一生懸命作った曲が一番響く
──中でも今作での大きなチャレンジは、「約束のしおり」「70億にただ1つの奇跡」という王道的なバラードを2曲収録したことかと思います。
たつや◎ そうなんですよ。アッパーな曲もあるけれど、バラードをしっかり聴かせられるバンドが魅力的に感じることが多くて。それを実現できたのがうれしかったです。俺の中でACE COLLECTIONとして大事にしているのが、王道から外れないようにするということなんですけど、その中にメンバーの個性が出る感じになったと思います。
──確かに「70億にただ1つの奇跡」も王道ではあるけれど、歌詞は男性目線、女性目線の両方が取り入れられていて、想像力が掻き立てられます。
たつや◎ この曲はドラマ「僕だけが17歳の世界で」の主題歌なので、歌詞はプロデューサーの方とすごくやりとりをしたんです。1番が女の子目線、2番が男の子目線で、また最後に女の子目線に戻るんです。これは桜の木の前で、女の子が亡くなってしまった男の子との交換ノートを持って、ただ立っているという1枚の写真の歌なんです。だから2番は、実は男の子からの交換ノートの文面なんですよ。そういうふうに深読みができる歌詞がもともと好きなんですけど、今回は、そのストーリーの中にちゃんと自分の気持ちとか、本当に歌いたいと思うことを書くことができたんですよね。
──たつや◎さんが、より自分の気持ちを歌詞に投影することができるようになったきっかけの曲はあったんですか?
たつや◎ それは「約束のしおり」という、もう1つのバラードですね。映画「明日、キミのいない世界で」の主題歌なんですが、初めてのタイアップ楽曲で、書き下ろしをさせていただいたから、「これはすごくたくさんの人を巻き込む曲だな」と思いました。でも、なかなか100%納得がいくような作品ができなくて、僕は負けず嫌いだから、それがすごく悔しかった。人生で初めて、自分が書いた歌詞を何回も見返したんです。曲を作る立場としてメンバー3人の人生を背負ってるから、これまでも一生懸命作ってるつもりだったけど、まだまだ考えられる猶予が残ってたことに気付いて。必死こかないで、楽曲という船にメンバーを乗せていこうとしていたなんて、自分は甘かった。そうやって、今まで以上に自分と向き合って書いたのが「約束のしおり」だったんです。
──なるほど。
たつや◎ この「約束のしおり」という曲を、いろんな人から「いいじゃん」と言ってもらえたことで、テクニックとか、アレンジとか引っかかるポイントはいろいろあるけど、結局は一生懸命作った曲が一番響くんじゃないかと思ったんです。それを信じて今後も懸けていきたいなって。
──メンバーから聴いても、「約束のしおり」は、たつや◎さんがソングライターとして一皮むけたなと感じる曲だったんですか?
奏 そうですね。僕はそれまでACE COLLECTIONの曲で一番好きだったのは、「ROCK STAR」という僕らのオリジナル楽曲で最初にできた曲だったんです。でも、「約束のしおり」ができて、それと並んだんですよね。タイアップが決まったのは急だったんですけど、その中でたつや◎がこの曲を書き上げたのはさすがだなと思いました。
“目標”は場所じゃなくて、バンドの在り方
──一方、今作には「二人フタ色」や「Treasure」といったアグレッシブなロックナンバーも収録されています。
たつや◎ 個人的には、「Treasure」はかなりACE COLLECTIONっぽい曲だなと思います。スタジアム感があるんですよ。LIKIのギターの感じとか、すごく好きですね。
──がむしゃらに突き進んでいく気持ちをつづった歌詞は、今のバンドの状況から生まれたんですか?
たつや◎ この曲を書いてるときに台風19号で自宅が水没してしまって。当時、みんなで一緒に住んでいたんですけど、1階のRIKUの部屋が水浸しになっちゃったんですよ。
──器材は無事でしたか?
RIKU ダメになっちゃったのもありましたね。
たつや◎ そのときに、改めて踏み出すぞという気持ちで書いたのが「Treasure」の歌詞です。「いつの間にか愛に囲まれ」というラストのサビはメンバーやファンのみんなに対して歌っているんです。自分はけっこうネガティブな性格だからよく悩んだりもするけど、気が付けば、いろいろな愛に囲まれて、何度も立ち直らせてもらってるということを歌っています。
──この曲だけじゃなく、今回のアルバムではいろいろな“愛”が歌われています。タイトルにも「L.O.V.E.」という言葉が掲げられていますが、このテーマは制作の過程で見つけたものだったんですか?
たつや◎ 楽曲を作っていく中で、自分は愛について歌いたいんだと気付いたんです。それは恋愛だけじゃなくて、友情とか大きな意味での愛も含めて。これからのACE COLLECTIONは、4人で意味のある行動を増やしていきたいと思ったんです。「このツアーはこういう意味のこもったライブにしよう」とか、考えるようにしたいなって。
──というのは?
たつや◎ 例えば、前回のツアーは「BUILD UP!!」というタイトルにしたんですけど、そこには今まで自分たちはあんまりライブを組めなかったから、「もっと場数を組もうぜ」という意味を込めたんですよね。それが自分たちにとっていいものになったから、これからは、そういう意味がこもったリリースとかツアーをしていけたらいいなと思って、この作品では愛を掲げたいなと思ったんです。
──ということは、ACE COLLECTIONが表現するものは、これからも時期によって変わっていくことになりそうですね。
たつや◎ そのへんは自由でいいかなと思うんですよ。ACE COLLECTIONはこういうメッセージを伝えるバンドであるとか自分たちで決めつける必要はない。今作のテーマは愛だけど、次は違うテーマでやってもいいと思ってるんです。そのとき自分が歌いたいもの、やりたいことを楽しみながら、自分たちの音楽を更新していければいいなと思います。
──本作でメジャーデビューされて、今後のバンドの展望としては、どのようなものを描いていますか?
奏 日本武道館でワンマンライブがしたいです! でも、よく「目標とする場所はどこですか?」と聞かれるんですけど、目標は場所じゃなくて、バンドの在り方というか。思い描いていたものを叶えていく過程に武道館があるだろうし、という感じですね。
ツアー情報
- ACE COLLECTION ZEPP TOUR 2020 "L.O.V.E."
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- 2020年4月19日(日)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2020年4月25日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2020年5月4日(月・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2020年5月6日(水・振休)愛知県 Zepp Nagoya
- 2020年5月15日(金)東京都 Zepp Tokyo