AA=|再録ベストに刻んだ最新型のリアル

根底にあるよりリアルでありたい思い

──上田さんの音楽は、その都度同時代のいろんな音楽に影響されてきたと思うんですが、過去の音楽にさかのぼってインスパイアされたような形跡が全然ない気がするんです。

ないですねえ!

──常に現在から未来にしか目が向いてない。

かもしれないですねえ。単に面倒くさがりなのかもしれないけど(笑)。

──例えばアイデアに詰まって「やっぱLed Zeppelinいいよね」みたいに、安易に過去に逃げ込まないと言うか。

わかりますよ、「Led Zeppelinいいよね」って言ってる人たちの気持ち。いいと思うけど、でも俺じゃないな、と思う。

──なぜ?

すごく究極に言うと、「俺はLed Zeppelinじゃないから」としか言えないんだけど(笑)。パンクロックが好きで始めたけど、好きだったパンクロックの人たちには自分はなれないから。だったら何か自分ならではのものを出さないとつまらないじゃないですか。どんなに憧れてもその人になれないから。

上田剛士

──逆に時代の最先端であろうとか、そういうことは意識します?

今は全然してないですね。昔はそれなりに……時代の先端と言うか流行ってるもの、新しいものに興味はあったし、そこから何かを得ようという気持ちはあったんだけど……今もそれがゼロなわけじゃないけど、よりリアルでありたいって感じかな。

──リアル?

その音を出すことが自分にとってリアルかどうか。自分の中で自分の音、自分のサウンドというのは、ある程度できあがっているんです。そこで自分が新しい音楽にどう反応していくか、という作業になっている。誰も聴いたことのない音楽をやるとか、どこにもない音だからやるとか、そういうテンションではなくなってる。自分の音をどう進化させるか、どう時代と向き合って答えを出していくか、という感じなんで、出た答えがその時代の最新であるかどうかは、あんまり重要じゃなくなってる。より自分にとってリアルであるかどうかが肝心かな、と。

──最新の音楽シーンの動向みたいなものにも、あまり関心がなくなってる?

そうですね、昔ほどは気になってないかもしれない。もちろんゼロではないけど。結局探してるものって、「自分の答え」なんですよね、いつも。その時どきに時代の音ってあるけど、自分の音楽が「時代の音」だったことはないと思ってるんですよ。その要素をいろいろ入れてはきたけど。いびつで、自分の中で答えを見つけるのに、いつももがいている音と言うか。

──今でももがいてるんですか?

っていうことだと思いますね。新しい音にしたくてもがくんじゃなくて、より自分にとってのリアルな音を見つけたいともがいてる。

──その答えを「原点回帰」「ルーツに戻る」的な方向に求めないのが昔から徹底してると思います。

確かにそうですね。ひょっとしたら最後にそういう日が来るのかもしれないけど、今はないすねえ(笑)。そこに求めてもねえ……ワクワクしないんですよ、自分の中で。そこにワクワクするようなものを見つけられたら、また違った楽しみ方ができるのかもしれないけど。でもそうなったら、今の自分の音楽とは全然違うものになるだろうと思います。

──でしょうね。

そう考えると、これまで歩んできた音楽家としての自分は意外と好きですね。変でいびつで歪んでるけど、自分にしかないものがあって。ほかには求められないものだから。

自分が満足するには作り続けるしかない

──上田さんはバンドをやっていたときよりも、今のほうが自由に見えます。

そう思います。だから続けていられるのかもしれない。バンドを続けていたら、どこかで行き詰まってしまってたかもしれない。今は自由にやれるという解放感の中でやれてますから。過去の繰り返しで満足できるようなテンションにはないし、自分が満足するには作り続けるしかない。それにメンバー、スタッフ、ファンなどが付き合ってくれる限りは、やり続けたい。

──以前やっていたTHE MAD CAPSULE MARKETSとAA=の音楽面での違いはどこにあると思いますか?

