音楽ナタリー Power Push - 96猫×伊東歌詞太郎 96猫×ろん

「ニコ動」とメジャー “戦友”たちが抱く思い

96猫が11月23日に2ndミニアルバム「7S」をリリースした。

6月に「Crimson Stain」でメジャーデビューした96猫のメジャー2作目となる本作は、コラボ作で構成されたミニアルバム。96猫は制作にあたり「ずっと一緒にやりたかった人」に声をかけたといい、下田麻美やすこっぷ、野村義男など多彩なアーティストが作品に参加している。

音楽ナタリーではミニアルバムのリリースに際し、「フタリボシ with 伊東歌詞太郎」で楽曲に参加した伊東歌詞太郎と96猫、さらに「ブラックペッパー with ろん」に参加したろんと96猫へのインタビューを実施。「ニコニコ動画」からメジャーシーンまで、フィールドをまたいで活躍する彼女たちに、自身の活動や本作でのコラボ、さらには「ニコ動」シーンについて抱く思いを聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ

96猫×伊東歌詞太郎

すごい名前だな

96猫 出会いたての頃のことって覚えてる?

伊東歌詞太郎 もちろん! 僕はニコ動への投稿を始めて今年で4年目なんだけど、もうその頃って、ニコ動で活躍してる人がけっこう有名になっているような状況だったんだよね。で、96ちゃんのことは2012年の3月に名前を知ったんです。当時、インターネット上の音楽をすごく勉強していて。

96猫 すごい鮮明な記憶!

歌詞太郎 自分の投稿とリンクするからよく覚えてるんですよ。

──96猫さんの歌を聴いた感想はどんなものでしたか?

歌詞太郎 ものすごく歌がうまい女性だなという印象でした。知り合ってからは、海外公演に一緒に行ったりもして、仲良くさせてもらっているよね。

96猫

96猫 私は人との初めての出会いってあまり覚えていなくて、出会った当初の記憶で印象に残っているのは虹色オーケストラ(40mPと事務員Gがプロデュースする公演)での共演かなあ。私の歌詞太郎くんへの第一印象は「すごい名前だな」でした(笑)。で、いざ歌を聴いてみるといい意味で歌い手っぽくないというか。その当時ニコ動で人気だった人の歌い方って、声優さんのように演じながら歌う人が多かったから、ストレートに歌う歌詞太郎くんの歌はすごく印象に残りました。

──そうやってニコニコ動画という場で出会った2人が、今回メジャーシーンでコラボすることになりました。そこでお聞きしたいのですが、お二人はニコ動というフィールドでの活動とメジャーシーンでの活動に違いを感じていますか?

96猫 そうですね。意識は変わるんじゃないかな?

歌詞太郎 具体的に言うと?

96猫 これまでは自己満足だったというか。ただ単に自分の歌いやすいやり方を貫いていたんですけど、デビューさせてもらって、いろんな人の意見を聞きながら歌を録るっていう行為はとても刺激的なんです。

歌詞太郎 僕はニコ動への投稿を始める前にバンドをやっていたというのもあって、意識はあまり変わっていないというか。「心の底からいいものを作りたい」という思いだけでやっていますね。なので今回も「96ちゃんと自分でいいものを作るぞ」ということをひたすらに考えました。僕、横とか後ろを見ないタイプなんですよね(笑)。だからよくも悪くもずっと変わらないのかな。

メジャーシーンで活動することが夢だった

──そもそも、2人はなぜメジャーへの進出を決めたんですか?

96猫 私はもともと声優さんに憧れていたんです。だから、ニコ動でも音楽をガツッとやるよりは声で遊んでいるという感覚で。でもそうやって活動を続けるうちに「歌ってすごいな」と感じるようになって、「誰かの日常の中にいられる音楽をもっと届けたい」っていう気持ちからデビューを決めました。より多くの方に聴いてもらって、誰かの支えになれたらって。

伊東歌詞太郎

歌詞太郎 僕はずっと、メジャーシーンで活動することが夢だったんですよ。いろんな人から「意味ないよ」って言われてきたりもしたけど、それでも夢は夢なんで、それ以外の何物でもなくて。「メジャーに夢はない」って言われても、そんなの自分でやってみなければわからないじゃないですか。とにかく僕は、1人でも多くの人に聴いてもらう可能性が広がるのがメジャーデビューだと思っているんです。それは僕の夢を具現化するひとつの形というか。子供のときからずっと「そこに行きたい」と思っていた場所だったんです。

──そうだったんですね。では、実際にメジャーシーンに立ってみて、どんなことを感じますか?

96猫 歌詞太郎くんが言ったように、自分の曲を聴いてもらえる機会は増えると思います。ただ、じゃあそこから「私に何ができるだろう」となったときに、やっぱり歌うことしかできない自分がいて。だから「メジャーデビューで夢が叶いました」っていう感覚ではないんですよ。夢を叶えている途中の段階って感じですね。

歌詞太郎 戦いの場に立ってからが始まりだよね。実際メジャーシーンに立ってみて、はっきりそう思います。僕はメジャーデビューを「最高の通過点」って表現しているんですけど、勝負はこれからという感じです。

96猫 2ndミニアルバム「7S」 / 2016年11月23日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 2462円 / SRCL-9228~9
通常盤 [CD] / 1922円 / SRCL-9230
CD収録曲
  1. ブラックペッパー with ろん
  2. 鬼KYOKAN with 下田麻美
  3. 晩秋ロストイン
  4. Alive
  5. フタリボシ with 伊東歌詞太郎
  6. MOTHER ~7S Ver.~ with 奥華子
  7. どう考えても私は悪くない [bonus track]
  8. ブラックペッパー -Instrumental-
  9. 晩秋ロストイン -Instrumental-
  10. Alive -Instrumental-
  11. MOTHER ~7S Ver.~ -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  1. 「ブラックペッパー with ろん」 Music Video
  2. 「高尾山を登ってみた。」
96猫(クロネコ)

2006年からニコニコ動画の「歌ってみた。」カテゴリなどで活動している女性歌い手。セクシーな女性の声から少年のような声までさまざまな声色を使う表現力の幅広さで視聴者から支持を得ており、ニコニコ動画とYouTubeの動画累計再生数は1億回を超える。2012年に初のソロアルバム「memoReal」をリリースし、その後も定期的にアルバムを発表。2015年元日発売のアルバム「Brand New...」では、リードトラック「Shooting Star」にHISASHI(GLAY)がギターで参加した。2016年6月にリリースされるミニアルバム「Crimson Stain」でSony Music Recordsよりメジャーデビュー。11月に2ndミニアルバム「7S」を発表した。

伊東歌詞太郎(イトウカシタロウ)

2012年1月に動画共有サイトに“歌ってみた”動画を初投稿。ボカロ楽曲などのカバーで大きな注目を集める。現在のニコニコ動画総再生数は4000万を超え、ロックからバラードまで幅広く歌いこなす歌唱力から「歌唱力おばけ」とも称される。2014年1月、TOY'S FACTORYより「一意専心」でメジャーデビューし、2015年4月に2ndアルバム「二律背反」をリリース。2作連続オリコン週間ランキングTOP10入りをする。また、ユニット・イトヲカシのボーカルとしても活動中。