[Alexandros]インタビュー|ロックバンドの衝動を注ぎ込んだ4年ぶりのオリジナルアルバム「But wait. Cats?」を紐解く

[Alexandros]がニューアルバム「But wait. Cats?」を7月13日にリリースした。

前作「Sleepless in Brooklyn」から4年ぶりのフルアルバムとなる本作には、「閃光」「Rock The World」「無心拍数」といった既存曲のほか、テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」の主題歌「Baby's Alright」や映画「バイオレンスアクション」の主題歌「クラッシュ」といった新曲、家入レオに提供した「空と青」のセルフカバーなど全11曲を収録。 “原点回帰”と“進化”を兼ね備えた充実作に仕上がっている。

音楽ナタリーではアルバムの発売を記念して、[Alexandros]の4人にインタビュー。バンドにとって新たな起点となる本作について語ってもらった。

取材・文 / 森朋之撮影 / NORBERTO RUBEN

ゼロからバンドを作るような感覚があった

──4年ぶりとなるオリジナルアルバム「But wait. Cats?」が完成しました。4人のクリエイティビティが自由に発揮された作品だと思いますが、手応えはどうですか?

川上洋平(Vo, G) とにかくいいアルバムになったし、やりたいことをやれましたね。タイアップがあってもなくても、自分たちがいいと感じること、本当にやりたいことだけをやり切ったというか。聴いていても気持ちいいし、もしかしたら今までで一番制作が楽しかったかも。

磯部寛之(B, Cho) 俺もそう思う。

川上 リアドが正式に加入してから、4人のグルーヴを合わせたり、お互いの呼吸をつかむために、とにかくスタジオに入ってたんですよ。リハーサルみたいな感じで自然に曲作りをやれたし、再構築というか、ゼロからバンドを作るような感覚があって。“バック・トゥ・ザ・ベーシック”という感じもありますね。

磯部 コロナの影響でスタジオに入れない時期を経て、「閃光」の制作から4人でひさびさにスタジオに入って。4人で音を鳴らすのが純粋に楽しかったし、そこから始まったアルバムなんですよね。すごく肉体的な作品だと思います。今、洋平がバック・トゥ・ザ・ベーシックって言ってたけど、確かに作り方としては1stアルバム「Where's My Potato?」、2ndアルバム「I Wanna Go To Hawaii.」あたりに近いかもしれないですね。自分たちもアップデートしているし、これまでに培ってきた経験も生かされているので、昔のままではないんだけど。

白井眞輝(G) うん。今2人が言ったように、今回の制作はまず4人で「せーの」で演奏することを大事にしていて。前作までは下から構築していくように作ることが多かったから、そこは大きな違いですね。

白井眞輝(G)

白井眞輝(G)

川上 しかも早かったよね。

白井 そう、「いいね」とか「ここをこうしよう」とか、全員のジャッジがすごく早かった。早いというのは、物を作るうえですごく大事だと思うんです。頭の回転が活性化されるし、いろんなアイデアが出てくるので。コロナ禍でスタジオに入れなかった時期もバンドや音楽についていろいろ考えたし、4人で話し合う時間もすごくあって。この数年間を有意義に使えましたね。

リアド偉武(Dr) アルバムの制作はめちゃくちゃ楽しかったですね。4人で向き合ってゼロから曲を作る過程もそうだし、録ってる最中もアレンジがめまぐるしく変わっていくんですよ。決まったことに固執せず、いいアイデアが出たらどんどん取り入れて。ドラムについてもメンバーそれぞれが意見を言ってくれて、それに反応することで新しい表現につながって。アルバムができて、「こんなにいいものが作れたんだな」と実感しましたね。

──ドラマーが変わると当然、サウンドに大きな変化が生まれますよね。

川上 もちろん。前の人(庄村聡泰)がインパクトありすぎたから(笑)、プレッシャーがあったかもしれないけど、彼と同じことをやってほしいなんて思ってなかったし、楽しみのほうが遥かに大きかったですね。新しい雰囲気の曲もやれるだろうなと思っていたし、実際そうだったので。ただ、容赦はしなかったですよ。できないことがあったとしても、できるまでやってもらうしかないので。一緒にバンドをやって、いい曲を作ろうとしているわけだから意見がぶつかることもあるだろうし。それも含めてずっとワクワクしてました。

リアド それは僕も同じですね。

リアド偉武(Dr)

リアド偉武(Dr)

──正式加入した時点でワクワクするような感覚になっていたんですか?

