音楽ナタリー PowerPush - 96猫

自己満足ではなく、1人のアーティストとして

ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリ発の女性シンガーとして人気を博す96猫が、4枚目となるアルバム「Brand New…」を2015年元日にリリースすることになった。

“一歩前に進む”というテーマを掲げて制作された本作には、鬼束ちひろの「月光」を含むカバー楽曲や、変幻自在の歌声でさまざまな世界観を描き出す初のオリジナル曲など、カラフルな全13曲を収録。オープニングを飾る疾走チューン「Shooting Star」では、GLAYのHISASHIがギタリストとして参加していることも大きな話題を呼んでいる。

ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、96猫がこれまでたどってきたシンガーとしての歩みと、大きなステップアップを実感させる本作の制作について話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 小坂茂雄

“音程が来い”ってタグがつけられて、「これが真実か」と

──歌うことの楽しさに目覚めたのはいつ頃ですか?

小学校2~3年生くらいからカラオケによく行っていたので、歌うことはもともと好きでしたね。当時は浜崎あゆみさんとか、ゆずさんとか、あとは母の影響で中森明菜さんの曲をよく歌ってました。ただ、歌がうまいとか言われたことはほぼなく、むしろ「タンバリンうまいね」とか言われる感じで。そっか、私はタンバリン叩いてたほうがいいんだなと思って、一時期はずっとシャカシャカパンシャカシャカパンってやってましたね(笑)。歌うことは楽しかったけど、自分としても自信はまったくなかったですし。その後、本格的に歌を歌っていきたいなと思い始めたのは高校2年生とかですかね。

──そのきっかけは?

2006年にニコニコ動画に投稿し始めたんですけど、そこには同じ曲をいろんな人が歌っている動画があって。それを観たときに、歌う人によってこうも曲自体の印象が変わるんだなっていうことに気付いたんですよ。その面白さが、歌っていきたいという思いをより強くしたんだと思いますね。

──そもそもニコニコ動画に投稿し始めたのはどうしてだったんですか?

96猫

ニコニコ動画に投稿を始める前に、自分のブログ上にアニメのセリフの声マネやアニメソングを歌ったりしたものを細々とアップしていたんですよ。で、そのブログを通じて仲良くなった人が「うまいですね」ってコメントしてくれたりしていたんですけど、それって本当の評価なのかなって疑問に思うようになったんです。要は、仲良くなったから「うまい」って言ってくれてるんじゃないかなって。もし、私のことをまったく知らない人が聴いたら、自分の歌ってどうなのかなって思うようになったんです。それでニコニコ動画に投稿し始めたんですよね。

──純粋な視点で評価してもらいたかったと。

そうですね。本当の感想っていうのを求めてました。ダメなところも、いいところも自分で知りたかったんです。で、ダメな部分は直していけば、それが自信にもつながるんじゃないかなと思いましたし。

──初めての投稿はどんな反応でした?

ひどかったですねえ(笑)。もうボロボロ。ブログではうまいねと言われることもあったけど、すべて夢だったんだなって思いましたね。投稿した動画には“音程が来い”っていうタグがつけられましたから(笑)。これが真実かと。まあでも、そこでなんとなく抱いていた自信をバキッとへし折られたわけですけど、すぐに気持ちを新たにして、いつかこのタグを消してやるぞって思うようになり、週1ペースで動画を投稿し続けてましたね。

下ネタソングの反響に複雑な思い

──その段階で、いつかシンガーとしてデビューしたいという目標もあったんですか?

いや、その段階ではまったくなかったです。単純に楽しかったらいいかなっていう考えがあったし、その上で評価をしてもらえればうれしかったですし。目標はとにかく、いつか“音程が来い”のタグを消すことのみ(笑)。でも活動していく中で、徐々にもっともっとうまくなりたいとか、もっともっとたくさんの人に聴いてもらいたいとは思うようになっていくんですけど。

──動画投稿を初めて8年くらいが経っているわけですけど、自分のアップした動画に対して手応えを感じた瞬間ってありましたか?

あははは(笑)。今となっては恥ずかしいんですけど、下ネタソング……「くるみぽんちお」っていう曲を歌って投稿したら、再生数がグッと伸びたんですよ。そこで初めてたくさんの人に聴いてもらえたんだなっていう実感が湧きましたね。で、「みんなこういうのが好きなのかな」と思い、続けて2、3個くらい下ネタ曲をポンポンと投稿したら、また再生数が伸びて。「あ、やっぱ好きなんだ!」みたいな(笑)。ただ、その反応はうれしくもあったけど、正直複雑なところがあって。

──下ネタ曲で再生数を稼ぐのは本意ではないと。女性だし。

そうなんですよ。なので、「私はこうなりたかったんじゃない!」ってある日思い、そこからはまた普通の楽曲をマジメに歌うようになりました。そうしたらそれ以降、フォロワー数やコミュニティの人数が一気に増え出したんですよね。「くるみぽんちお」で注目していただいたのが影響したのかはわからないですけど、それまで3000人くらいだったのが一気に10万人とかになって。ちょっとビックリしましたね。名前だけが先に歩いて行っちゃってるような気持ちになったりもしたんですけど。

──なるほど。急激な認知度の高まりに、気持ちが追いついていかないみたいなことなんでしょうね。そこのバランスが取れてきたのはいつ頃ですか?

いや、そこはいまだに追いついていない感じがすることもありますね。再生数が伸びないかなと思っていた楽曲が伸びたりとか、その逆もあったりするので、自分のいる状況がよくわからなくなる瞬間もあるんです。いくら名前が知られるようになったとは言え、ダメなものはダメなものとして数字になってバッと表れますからね。それが楽しいところでもあるんですけど。

──ちなみに、“音程が来い”のタグを外す目標はいつ達成されたんですか?

いつなんだろう。気付いたら外れてました。でも、かなり時間がかかったと思いますよ。なかなか外れなくて「チクショー!」ってなってたから(笑)。3年前とかじゃないですかね、外れたのは。それまではずっと「音程が……」ってみんな思ってたんでしょうね。

ニューアルバム「Brand New…」2015年1月1日発売 / 2376円 / U&R records / DGUR-10002 / Amazon.co.jp
96猫「Brand New…」
収録曲
  1. Shooting Star feat. HISASHI(GLAY)
  2. WAVE
  3. 純情フレーバー
  4. 聖槍爆裂ボーイ
  5. D・I・T・A
  6. chocolate
  7. +♂ 96猫ver
  8. OK
  9. 金曜日のおはよう
  10. 天樂
  11. Little Star
  12. 月光
  13. Thank You
96猫 LIVE TOUR“ちょこっと96猫お邪魔します2015春、略してチョコクロ' 15”
  • 2015年3月24日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2015年3月26日(木)大阪府 umeda AKASO
  • 2015年3月30日(月)東京都 渋谷CLUB QUATTRO

チケット料金:前売り3800円(ドリンク代別)

96猫(クロネコ)

2006年からニコニコ動画の「歌ってみた。」カテゴリで活動している女性歌い手。セクシーな女性の声から少年のような声までさまざまな声色を使って楽曲を表現し、15本もの「歌ってみた」投稿作品がミリオン(100万再生)を達成している。2012年に初のソロアルバム「memoReal」をリリースし、その後も定期的にアルバムを発表。2015年元日リリースのアルバム「Brand New...」では、リードトラック「Shooting Star」にHISASHI(GLAY)がギターで参加している。Twitterフォロワー数60万、ニコニコ動画累計再生数5000万回を超え、女性の歌い手の中でトップクラスの人気を誇っている。