メンバーが違うとかバンドとユニットとか、そういうのを除くと、実はあまりはっきりしてないかもしれないです。自分が興味あるものを興味ある形で表現していただけなんで。メンバーが違うと表現できる形も変わるから、音楽的にもちろん違いはあると思うんだけど、そこを取り除くと……実はあまり変わりないかもしれないですね。前のバンドもこれという形がなく、常に自分の興味のあるものにどんどん変わっていったんで。

上田剛士

──THE MAD CAPSULE MARKETSは変化の途中で活動休止してしまったから。

そうですね。あのあと続いてたらどういう変化をしていたか。こういう変化かもしれないし、違うかもしれない。それはわからない。AA=は前のバンドと違うものをやろうと思って始めたんだけど、結果として10年経ってみると、やっぱり自分らしいものをやってる気がする。俯瞰してみたら意外と変わらないのかもしれないですね。

──大雑把なくくりでは、あるいはご本人に意識としては変わらないのかもしれないですが、変わったと思えるところもあります。

それはどういう?

──一番大きいのは、叙情的でメロディアスな部分が以前より強くなってますね。エモーショナルと言うか。

ああ、そうですねえ。自分で歌うようになったというのもありますね。自分で言葉を発すると、よりパーソナルな心情が出てきて、エモーショナルなものが出やすいのかもしれないです。逆に別のボーカリストっていうフィルターが入ることで、もうちょっと言葉は記号化すると思うし。自分だったらこう言うけど、ほかのボーカリストに歌わせるんだったら、こうは言わせないな、みたいな。そういうことはあるかもしれない。

──上田さんの声は少し高めだし、タカさん(白川貴善)はああいう美声だから、メロディの表現に長けているし、エモーショナルなものを伝えやすい。

それはあると思います。

──今回のベスト盤でも、ハードでヘビーな曲の一方で、そういう叙情的でメロディアスな曲のよさが伝わってきました。

そうかもしれない。両方の部分が自分にはあるんで、どっちかがあればいいってことじゃなく両方必要なんですね。AA=以降はよりメロディの部分が強くなってきたかもしれないけど、激しいものとポップなメロディが合わさってるのが単純に好きなんです。どっちかだけだと「フーン」で終わるんだけど、両方が合わさると「おおっ」となる。ポップの表現もいろいろあって、単なるギターリフでも、それだけで印象に残るものであればポップだと思うんです。メロディだけじゃない。耳に、あるいは心に何か残るもの。結局そこを求めてるのかなと思いますね。キックの音1つであっても、それがたまらない音してて、その音が気持ちよくて好きになってしまえば、それだけでもうポップだと思う。そういうものが自分の音楽にないといけない。それがメロディになる場合もあるし、ちょっとしたノイズになるときもあるかもしれない。それがほかの人に通じてるかどうかわからないんだけど、自分の中では常にあります。その要素がないと曲として満足できないんですよね。

上田剛士
AA=「(re:Rec)」
2018年4月4日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
AA=「(re:Rec)」

[CD]
3240円 / VICL-64965

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収録曲
  1. LOSER
  2. 2010 DIGItoTALism
  3. posi-JUMPER
  4. KILROY WAS HERE
  5. WORKING CLASS
  6. GREED...
  7. Such a beautiful plastic world!!!
  8. HUMANITY2
  9. ROOTS
  10. meVIR
  11. sTEP COde
  12. The Klock
  13. STARRY NIGHT
  14. WARWARWAR
  15. DREAMER
  16. 4 leaf clover
  17. ALL ANIMALS ARE EQUAL
  18. FREEDOM
  19. PEACE!!!

ライブ情報

AA= TOUR OIO 2018
  • 2018年5月2日(水)東京都 新宿LOFT
  • 2018年5月5日(土・祝)大阪府 Music Club JANUS
  • 2018年5月13日(日)宮城県 仙台MACANA
  • 2018年6月8日(金)福岡県 LIVE HOUSE CB
  • 2018年6月10日(日)愛知県 CLUB UPSET
AA=(エーエーイコール)
AA=
2008年に始動した、THE MAD CAPSULE MARKETSの司令塔である上田剛士(Vo, B, Programming, Produce)のソロプロジェクト。アーティスト名はジョージ・オーウェルの小説「動物農場」に登場する言葉「All Animals Are Equal」に由来する。プロジェクトとしての活動の一方で、BABYMETAL、BiSなどの楽曲制作やプロデュースなどを担当したり、椎名林檎をはじめとするさまざまなアーティストの楽曲のリミックスをしたり、CM音楽や映画の劇伴を手がけたりと多岐にわたって活躍。2015年4月に0.8秒と衝撃。のJ.M.をボーカルに迎えた「→MIRAI→(ポストミライ)」をモード学園のCMソングとして提供して注目を集める。2016年5月に5thアルバム「#5」をリリース。2018年4月に全曲再録によるベストアルバム「(re:Rec)」を発表した。