a flood of circleが2月21日にセルフタイトルを冠したニューアルバム「a flood of circle」をリリースする。
バンドの現在のモードを凝縮した本作は、新曲のみで構成された全10曲入り。この中でもひと際BPMが速く、起伏の激しい展開を見せる楽曲がリード曲の1つである「ミッドナイト・クローラー」だ。先行配信中のこの曲は、a flood of circleとは10年以上の付き合いがあり、同バンドのファンを公言するUNISON SQUARE GARDENの田淵智也(B)がプロデュースし、AFOC節とユニゾン節が絡み合う、テンションの高いナンバーに仕上がっている。
「僕の好きなa flood of circleを改めて作り直すつもりで好き勝手にやらせてもらった」(参照:BLOG | UNISON SQUARE GARDEN - official web site)と自身のバンドのブログでつづっていた田淵。音楽ナタリーではAFOCの佐々木亮介(Vo, G)と田淵の対談を企画し、「ミッドナイト・クローラー」誕生に至るまでを語ってもらった。
取材・文 / 中野明子 撮影 / 草場雄介
- a flood of circle「a flood of circle」
- 2018年2月21日発売 / テイチクエンタテインメント
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / TECI-1576 -
通常盤 [CD]
3240円 / TECI-1577
- CD収録曲
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- Blood&Bones
- ミッドナイト・クローラー
- Leo
- One Way Blues
- Summer Soda
- 再生
- Lightning
- Where Is My Freedom
- Rising
- Wink Song
- 初回限定盤DVD収録内容
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AFOC x Shelter presents"ROCK'N'ROLL NEW SCHOOL <'17-'18 Count Down Party!!!>"ライブ映像
- GO
- 泥水のメロディー
- Rex Girl
- Sweet Home Battle Field
- AFOC Medley
- Party!!!
- Rock'N'Roll New School
- Wolf Gang La La La
- 博士の異常な愛情
- シーガル
窮地の佐々木亮介を救った「米だ! 米食え!」
──出会った頃のことって覚えてますか?
佐々木亮介(a flood of circle) たぶん2人共、19歳とか20歳とかそれくらい? 最初は渋谷Lushっていうライブハウスでやった「Beat Happening!」ですね。イベントを企画してる水口(浩志)さんっていう人に「UNISON SQUARE GARDENってすげえバンドがいる」って煽られたんです。だから対バンする前から勝手にユニゾンのことは気にしてた。
田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN) 一方で俺は「a flood of circleっていうバンドは、ユニゾンに対してバチバチだ」って周りから聞いて。まあみんな背が高いし、ズーンって感じだったから、「ヤバイ! この人たちにボコボコにされるんじゃないか」ってビビってた。でも、ライブを観たときに「俺、このバンドの曲全部好きかもしれない」みたいなのはすごく感じたんだよね。声の感じとか、歌ってる絵がカッコよくて、ロックバンドをやりたくてやってる人なんだなって思った。それでライブの次の日とかにCDを買いに行った記憶がある。
佐々木 プロデューサーっぽい発言だなあ(笑)。俺はユニゾンには曲から入って。対バンする前から音源を聴いていて、メロディがすごくきれいだけど、テンポが速くて構成が複雑で、ポップな部分と攻めの部分がどっちもあるなと思ってた。そう言えば、斎藤さんと田淵さん、早稲田大学出身ですよね?
