゃない?」ってすぐ違うことをやりたがるんですよ(笑)。バンドにもそうだし、自分に対してもそうだし。

──アルバムを携えたツアーでも、その瞬間、その場所でしか生まれない音楽を体感できそうですね。

川上 とにかく楽しみですね。セッションをもとにして作ってるので、「ライブではこうなるだろうな」という想像もしやすくて。新曲を人前でやるのは一番楽しいことだし、ライブを重ねる中でいい変化も出てくると思うんですよね。

磯部 うん、間違いない。今回もクリックを使わずにレコーディングした曲が多いから、ライブでの自由度も高いので。

白井 この2年間はライブが難しい時期もあったし、規制も多かったけど、それも少しずつ終わりつつあるのかなと思っていて。全国の皆さんに会いに行く頃には、もうちょっと自由になれるような気がしてます。

リアド 自分にとっては1stアルバムみたいな気持ちなんですよね。初めて行く場所もあるし、本数も多いので、すごくワクワクしてます。状況次第ですけど、海外にもどんどん出ていきたいと思ってます。

[Alexandros]

[Alexandros]

ツアー情報

But wait. Tour? 2022

  • 2022年7月16日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2022年7月18日(月・祝)北海道 北斗市総合文化センター・かなで~る
  • 2022年7月22日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2022年7月24日(日)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
  • 2022年7月30日(土)岡山県 倉敷市民会館
  • 2022年8月8日(月)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2022年8月10日(水)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2022年8月12日(金)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2022年8月14日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2022年8月19日(金)石川県 本多の森ホール
  • 2022年8月21日(日)新潟県 新潟テルサ
  • 2022年8月30日(火)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
  • 2022年8月31日(水)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
  • 2022年9月7日(水)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2022年9月9日(金)福岡県 福岡市民会館
  • 2022年9月11日(日)愛媛県 松山市総合コミュニティセンター
  • 2022年9月17日(土)沖縄県 那覇文化芸術劇場 なはーと

But wait. Arena? 2022 supported by Panasonic

  • 2022年10月15日(土)愛知県 ポートメッセなごや 新第1展示館
  • 2022年10月16日(日)愛知県 ポートメッセなごや 新第1展示館
  • 2022年11月16日(水)大阪府 大阪城ホール
  • 2022年11月17日(木)大阪府 大阪城ホール
  • 2022年12月7日(水)東京都 国立代々木競技場第一体育館
  • 2022年12月8日(木)東京都 国立代々木競技場第一体育館

プロフィール

[Alexandros](アレキサンドロス)

2007年に本格始動し、2010年インディーズレーベルRX-RECORDSから1stアルバム「Where‘s My Potato?」をリリース。2015年3月にシングル「ワタリドリ / Dracula La」でメジャーデビューし、6月にはアルバム「ALXD」を発表した。2016年には6枚目のフルアルバム「EXIST!」をリリースし、オリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得。2018年8月に千葉・ZOZOマリンスタジアムにてワンマンライブ「VIP PARTY 2018」を開催し、3万5000人を動員した。2021年5月に映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の主題歌「閃光」をシングルリリース。2022年4月よりテレビアニメ「アオアシ」のオープニングテーマソングに「無心拍数」が使用される。7月に、テレビ朝系木曜ドラマ「六本木クラス」の主題歌「Baby's Alright」、映画「バイオレンスアクション」の主題歌「クラッシュ」などの新曲を収録したニューアルバム「But wait. Cats?」をリリース。7月から12月にかけて全23公演の全国ツアー「But wait. Tour? 2022」「But wait. Arena? 2022 supported by Panasonic」を行う。