愛美が4月7日にキングレコードからソロシングル「ReSTARTING!!」をリリースした。
メディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」発のガールズバンド・Poppin'Partyのギターボーカルとして話題を集めた愛美。ポピパとしては東京・日本武道館などの大規模なステージにも立っている。ソロシングルには表題曲に加えてカップリングの「MAYDAY」「ラブレター」という、愛美が作詞を手がけた3曲が収録されている。
音楽ナタリーでは愛美にインタビューを行い、ポピパなどでの歌手活動を経てソロ活動を再スタートする心境や「ReSTARTING!!」に込めた思い、作詞活動について聞いた。
取材 / 臼杵成晃 文 / 酒匂里奈 撮影 / 伊藤元気
歌が好きだという気持ちはずっとあった
──アーティストデビュータイミングでのインタビューだと初々しさが感じられることが多いのですが、愛美さんは声優として、そしてボーカリストとして相当の場数を踏んできた方なので少し違う感覚なのかなと思っていて。
確かにそうかもしれませんね。「ReSTARTING!!」というタイトル通り、再スタートという感じなので。
──メディアミックスプロジェクト「BanG Dream!」発のガールズバンド・Poppin'Partyのギターボーカルとして日本武道館や幕張メッセなどに立たれていたり、すでに大規模なステージでのライブを経験されている愛美さんが、どんな思いでキングレコードからアーティスト活動をスタートさせたのかを聞いていけたらと。声優としてのキャリアがしっかりある状態で再スタートするというのはどんな感覚ですか?
いつかまたソロで歌いたいと思っていたので純粋にうれしいです! ただ、歌が好きだという気持ちはもちろんずっとあったんですけど、同時に歌に対する悩みもあって。でも活動を続ける中で、ファンの方が「愛美さんの歌が聴きたいです」と言ってくださる機会がすごく増えたんです。そう言ってくださるのは本当にうれしかったし、悩みはあるけど、歌が好きな自分の気持ちに正直になってみようと思いました。アーティスト活動が再開できたのは、ファンの皆さんのおかげです。
──キングレコードからニューシングルをリリースすると発表された際に、「この度『アーティスト活動』という、素敵な表現の場をいただきました」「声優活動だけでなく、音楽活動でもたくさん恩返しをしていきたいです!」とコメントしていたのが印象的で(参照:愛美、来春にキングレコードよりシングルリリース)、フレッシュな決意が感じられました。
今まで経験させていただいたことのすべてをアーティスト活動に生かしたいと思っていて。右も左もわからない中でこの業界に入って、たくさんのチャンスや表現の場をいただきました。私は「いただいた期待にちゃんと応えられているのだろうか?」と常日頃考えていて。今回アーティストとして活動させていただくにあたって、それを改めて考えたときに、まだ全然返せていないと思ったんです。なので今まで与えていただいたものを全部音楽に還元して、表現して、今まで見てくれていた方にも、これから愛美に初めて出会う方にも感謝の気持ちを伝えたい。私は本当に今までいろんな人に支えられてきたからこそ、今ここに存在しているので。歌を通してなら一番感謝を伝えられるんじゃないかなと思いました。
──そういう気持ちがあったということは、ソロ活動の中でやりたいことも明確にあったということでしょうか。
やりたいことや伝えたいことはたくさんあります。年々表現したいことや伝えたいことが浮かんでくるようになってきていて、今回はそれを作詞という形にしました。
ギターは人生において欠かせないもの
──ソロでアーティスト活動を始めるにあたって、ポピパなどで培ってきたギターは、やはり大きな武器ですよね。アーティスト写真でもギターを持っています。
ギターがめちゃめちゃうまいわけじゃないんですけど、私の人生においてギターは欠かせないものだと思っていて。愛美の転機となるポイントには常にギターが存在しているんです。家族がバンド活動をやっているバンド一家ということもあって、高校生のときに私もバンドを始めて。ギターを弾いていたことがきっかけで、「アイドルマスター ミリオンライブ!」(バンダイナムコエンターテインメントが展開するメディアミックス作品)にて、ライブで「ギターを弾かないか?」とご提案いただいて。そして「バンドリ」というコンテンツが生まれて、いろいろなところで活動させていただけるようになって。ギターのおかげで大きなステージにも立てたんだと思っています。ギターに救われてここまでやってきたので、アーティスト活動するにあたって、ギターは絶対に持ちたかったです。
──ちなみに愛美さんにとってのギターヒーローは誰ですか?
BUMP OF CHICKENの藤原基央(Vo, G)さんです。ギターボーカルにかなり憧れがあって、藤原さんのようにカッコいいギターを鳴らしながらカッコいい歌を歌えるようになりたいと憧れていました。
──それはずっと変わらず?
