ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ

ホーンセクション×ライブREC 「Do You Remember?」

全曲ホーンセクションを導入し、全6曲中5曲はスタジオライブレコーディングという新たな趣向で、ミニアルバム「Do You Remember?」を完成させたザ50回転ズ。今年2月に発表したミニアルバム「ロックンロール・ラブレター」ではロマンチックな世界を描いた彼らだが、今回ホーンセクションを導入したことで明るいキラキラ感はさらに増幅。胸キュンなナンバーも新たな輝きを見せている。シンプルで濃厚、かつ自然体で突き進む3人に話を訊いた。

取材・文 / 鈴木淳史

「やってみたい」という気持ちだけ

──2010年の「ロックンロール・マジック」、2011年の「ロックンロール世界旅行」、今年2月の「ロックンロール・ラブレター」と、ロックンロールをコンセプトにしたミニアルバム3部作を経て、今作では全曲ホーンセクションを導入したり、6曲中5曲はスタジオライブレコーディングを行ったりという新たな趣向が取り入れられています。3部作を振り返った上でここに至るまでの流れを教えてください。

ダニー(G, Vo)

ダニー(G, Vo) 3部作に関しては戦略的な考え方はなかったんです。3作出すというのも途中の2作目から言い出したコンセプトですから(笑)。今回スタジオライブレコーディングをしたのも同じで、次に何をしようかと思ったときに、おこがましい言い方になりますけど近代のスタジオレコーディングはだいたい雰囲気がつかめたなと(笑)。

──1stアルバムを発表してから6年経っていますし、スタジオレコーディングに関してはそれなりの経験を積んだということですね。

ダニー そうです。じゃあ次はライブレコーディングをしてみたいなと。本当にそれだけですね。

ボギー(Dr, Vo) 純粋にやってみたかった。

ボギー(Dr, Vo)

ドリー(B, Vo) 何をやるにしても、毎回「やってみたい」という気持ちが最初にあるんですよ。昔、一発録りみたいなレコーディングはやったことありますけど、それとはまた違う感じでのライブレコーディングをしてみたいなと思ったんで。

ダニー 今、ライブレコーディングをやっても、3人で「ガシャン! ドカン!」というだけの一発録りにはならないだろうって気持ちもあったし。

──若さと勢いだけの衝動的な一発録りではなく、この数年の経験を生かして、昔と違う形のレコーディングができると思ったわけですね。ホーンセクション導入というアイデアも同じように「やってみたかった」から?

ダニー そうですね。今までもホーンにお手伝いしていただいたことはあるんですけど、本格的にやってみたいなと思って。

ボギー ホーンセクションとやったらカッコよくなるやろから、やりたいなっていう単純な理由だけですね。

非合理的なレコーディング

ドリー(B, Vo)

──ホーンが入ったロックンロールナンバーで、皆さんのルーツとなっているものはありますか?

ダニー やっぱりRAMONESの5枚目のアルバム「End of the Century」に入っている「Do You Remember Rock'n'Roll Radio?」ですよね。「End of the Century」は、フィル・スペクターがプロデュースしたアルバムで、俺らにとってこれは大きい。そのあたりのグッドオールドロックンロールへの憧れもあって、きらびやかで華やかな音を録りたかったんですよ。しかも今回はテープで録っているので、まさに当時と同じ黄金時代のやり方ですわ。

ドリー 俺らがホーンセクションを入れる上で「End of the Century」は大前提になるアルバムやな。当時のRAMONESファンは、ホーンセクションが入っている音を聴いて「えっ!?」と思ったらしいけど (笑)。

スタジオライブレコーディングの模様。

ダニー パンクにホーンが入るなんて当時は想像できなかったんやろな。でもとにかく明るいキラキラ感があるこういう音がやりたかった。それをライブレコーディングで録ったら、より明るいキラキラ感が出ると思ったんで。

ドリー でもこのやり方は流行んないですよ!

ダニー (笑)。非合理的なレコーディングですからね。Pro Toolsで録れば切り貼りして方向修正できるけど、ライブレコーディングはその日に声が出なかったら終わりやし。だからこそ生々しい感じで録れるんやけど。

ミニアルバム「Do You Remember?」 / 2012年11月28日発売 / Sony Music Associated Records

ミニアルバム「Do You Remember?」
初回限定盤[CD+DVD] / 2300円 / AICL2457-8
通常盤[CD] / 1680円 / AICL2459
CD収録曲
  1. あの日のロックンロール
  2. ディスコビートじゃ踊れない
  3. キャプテン・オブ・アメリカ
  4. Young Believer
  5. 香港ブーガルー
  6. さよならヒーロー
初回限定盤DVD収録内容
  • Studio Live Recording Documentary
ザ50回転ズ (ごじゅっかいてんず)

ダニー(G, Vo)、ドリー(B, Vo)、ボギー(Dr, Vo)の3名により2004年に大阪で結成。「なにわのラモーンズ」と呼ばれるパンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「SUMMER SONIC」などの大規模フェスに多数出演。世界最大の音楽見本市「SXSW」やドイツ「ASIA PACIFIC WEEKS」へ招聘されるなど海外での活動も積極的に行う。2010年にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍して以降は、ミニアルバム3部作「ロックンロール・マジック」「ロックンロール世界旅行」「ロックンロール・ラブレター」を発表。2012年11月に新作「Do You Remember?」をリリースした。