安倍みなみが11月29日に6曲入りCD「いい子ってなんですか」でアーティストデビューを果たす。

歌手を志して18歳で仙台から上京し、6年でようやくつかんだCDデビュー。これからプロとしての活動を本格化させていく直前の本人に、ここまでの道のりや葛藤、現在の心境を聞いた。

取材・文 / 加藤一陽　撮影 / 永峰拓也

なんでオーディション受けないの？

──おいくつなんですか？

24歳です。12月で25歳。

──安倍さんは仙台市出身なんですよね？

はい、18歳まで仙台にいて。それから服飾の専門学校に入学するために東京に出てきました。

──地元では歌っていたんですか？

全然。普通の高校生。英語科だったからめっちゃ英語をやっていて。7時限中5時限が英語、みたいな。

──英語が好きだったんですか？

私、数学が信じられないくらい苦手なんです。本当に苦手で、高校受験のときに通っていた塾の人から「じゃあ、数学なしで受けられるところにしよう」って。「数学が20点とかでも、ほかでけっこう取っていれば入れる」って言うから、「え、数学が20点でいいならそこに行きます！」って。あとはお母さんが外国人だから、自分も英語が話せるといいかなって。

──お母さんはフィリピン出身の方ですよね。お母さん、英語は話せるんですか？

フィリピンってタガログ語と英語が混ざっているから。第2外国語って感じなんですよ。日本では話さないですけど。

──服飾の専門学校に進んだということは、当時の夢はアパレル関係の仕事に就くことだったんだと思うんですけど。音楽の道を志したのはいつなんですか？

私、高校時代にあまり友達とカラオケに行ったりとかをしていなかったんですね。守られて育ったみたいで。で、高校3年になったら、「もう最後だし」ってことで友達とカラオケに行くようになったんです。そしたら一緒にカラオケに行った友達に、「なんでオーディション受けないの？」って言われて。

──安倍さんの歌を聴いて。

そうそう。その友達はダンサーになりたいって子だったんだけど、「1回オーディションを受けたほうがよくない？」って。

──でも、歌手になる気がなければ受けませんよね。

いや、私も歌いたいとは思っていたんです。ウチ、お母さんが歌がうまくて。家族でカラオケとかに行くとお母さんが圧倒的に歌がうまい。だし、お母さんが聴いている外国の歌手のCDを聴くと、さらにヤバいくらいうまいわけですよ。

──お母さんはどういった曲を聴いていたんですか？

ホイットニー・ヒューストンとかセリーヌ・ディオンとか、ガッチガチの歌姫系。そういうのを車の中でリピートしているような家で。だから歌うのは好きだったけれど、「歌手っていうのは、こういうふうに歌えないとなれないんだ」「お母さんも超うまいけど歌手になっていないってことは、私は無理だろう」と。

──なるほど。

でもね、ひそかに練習はしていたんですよ。家とか1人カラオケとかで。練習して、そういう歌手くらいまで歌えるようになれたら、歌手を目指してもいいのかもしれないって思ったんです。で、そうやっているうちに友達に「やってみたら」って。その子がいろいろオーディションも探してくれたんですよ。そういうのって私1人じゃ絶対にやらないから、いい機会だと思って受けることにしたんです。

──ひそかに歌手に憧れていたんですね。

うん。そのオーディション、けっこういいところまで行ったんですよ。最後には落ちてしまったけれど。でもそこで「今は独学だから。勉強したらもっとよくなるかもよ」って言われて、「ボーカルレッスンを受けてみようかな」って思ったんです。

──であれば、服飾の専門学校に進んだのはなぜ？

そのオーディションの結果はよかったんですけど、まだ歌手になることを現実的に考えられなかった。「目指していいのかな？」って。それで「歌の次に好きなことってなんだろうな？」って考えて、「まあ服かな」って。服の学校に通いながら歌のレッスンを受けて、歌が無理そうだったら服のほうの道に進もうと。あとは父が庭師なんですけど、「手に職を」ってよく言われていて。

──計画的ですね。

学校は夜間を選んだんですよ。昼間に歌をやりたかったから。昼の部に行くと課題が多くてバイトやレッスンなんかできないので、昼にバイトやレッスンをやって夜に課題をこなしていました。