ナタリー PowerPush - Aimer
声の魅力をアピールしたカバー集「Bitter & Sweet」
ベスト盤的内容の1stアルバム「Sleepless Nights」から約2カ月という早いペースでリリースされるAimerの新作は、洋邦の名曲を新たな解釈で歌うカバーアルバム「Bitter & Sweet」だ。ボーカルとして参加した2011年5月発売のコンセプトアルバム「Your Favorite Things」収録曲に、6曲の新録カバー曲を加えた全16曲を収録。カバー曲を通して、Aimerの歌い手としてのいろいろな表情が見えてくる作品となっている。
「Your Favorite Things」レコーディングのエピソードも振り返りつつ、新録曲への思いと制作過程を語ってもらった。
取材・文 / 田中隆信
「Your Favorite Things」のレコーディングは緊張した
──今回のカバーアルバム「Bitter & Sweet」は、2011年5月にリリースした「Your Favorite Things」の楽曲に新録曲を加えた作品になっていますが、まずは「Your Favorite Things」のことを少し振り返ってもらおうと思います。
はい。「Your Favorite Things」のときはレコーディング自体がほぼ初めてのことだったので、とても緊張していたのを覚えています。1年半ぐらい前のことですけど、自分で聴いても今の声とはちょっと違っているところがあると思うので、そういう声の変化も楽しんでいただきたいですね。
──カバー曲は洋楽も邦楽もありましたが、選曲はどのように?
スタッフのみんなで曲を出し合って、その中から決めていきました。たくさんの候補曲が挙がりましたが、その当時から私が月とか星とかを好きだということを皆さんが知ってくださっていたので、邦楽の曲は絢香さんの「三日月」、エレファントカシマシさんの「今宵の月のように」、中島美嘉さんの「ORION」など、月や星に関連する曲が多くなりました。
──よく知っているヒット曲もアレンジが変わることで聴こえ方も変わりますよね。
はい、アレンジでガラッと原曲の雰囲気と違った感じになった曲もあったので、そういう意味でもすごく新鮮でした。「Poker Face」(LADY GAGA)や「Crazy In Love」(ビヨンセ)の原曲は激しくとがった曲調なんですけど、ピアノによるシンプルなアレンジにしたことでオリジナリティを出せたと思います。それと、アレンジで曲の雰囲気が変わるように、ボーカルのアプローチの仕方でも全然感触の違う曲になりますから、かなり気を遣って歌いました。
プロデューサー玉井健二からの細かいアドバイス
──歌い方に関して、プロデューサーの玉井さんからアドバイスはありましたか?
レコーディングに慣れていなかったので、細かくアドバイスしてもらいました。例えば、「Poker Face」のサビの部分「Can't read my」の「my」を“マイ”ではなく“マ”と発音するLADY GAGAさん独特の響きに寄せていくところも、玉井さんと話をしながら決めていきました。
──中学生の頃からアヴリル・ラヴィーンの曲が好きで歌っていたということなので、洋楽を歌うこともそれほど難しいことではなかったのかなって思ったんですが。
そうですね。自然に歌えたと思います。もともと洋楽と邦楽、どちらかに偏って聴いていたわけではありませんから。聴くときに私が一番重要視しているのは声の響きです。洋楽邦楽問わず、それが自分の好きな声かどうかで判断して聴いてきました。でも、洋楽を歌ってる声と邦楽を歌ってる声は、特にコントロールしているわけではないんですけども微妙に違ってるように思います。
──英語の響きと日本語の響きが違いますから、自然と発声の仕方も変わるのかもしれないですね。
はい、そう思います。
収録曲(オリジナルアーティスト)
- リフレインが叫んでる(松任谷由実)
- L-O-V-E(ナット・キング・コール)
- Poker Face(LADY GAGA)
- 三日月(絢香)
- Viva La Vida(COLDPLAY)
- また君に恋してる(ビリーバンバン)
- 強く儚い者たち(Cocco)
- Calendar Girl(ニール・セダカ)
- 今宵の月のように(エレファントカシマシ)
- Baby Love(THE SUPREMES)
- Crazy In Love(ビヨンセ)
- Precious(伊藤由奈)
- Breaking Up Is Hard To Do(ニール・セダカ)
- I WILL ALWAYS LOVE YOU(ホイットニー・ヒューストン)
- CHANGE THE WORLD(エリック・クラプトン)
- ORION(中島美嘉)
Aimer(えめ)
女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のとき、声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復するとともに独特のハスキーで甘い歌声を得る。2011年から本格的に音楽活動を開始。幅広いジャンルのクリエイターとコラボレーションし、楽曲提供やゲストボーカリストとしての活動を通じてその才能が知られるようになる。2011年5月にはヒット曲をジャズアレンジでカバーしたコンセプトアルバム「Your favorite things」にボーカリストとして参加。収録曲であるLADY GAGA「Poker Face」のカバーは、iTunes Storeのジャズチャートで初登場1位を記録した。2011年9月シングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビュー。今年8月に発売したシングルのタイトル曲「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」はテレビアニメ「夏雪ランデブー」エンディングテーマに起用され、大きな注目を集めた。2012年10月には初のフルアルバム「Sleepless Nights」を発表。12月12日にカバーアルバム「Bitter & Sweet」をリリースする。