ずっと変わらないですね。
──それを聞いてこのシングルの曲や詞の内容が腑に落ちました。「バンドリ」などのイメージを踏まえてこのシングルを聴いて最初に感じたのは、少しディープで根の深い感じというか……端的に言うと根の暗い人の音楽だなと。
ははは(笑)。
──歌声も地の声に近いというか、愛美さんが素の状態で話している感じに近い声質で歌われている印象があります。
キャラクターソングはキャラクターが歌っていて愛美ではないので、歌声だけでなく、意識も明確に違います。
自分をさらけ出してなんぼ
──ではここからデビュー作「ReSTARTING!!」について聞かせてください。シングルは表題曲から制作を進めていったのでしょうか?
そうです。改めてシングルをリリースさせていただくので、リスタート感というか、もう一度ここから始める、という思いの込もった疾走感のある楽曲にしたいなと思っていました。あとはギターを弾きたいのでバンドサウンドにしたいですという意志を伝えて、コンペ形式で曲を選ばせていただきました。
──曲についてはある程度の希望を通せた感じだったのでしょうか?
愛美の気持ちはかなり反映されていると思います。たくさん悩んだんですけど、何百曲もあったデモ曲の中からこの曲を選ばさせていただきました。選ぶときは実際にライブを想定して聴いて、お客さんがどういうふうに盛り上がれるかなと想像しながら、一番ライブ映えしそうな曲に決めました。
──愛美さんが歌詞を書くというのは前提としてあったのでしょうか?
最初からは決まっていなくて、「作詞どうしますか?」と聞かれたので、「ぜひやらせてください!」と言って書かせてもらえることになりました。
──その時点で自分の中で書きたいこと、伝えたいことは決まっていたんですか?
はい。「ReSTARTING!!」に関しては先ほどお話ししたように大きなテーマがあったので。
──僕が感じたディープで暗い人という感覚は正しいですか?(笑)
正しいと思います(笑)。でも、だからこそ「ネガティブなんだけど勇気を出して前を向くよ!」というメッセージを伝えたかったです。
──総合的に見ると前向きな歌詞ですけど、冒頭は「『ダメだきっと』はじめからもう」で始まるという。
愛美が作詞するからには愛美らしい歌詞にしたくて、マイナスなワードやネガティブなワードはあえて入れ込みたいという思いがありました。
──とは言っても、世間一般的なイメージで言うと愛美さんはそこまで超ネガティブな人というイメージではないんじゃないかと。
そうですかね?(笑)
──どちらかと言うなら陽気な人という印象がありました。でも歌詞を通すと、根深いところが出てくるんですね。
キャラクターを背負ってお仕事をすることが多いので、キャラクターのイメージを壊しすぎないようにはしています。演じる子が明るいキャラクターだったら番組やイベントでも明るく振舞おうと常に心がけてきたので、そのイメージが強いのかなと思います。
──さらけ出せていない根深さがまだまだあるくらいのネガティブなんですか?
活動当初は「ネガティブやマイナスなものは隠すべき」と思っていました。でも、今は考え方がまったく変わりました。自分をさらけ出してなんぼだなと。芸能人の方はみんなキラキラ輝いていて、ポジティブでハッピーなものをお届けする存在だと思っていたんです。でも活動していく中で、自分をさらけ出すことによって共感してもらえたり、身近に感じてもらえたり、むしろそれが面白いと言ってくださる方も意外とたくさんいるんだなということに気付いて。例えば自分で短所だと思っていた部分も、YouTubeでさらけ出しちゃえばエンタメになるんだって。そういう姿を見て面白いと言ってくださる皆さんがいるからこそ、「ReSTARTING!!」の歌詞も安心して書けました。
──歌詞には暗い印象もありつつ、確実に前を向いているというか、聴く人を応援するような内容でもあって。これは曲を聴いている人を鼓舞しているのか、自分を鼓舞しているのかどちらでしょうか?
自分自身を奮い立たせる曲でもあるし、聴いている人にとっての応援歌になればいいなという思いもあります。
──「臆病な自分と愛鳴らして」の臆病という部分は自分の中にあるものですか?
めちゃめちゃあります! 気にしいなので……。たぶん今日も帰ったら「あのときなんでああ言っちゃったんだろう」「なんでもっといいこと言えなかったんだろう」と家に帰ってから反省するんですよ(笑)。だから「ReSTARTING!!」には「これまでの自分も愛し合って」という歌詞を入れました。作詞活動を通して、今まで生きてきて無駄なことは何もなかった、今までの人生すべてに意味があるんだなと思ったので。後悔した出来事ことすら、反省して今に生かせているし。だからこれまでの自分も愛して、全部を音に変えていきたいと思います。
──ある種やぶれかぶれのような歌詞からは、あまり気にしいな性格は感じませんでした。
今まで人の目を気にして生きすぎてたところもあって、なんかもういいかな、という気持ちはあります(笑)。ここにきてやっと自分らしく生きてみたいという気持ちになっていて。
──もしかしたらソロ活動ではこれまで以上に素の愛美さんが見られるかもしれませんね。
確かに。それもこれも全部受け入れて面白いと言ってくれるファンの方がいるからこそできることですね。
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作詞がめちゃめちゃ楽しい