リアド うん、間違いなく。加入したのはちょうど1年前なんですけど、当時のインタビューを読むと、「このバンドに入って驚いたことは?」という質問に「あまりクリックを聴かないこと」と言っていて。自分にとってはそれがすごく面白かったんです。実際に音を出すことで曲が変動して、その場の感覚で正解を求めるというか。

川上 今回のアルバムの中で、パソコンを使って構築したのは「日々、織々」だけですからね。あとは全部、バンドで音を出しながら作ってます。

磯部 スタジオで音を出しながら、iPhoneのボイスメモに録音していたんですよ。とにかく弾いて、アイデアを出し合って、みんなでディスカッションして。俺のパソコンもほとんど出番がなかったです(笑)。

川上 録ったものをパソコンに取り込んで、それをきれいに整理して……という時間が嫌だったんです。きれいな音で確認するよりも、ボイスメモの音を聴いたほうが早いし、想像力が膨らむんですよ。

磯部 実際は弾いてないフレーズが聞こえてきたりね(笑)。

川上 そうそう(笑)。間違えて弾いたフレーズを使うこともあるし、頭で考える前に、瞬発的にアイデアが出てくるというか。計算で作ってない感じはかなりありましたね。

──まさに「考えるな、感じろ」ですね。

川上 それが自分たちの一番の強みだと思ってるんですよ。その強みをここまでしっかり出せたのは、もしかしたら初めてかもしれないですね。

直感でやれるからバンドが好き

──では、アルバムの新曲について聞かせてください。1曲目はインスト曲「Aleatoric」です。

川上 「Aleatoric」は偶発性という意味なんですけど、まさにそれを求めて、現場のセッションで作った曲なんですよ。サックスは最後に入れてもらったんですけど、全体の構成やフレーズは全部スタジオの中で生み出したので。リフを思いついて、「これは絶対バンドでやったらカッコいいはずだ」と思ったのが始まりですね。自分からは「ここからドラムが入って、こんな感じになって……」と超おおまかなイメージだけを伝えたんですけど、みんながバシッ!バシッ!と反応してくれて。ヒロ(磯部)が間違って弾いたフレーズがめっちゃよかったり、まーくん(白井)のエフェクティブな音色もすごくよくて、「もうこれで完成じゃん!」って。瞬発的なアドリブというか、リフに対するみんなの返しが完璧だったんですよ。

川上洋平(Vo, G)

川上洋平(Vo, G)

磯部 そうだね。

川上 例えばお笑いのアドリブってその場限りだけど、音楽は何度もその熱量を生み出せるし、何回聴いてもカッコいいんですよ。「今はこういう音が流行ってるから」とか「日本のリスナーはこのコード進行が好きだよね」という理論や分析とは違うというのかな。そういうやり方があってもいいけど、ロックバンドは違うマインドで作るべきだと思ってるんです。だって「Aleatoric」みたいな曲は理論では作れないですから。それがバンドである理由だし、何よりも楽しくて気持ちいいんですよ。感覚、直感でやれるからバンドが好きなので。

──「Aleatoric」がアルバムの起点になってるところもある?

川上 そうですね。すぐやりたくて、すでに去年のツアー(「ALEATORIC ARENA 4 DAYS」)のオープニングで演奏して。

磯部 というか、ツアータイトルだからね(笑)。

川上 ネタバレしちゃってたか(笑)。

──2曲目の「Baby's Alright」は生々しいライブ感が伝わる、エッジの効いたロックチューンです。これもセッションで作り上げたんですか?

川上 そうですね。この曲もリフを元にして、Aメロは俺がまくしたてるように歌って。

磯部 まさにボイスメモから生まれた曲ですね。サビのコードも、その場で「どれが一番気持ちいいだろう?」といろんなパターンを試して。

磯部寛之(B, Cho)

磯部寛之(B, Cho)

川上 全員でセッションしましたね。ボーカルも楽器隊に近い感じでした。

──完成した曲を聴くと、サビはメロディアスだし、すごくポップですけどね。

川上 まあ、僕の場合はそういう“血”なので(笑)。ポップスも好きだし、美しいメロディも得意なので。だから[Alexandros]はテレビに出てもOKだし、ライブハウスも似合うんですよ。