音楽ナタリー Power Push - Masato(coldrain)×上田剛士(AA=)×Koie(Crossfaith)

世界照準の「MONSTER」コラボ

Masato(coldrain)×上田剛士(AA=)×Koie(Crossfaith)

自分が欲しい音をわかってるのは自分だけ

──剛士さんはcoldrainとCrossfaithに対して、最初どういう印象を持ちました?

上田 coldrainと対バンしたとき、Masatoが「すげー海外でやりたい」って言ってて。海外でやりたいって言うバンドはそれまでもたくさんいたし、どうしたら行けるのか聞かれることも多かったけど、ほかの人たちは単なる憧れとして言ってる感じがしたんですよ。でも、coldrainに関しては「この子らは本気なんだな」って感じを受けた。それがすごい印象的で。

──それは何歳ぐらいの頃?

上田 まだ20代半ばだったんじゃない? 震災(2011年の東日本大震災)の前でしょ?

Masato そうすねえ……5年ぐらい前だと思います。

──「AA=AiD」(AA=提唱による東日本大震災復興支援プロジェクト)で共演したのはそのあとですか?

上田 そうそう。あれは2ndアルバム「#2」のツアーを一緒に回ってくれたバンドに声をかけて。それでMasatoに参加してもらったんです。coldrainについては音楽的にも新しい、ヘビーでラウドなロックをやってる子たちだなと思って。演奏もうまくて。今の子たちはうまいんだなと思った。

──同じ歳の頃の自分と比べると?

上田 それもあるし、そのあとの世代と比べてもね。ちゃんと練習してる人たちが出てきたなと。Crossfaithもそうなんだけど。そこがジェネレーションギャップを感じるところで。パンク入ってる人たちはもう少し演奏がラフですからね。

Koie パッション重視ですよね。

上田 そう(笑)。

Masato(coldrain)

Masato そのときのライブの打ち上げで剛士さんに言われたことがすげえ勉強になったなと今でも思うことがあって。打ち上げでレコーディングの話になったんですけど、プロデューサーとか、一緒にやってるような人が剛士さんにはいないって話してて。「なぜなら自分が欲しい音をわかってるのは自分だけだから」って言うんですよ。オレはその感覚がそれまでまったくなくて。「こういう音にしたい」というのを人に伝えて作ってもらうのがレコーディングだとずっと思ってたんです。でも、自分でもっと研究していけば、自分の欲しい音がわかってきて、その出し方もわかってくる。そういう話を聞いてから、レコーディングでは自分の求めてる音をより強く明確に追い求めるようになった。

Koie うんうん。

Masato それまではレコーディングはすげえわからない世界で、どうしたら自分の好きな音になるのか全然わからなかった。だから人に頼るしかなかったけど、でもオレはこうなんだって気持ちを強く持って、自分でやるようになってから、変わったなと思うんです。

Koie 思い描いたビジョンは自分の頭の中にしかないもんな。

Masato そうそうそうそう。人に伝えてやってもらうんじゃなくて自分でやらなきゃいけない。

ほかにあるようなものなら、ほかでいいんです

──それ、言ったこと覚えてますか?

上田 覚えてません(笑)。覚えてないけど……確かにそうだと思います。自分の経験上そうなんだけど、自分のやってることって自分にしかわかんない。ほかの人のいろんなアドバイスも重要なんだけど、それより「オレはこれが好きだ」みたいな思いが結局一番大事なんじゃないか。流行りもあるし、いろんな要素があって音も変わっていくけど、好きなものって意外と変わらなかったりする。表現の仕方はいろいろあるけど、好きなものをしっかり持っていることが、一番伝わるんじゃないかなと思ってて。

──はい。

上田 あと「どうやって海外でやるんですか」ってよく聞かれるけど、だいたいどんなバンドにも「わかんない」って答えるんですよ。なんで行けたのか自分でもわかんなかったし……。自分がやったことと言えば、音源を海外のレーベルに送り続けただけなんですよ。コネも全然なかったから。でもそれで引っかかってくれるところがあったから、オレらは海外に行くことができた。どういうチャンスがあるかはわからないけど、チャンスが来たときに絶対つかめるような準備をしておくしかない。それって結局、自分が何が好きか、どんな音を求めているかをとことん追求していくことだと思うし、それをしないと相手には引っかからないですね。ほかにあるような音楽なら、自分たちが選ばれることはないんです。

Koie うんうんうん。

──自分を知って、ほかの誰でもない自分の音楽を確立させていく。

上田 「自分を知る」のもそうだし、「自分を信じる」かな。最終的には。音楽を作っていると、いいことも言われれば悪いことも言われるじゃないですか。いちいちそれに振り回されて、軸をブレさせるわけにはいかない。結局自分の音楽は自分にしかわからないんだ、というのが最終的な答えで。そこを追求していくことで、いいと思ってくれる人に伝えることができる。自分を信じて、自分がいいと思っている音楽だからこそ、伝えることができる。

──そういう話をMasatoさんとされたわけですね。

上田 ええ。まだ会って間もなくて、世代も違う。しかもまだ若くて、少年の感じが全然抜けてない子が、「世界に絶対行きたいんだ」って真剣に言ってるのを見ていよいよ出てきたな、という感じがありましたね。自分は海外に行ったけど、結局バンドがなくなって、また新しいことを始めてるという時期だったんで。自分のあとを継ぐ者が出てきたという気もした。成功してるしてないは別としても、いいバンドだったら、世界に通用する可能性はすごく高いと思ってるんです。でも自分らのあとに、海外を目指す人たちは意外といなかった。自分たちのあとが続いてない、という感覚はちょっとありました。それが残念というか。いつまでも自分たちが「海外でやれたぜイエーイ!」っていばれちゃうみたいな(笑)。

Koie ふふふふ(笑)。

──それは日本国内だけで充足しちゃう感じがあったってことなんですかね?

