音楽ナタリー PowerPush - 96猫

自己満足ではなく、1人のアーティストとして

吐息で歌うってどういうこと? あえぐってどうやるの?

──アルバムにはボカロ曲を中心としたカバーが収められていますが、その中に鬼束ちひろさんの「月光」があったりもして。

2014年の7月に「Stars on Planet」というライブに出させていただいたときに、この「月光」を歌わせてもらったんですね。そうしたら、みんなに「すごくよかったよ」「また聴きたいよ」っていう声をたくさんいただけたので、今回CDにも入れさせていただくことにしました。鬼束さんの世界観は確立されすぎているので、自分に歌えるかどうかっていう不安も最初はありましたけど、歌詞にあるフレーズのように、“私は神の子(I am GOD’S CHILD)”だって言い聞かせながらレコーディングには臨みましたね(笑)。鬼束さんのよさを取り込みつつ、自分らしさをプラスできればいいなって。

──一方、バラエティに富んだオリジナル楽曲も聴きどころですね。特に5曲目、ジャジーな「D・I・T・A」がめちゃくちゃかっこよかったです。

ありがとうございます。ジャズは初めて歌ったんですけど……歌う前にまず「自分の中の色気とは?」みたいなことを考えたんですよ。ネットで「色気」を検索したりして(笑)。

──あははは(笑)。まず言葉の意味を。

そうですそうです。で、言葉の意味はわかったけど、じゃ私にとっての色気ってなんだろうと思ったときに、胸もない、お酒も飲めない……じゃ吐息か? 吐息で歌えばいいのかなって思ったんです。でも今度は吐息で歌うってどういうことなんだろうと思い、いろんなジャズを聴いてみたところ、この人たちは歌であえいでるなと。じゃ歌であえげばいいんだとわかったんですけど、今度はまたあえぐってどうやるの? みたいな疑問が浮かんできて(笑)。ホントにもう初めての経験過ぎてどうしたらいいかわからなくなったんですけど、結局は曲と歌詞から受け取ったものを、私なりに表現すればいいじゃんっていうところに落ち着きました。

──すごく艶っぽい声が出てると思いますよ。

自分でも、なかなかに色気あるじゃないかって思いました。ちょっと胸大きそうだぞ、みたいな(笑)。自分の中の新たな発見があったのがうれしかったですね。

ホントに人間どこで人生が変わるかわかんないですよね

──そして本作最大のトピックと言えるのは、オープニングを飾る「Shooting Star」。なんと、GLAYのHISASHIさんがギターで参加されています。このビッグなコラボはどんな経緯で実現したんですか?

まず、以前にHISASHIさんがTwitter上で、私が歌った「レンくんなう!」という曲が好きで聴いてるみたいなことをつぶやいてくださっていたんですよ。で、私はまさか自分のことじゃないと思ってたから見て見ぬふりをしてたんですけど(笑)、今度は私のファンの方から、「96ちゃんの歌ってる『小夜子』をHISASHIさんが放送で使ってましたよ!」っていうコメントをいただいて。そこで私は「うわ! これは自分のことやー!」と思って、あわててお礼のメッセージをTwitterでHISASHIさんに送ったわけです。それをきっかけにありがたいつながりができたので、今回のアルバムにコラボ曲を入れようってなったときに、勇気を振り絞ってお願いしてみたんですよね。ホントにもうダメ元だったんですけど。

──そうしたらOKをいただけたと。

はい。私はもう玄関の鍵を締め、パソコンの電源を落とし、ジッとしながらそのお返事を待っていたんです。そうしたら、HISASHIさんがOKしてくださったよってスタッフさんから連絡がありまして。もうウワーウワーってなりましたよ。玄関のカギを開けてウワーって飛び出す、みたいな(笑)。

──実際、HISASHIさんが弾いてくれたギターを聴いてどう感じました?

96猫

いやもう自分が想像していた以上のギターソロを弾いてくださっていて、超絶カッコいい曲になってました。その感動をHISASHIさんに伝えなきゃと思ったんですけど、私は専門用語がわからないので、「HISASHIさん、ギターがピロピロ動くところがカッコよかったです!」ってメールを送ったんですよ。そうしたら、「うん、ピロピロがんばったよ」ってお返事が来て。うわ、なんて優しい人なんだと思って、改めてその人柄にも惚れ直しちゃいましたね。で、そんなカッコいいギターを弾いてくださったわけなので、歌もがんばらないとなって強く思ったんですけど。

──疾走するサウンドにすごく気持ちよさそうにノッて歌われていますよね。

ホントに歌っていて気持ちよかったです。聴いているだけでスカッとする、“THEアニメソング”的な曲なので、テンション高く歌うことができたと思います。自分で聴いていても、もっとがんばろうっていうモチベーションにつながる曲になりましたね。ホント毎日聴いてますよ。昨日の夜も聴きましたし。後半のカッコいいギターソロをループ再生したりとか(笑)。