田淵 うん。
佐々木 当時、早稲田大学にハンカチ王子(プロ野球選手の斎藤佑樹投手)がいて「早稲田の斎藤はアイツじゃない、俺だ」っていう名言をMCで残したっていう話を水口さんから聞かされて。
田淵 してたしてた(笑)。ネタでね。
佐々木 それ聞いて「ユニゾンとがってんなー」って思ってた。でも、ライブのあとで話しかけてくれたときに、いい感じだったのでうれしくて。俺の中で印象深かったのが、田淵さんのルーツがTHE HIGH-LOWSとthe pillowsだって聞いたときなんですよ。そこで合点がいったんです。どっちのバンドも明るいメジャーキーの曲が多いし、キラキラした部分も持ってるけど、根底の反骨心がすごいじゃないですか。俺もどっちのバンドも好きで、そのスタンスみたいなものを表現してる同世代のバンドがいるんだってすごく衝撃を受けたんですよね。で、実際の田淵さんは話してみたら大人だったし、優しかった。
田淵 怖くはないですよ、俺(笑)。
佐々木 一番覚えてるのが、メジャーデビューする前後くらいですごく金がなかった頃、当時住んでた家の近くのホルモン屋で田淵さんと一緒に飲んだことがあって。そのときにでかいリュック背負ってきたんですよ、田淵さんが。机に置いた瞬間にドーンってすごい音するから「機材とかいっぱい入ってるのかな?」って思ったら、2kg分の米が出てきて。「佐々木、米だ! 米食え! お前ガリガリだぞ!」って米を渡されたこと。
田淵 わはははははは(笑)。
佐々木 俺はあの出来事を「米騒動」と呼んでる。あとメジャーデビュー直後にa flood of circleのメンバーが失踪しちゃって。当時、俺らが不安定な状態だったときも対バンしてくれてうれしかった。バンドの窮地っていうのは俺自身の窮地でもあって、そのライブに賭けてるところがあったんです。そんなタイミングで気持ちよく、バチッとカッコいいライブをしてくれて救われたんですよね。米でも救われましたが。
田淵 心も胃袋もつかんだと。
佐々木 それが出会って1、2年経った頃かな。バンドが大変な時期にすごく一緒にいてくれたんで、田淵さんは俺にとっては特別な存在なんです。
佐々木は自分の身包みはがして話せる相手
田淵 単純に好きな人には協力したいし、助けたいというのは今も昔もあって。俺、陰口とか好きだし、自分で性格はよくないほうだとは思ってるんですけど、好きになった人とか尊敬する人には失礼はあってはいけないと思うので。あと、佐々木やフラッドとは魂が近い気がするんだよね。酒を飲んで深い話をできる人って、俺、あんまりいなくて。
佐々木 そうですか?
田淵 「あ、なんとなくこの人話が合うかも」みたいな人は二十代前半の頃から1年に1人くらい出てきたんだけど、いつまで経っても同じ目線で、近い魂を持って話せる人は少なくて。佐々木はその数少ないうちの1人だし、不思議な縁だなとは思ってる。シンパシーを感じられる相手が近くにいると、「自分も負けないようにがんばらねば」とか、「先輩面していられるようにせねば」とか思えるし。俺、自分で友達作ろうとして作るタイプじゃないから、自然に付き合いが始まって、10年以上経った今でも関係が続いてるというのはとても幸せだよね。
佐々木 いや……ちょっと照れ笑いしか出てこない……。
田淵 照れちゃうよね、今日(笑)。
佐々木 なんか俺、好きになる人に傾向があって。オッさんのミュージシャンの友達が多いんですけど、そういう人たちって長くやってる理由が魂に出てるような気がするんです。「こういう人だ」って決め付けられない、器の大きさがある。そういうところを田淵さんにも感じる。田淵さん、陰口言うとか冗談で言ってますけど、批評眼を持って絶対正しいことを言ってるし。あと、「このほうがよくなるじゃん」っていう思いがあるんですよね、田淵さんの言葉には。
田淵 まあ、場所によって当然言葉は選ぶし、態度も変えるし、そういう状況の中で佐々木は自分の身包みはがして話せる相手なんだよね。俺、自分にはバンドマンとしての顔、プロデューサーとしての顔、作家としての顔があって。バンドマンとしての部分っていうのは、そういう人と会ってしゃべらないと感覚が鈍るなって。そうしないと、どんどん丸くなってくってわけじゃないけど、行儀よくなってっちゃう気がして。去年、(山中)さわおさんと佐々木と3人で朝まで飲んでたときにそれを痛感したんだよね。
佐々木 田淵さんが丸くなったって感じてる人いないと思うけど(笑)。
田淵 ならよかった。バンドマン同士で話すと「やっぱ俺こういうこと考えてたんだな」って確かめることができるんだよ。ソウルメイト的な人たちを貴重だなって思うのは、包み隠さず話をすることで自分の頭の中を整理できるからなんだよね。その1人が自分の好きなa flood of circleの佐々木だっていうのはすごいうれしいこと。
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山手線に名前書いてあるよこの人!