絶対ソロで“何か”になる

──その後、音楽活動をどう展開させていったんですか？

専門学校を卒業するくらいのタイミングで、少し大きめのオーディションがあったんです。世界で活躍できる女性グループを作る、みたいなプロジェクトのオーディションで。それに受かって、4人でグループを作りました。海外のスタッフがいるようなプロジェクトで。その海外のスタッフは大物アーティストのファッションディレクターとかをやっているような人で、その人には気に入ってもらえたんですけど、日本側のスタッフが「ちょっと強すぎるな……」ってなって、私だけメンバーから外されたんです（笑）。

──そんなことがあったんですね。強すぎるっていうのは、キャラクター？

いや、歌声です。自分的には、プロジェクトの内容も踏まえて「私しかいない」くらいの感じだったのに（笑）。

──そのグループってどういうグループだったんですか？

結果としては、“Perfumeのイカつい版”みたいなのを作りたかったみたい。

──想像がつきません（笑）。

なんて言うんだろう。結局3人で、見た目が派手で。私が落ちたあとに2カ月くらいアメリカにトレーニングに行ったりしてました。それから「NYLON JAPAN」とかで特集が組まれたり……私「NYLON」とかけっこう好きだったんですけど（笑）。あとは「TOKYO GIRLS COLLECTION」で矢沢（永吉）さんの前で歌ったりしていて……。

──それくらい大々的に売り出すプロジェクトで、“受かったのに落選”は悔やみきれないと思います。よく立ち直れましたね。

「くそ！ 本当悔しいわ！」とは思いました。投票してくれた人にも申し訳ないし。でも、「ここでやめるのもムカつく」と思った。「ムカつくから、私は絶対ソロで何かになる」って。

お客さんいないってヤバい

──専門学校を卒業して、それからはどうしていたのですか？

めっちゃ地道です。ライブハウスのブッキング企画にとりあえず出て、ノルマを払って……みたいな。本当はお金を払ってライブに出るっておかしいのかもしれないけれど、とにかく出るっていう。

──まあ、そうやっている人はたくさんいますからね。

うん。バイトをしながらそういうライブにめっちゃ出て。オリジナルの曲もなかったんですけど。渋谷とか新宿とかの小さなハコでやっていて。そうしているうちに、一緒にブッキングされたほかの出演者を見て、「お客さんいないってヤバいな」って思うようになっていったんです。

──それはどういうことですか？

いろんな人と一緒にライブをやる中で、小さなハコでもお客さんをたくさん呼べる人と、私みたいにノルマを払い続けている人がいるわけじゃないですか。聴いている人がいない中で歌い続けるのもつらくなってくるし。

──まあ、そうですよね。

ノルマを払い続けて誰もいないところで歌うのはしんどいなあと思って。お客さんがたくさんいる共演者を見て、私も見てもらえる機会を増やしたいと思いました。「アクションせねば！」と。

──それから安倍さんはどういうアクションを？

東京出身でもないし、事務所に入っている訳じゃないし……そんな私が「たくさんの人に見てもらえる場所ってないのかな？」って思っていたときに、人に「歌と踊りを売りにしてる集団があるよ！」と紹介されたんです。

──歌と踊りをやっている集団？

Tokyo ROUGEっていう団体で、“レビューショー”という形態で歌と踊りとお芝居をめまぐるしく展開していくようなステージをしている団体なんです。誘われたあとに様子を見に行ってみたら踊りもすごかったし、「ここに入れば誰かに見てもらえる機会が増える！」と思ったんです。それで2年半ほどお世話になりました。

──どの程度ステージをこなすものなのですか？

毎週火曜日に2ステージのプロモーションショーがあって、季節のショーイベントのほかに、“本公演”と呼ばれるステージもあって。赤坂BLITZ（現マイナビBLITZ赤坂）での２DAYS公演にも出演させていただきました。自分1人ではできなかったであろう経験をたくさんさせてもらいましたね。すごくいい時間だったと思います。

──なるほど。

そのレビューショーでお世話になりながら、個人の音楽活動も並行して続けていたので、当時はかなり必死でした（笑）。そんな必死さに同情してくれたのか、徐々に応援していただけるようになりましたね。