──このコラボをきっかけに、今まで以上に幅広い層へ96猫さんの曲が響くことになるでしょうね。

そうだったらうれしいです。コラボを発表したときはかなりザワザワしてましたからね。「96ちゃんがHISASHIさんと!」みたいな。そういう状況を、Twitterでエゴサーチしながら、へっへっへってニヤけつつ見てました。どや!どや!どや!みたいな(笑)。いやー、ホントに人間どこで人生が変わるかわかんないですよね。人生をあきらめかけてる人がいたら、生きてみないとわからないぞって言いたいですね! ……なんかテンションが上がりすぎて、いろいろしゃべりまくってすみません。思いがあふれ出してしまいました。もう満足です。帰ってもいいです。

──終了?(笑) もうちょっとだけお話聞かせてくださいよ。

あ、まだですよね。すみません(笑)。

2015年のことを考えて今からワクワクしてます

──本作のリリースを経て、3月には東名阪を周るツアー「ちょこっと96猫お邪魔します2015春、略してチョコクロ‘15!!」が開催されます。そこへの意気込みを聞かせていただければと。

はい。ツアーは今回で2回目なんですけど、前回よりパワーアップしたライブをお届けしたいなと思ってますね。意気込みとしては……厚底を控える。

──靴の話ですか(笑)。

靴ですね。前は20㎝くらいある、レディー・ガガもビックリみたいな厚底の靴を履いていたんですけど、やっぱり動きづらいんでね(笑)、今回からはちょっと控えようかなと思ってます。もともと、身長がコンプレックスだったんですけど、ここからは、身長ちっさいけどがんばってるぞ! っていうところを解放していけたらいいかなって。

──96猫さんのライブの魅力ってどんなところにあると思います?

自由なとこじゃないですかね。MCではお客さんから愛のあるイジりをされるので、それに対して私もしっかり愛をもってイジり返したりとか。ゆるーい感じで、言葉のキャッチボールをよくしますね。もちろん歌はちゃんとマジメに歌うんですけど。

──先ほどおっしゃっていたファンとの近い距離感は、ライブにおいても大切にされているわけですね。

はい。今回のアルバムには、そういった私を支えてくれているファンの方々への感謝の思いを詰め込んだ「Thank You」という曲も入っているので、それはぜひ生で届けたいなと思っています。曲中には声をたくさん重ねて、みんなで♪ラララーと歌うパートがあるので、そこを覚えてライブに来てもらえたらうれしいですね。一緒に歌いたいです!

──アルバムリリースで幕を開ける2015年。何かたくらみはあります?

やりたいことはいっぱいありますよー。ありすぎて、どうしましょうね(笑)。まずはアルバムの発売イベントがあるので、それに備えて身長をまず伸ばし、ダイエットをし、オシャレを磨く。

──見た目がだいぶ変わってしまいそうですけど(笑)。

あははは(笑)。2015年はさらにいろいろなコラボものもやっていく予定なので、今からワクワクしていますね。ワクワクすっぞ! みたいな。あとは、自分のルーツであるニコニコ動画への投稿も、もっともっとペースを上げていければなって思ってます。動画を自分で作ることも最近始めたので、それもがんばりたいですし。さらにステップアップできる1年にしたいと思います!

ニューアルバム「Brand New…」2015年1月1日発売 / 2376円 / U&R records / DGUR-10002 / Amazon.co.jp
96猫「Brand New…」
収録曲
  1. Shooting Star feat. HISASHI(GLAY)
  2. WAVE
  3. 純情フレーバー
  4. 聖槍爆裂ボーイ
  5. D・I・T・A
  6. chocolate
  7. +♂ 96猫ver
  8. OK
  9. 金曜日のおはよう
  10. 天樂
  11. Little Star
  12. 月光
  13. Thank You
96猫 LIVE TOUR“ちょこっと96猫お邪魔します2015春、略してチョコクロ' 15”
  • 2015年3月24日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2015年3月26日(木)大阪府 umeda AKASO
  • 2015年3月30日(月)東京都 渋谷CLUB QUATTRO

チケット料金:前売り3800円(ドリンク代別)

96猫(クロネコ)

2006年からニコニコ動画の「歌ってみた。」カテゴリで活動している女性歌い手。セクシーな女性の声から少年のような声までさまざまな声色を使って楽曲を表現し、15本もの「歌ってみた」投稿作品がミリオン(100万再生)を達成している。2012年に初のソロアルバム「memoReal」をリリースし、その後も定期的にアルバムを発表。2015年元日リリースのアルバム「Brand New...」では、リードトラック「Shooting Star」にHISASHI(GLAY)がギターで参加している。Twitterフォロワー数60万、ニコニコ動画累計再生数5000万回を超え、女性の歌い手の中でトップクラスの人気を誇っている。