上田 たぶんね、それはちょっとあったと思う。日本のシーンというか日本全体のカルチャーかもしれないけど。ガラパゴスって言われるような。音楽シーンというか若い人たちの世代にちょっとあったんじゃないかな。日本でけっこう満足しちゃう、みたいなものが。

Masato 日本は世界に対してシャイだったと思うんです。日本の文化を世界に発信することにシャイだったし、あきらめてた人が多いんじゃないですかね。それがある時期から、スポーツでもガンガン海外に出る人が増えてきて。アニメもそうだし、日本のいろんなカルチャーがヤバいと言われるようになって。日本の文化に対する世界の受け入れ方が変わってきた。アレンジせずそのままで受け入れようという動きも増えてきた。例えば言葉を変えない、とかね。寿司のネタだったら、トロはトロで通す、みたいな。“なんとかツナ”じゃなくて。日本の文化に対する考えって、そこまで変わってきてる。日本の中から、日本の文化をちゃんと海外に伝えていこうとする人も増えたし。たぶん今は、昔より自分たちの文化に自信を持ってるんじゃないかな、日本の人たちも。

Koie うん。確かに。

AA= ニューアルバム「#5」/ 2016年5月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
「#5」
初回限定盤 [CD+DVD] / 4644円 / VIZL-971
通常盤 [CD] / 3024円 / VICL-64574
Tour #5
2016年5月22日(日)
宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2016年5月27日(金)
愛知県 APOLLO BASE
2016年5月28日(土)
大阪府 Shangri-La
2016年6月11日(土)
東京都 LIQUIDROOM
AA=(エーエーイコール)
AA=

THE MAD CAPSULE MARKETSの司令塔である上田剛士(Vo, B, Programming, Produce)のソロプロジェクトで、2008年に始動。アーティスト名はジョージ・オーウェルの小説「動物農場」に登場する言葉「All Animals Are Equal」に由来する。プロジェクトとしての活動の一方で、BABYMETAL、BiSなどの楽曲制作やプロデュースなどを担当したり、椎名林檎をはじめとするさまざまなアーティストの楽曲のリミックスをしたり、CM音楽や映画の劇伴を手がけたりと多岐にわたって活躍。2015年4月に0.8秒と衝撃。のJ.M.をボーカルに迎えた「→MIRAI→(ポストミライ)」をモード学園のCMソングとして提供して注目を集める。同年11月にKj(Dragon Ash)をボーカリストに迎えた「M SPECIES」、2016年3月にMasato(coldrain)とKoie(Crossfaith)をフィーチャーした「FREE THE MONSTER」を配信リリース。5月には「→MIRAI→(ポストミライ)」「M SPECIES」「FREE THE MONSTER」を収めた5thアルバム「#5」をリリースする。

coldrain(コールドレイン)
coldrain

2007年に名古屋で結成された、Masato(Vo)、Y.K.C(G)、Sugi(G)、RxYxO(B)、Katsuma(Dr)からなるラウドロックバンド。日米両国籍を持つMasatoによる英語詞、伸びやかな歌声と過激なスクリームを交えたボーカル、テクニカルでエモーショナルなツインギター、重低音でボトムを支えるベース&ドラムが絡み合うバンドサウンドが魅力。2008年11月にシングル「Fiction」でメジャーデビューを果たす。2012年7月にはデビッド・ベンデスをプロデューサーに迎えたミニアルバム「Through Clarity」をリリースした。2013年より海外でのライブ活動を本格化。2014年にはイギリスのロックフェス「Download Festival」に出演する。2015年10月に4thアルバム「VENA」を発表した。

Crossfaith(クロスフェイス)
Crossfaith

2006年11月にKenta Koie(Vo)、Terufumi Tamano(Programming, Vision)、Kazuki Takemura(G)、Hiroki Ikegawa(B)、Tatsuya Amano(Dr)により結成。2009年4月にリリースした1stアルバム「The Artifical theory for the Dramatic Beauty」が国内メタルコア、スクリーモシーンを活気付ける起爆剤に。その後「Warped Tour UK」「Sound Wave Festival 2013」「Download Festival 2014」「Reading / Leeds Festival 2014」など海外の大型フェスにも多数出演し、各国のメディアに取り上げられる。2014年10月にキャリア初となるシングル「MADNESS」をソニー・ミュージックレーベルズからリリースするが、2015年1月にKazukiが脳内出血の治療によりライブ活動を休止。サポートギタリストを迎えてライブ活動を行う一方で新曲レコーディングを実施し、9月にメジャー1stアルバム「XENO」をリリースした。2016年には日本、ヨーロッパ、イギリスを含む世界ツアー「XENO WORLD TOUR 2016」を実施する。