ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ

串カツトークに花が咲く これがロックンロール新世界旅行!?

世界の音楽をテーマにしたコンセプトアルバム「ロックンロール世界旅行」を完成させたザ50回転ズ。東京のレコード会社と契約し、全国各地をくまなくライブしている彼らは、今も大阪に住み続けている。そこで今回は、大阪・新世界でメンバー3人にインタビューを敢行。「大阪へのこだわりってありますの?」なんてことを、串カツをビールで流し込みながら緩やかに問い詰めてみた。

地元での取材は空のジョッキとともに大いに盛り上がり、イチゲンさんには伝わりにくい関西のバンド特有の“臭み”がいかに素晴らしいかについて激論を展開。さらに、常に明るく楽しい彼らのイメージを支える確固たるポリシーについても解説してもらった。陽気さの深みに迫ったインタビューを、ぜひとも読んでもらいたい。

取材・文 / 鈴木淳史 撮影 / 大山卓也

東京がニューヨークなら大阪はサンフランシスコや

インタビュー風景

──今回のアルバムは、その名も「ロックンロール世界旅行」と、やたらグローバルやないですか。でも、当の本人たちは大阪にずっと住み続けてはるし、今日の撮影も大阪の新世界を舞台に地元色の濃い内容になっていて。そこで今日のインタビューは、地元・大阪でゆったり呑み食いしながら語ってもらえたらなと思ってるんです。

ダニー(G, Vo) わかりました! 話しこみましょか!

──さっそくですが、なんで大阪に留まってはるんですか?

ダニー いや、逆にみんな東京に行くけど、なんで、そないみんな行くの?と聞き返したい。軒並み行ってるのが気にくわんのよ。どいつもこいつも上京したがりやがって!

──(笑)。関西がナンバーワンで、東京が良くない街やと思ってはるわけではないんですよね。

ダニー もちろん。あの、例えば新世界の待ち合わせを通天閣前でするのって、大阪の俺らかしたらベタなことやないですか?

──多分東京で言うたら、渋谷の待ち合わせをハチ公前でするようなベタさですよね。

ダニー そうそう。メジャー行くからって東京へ引っ越すいうのは、俺らからしたらベタなんすよ。だから、どいつもこいつも東京へ引っ越しやがってと思ってるわけです(笑)。

ドリー(B, Vo) メジャー行くのと東京行くのが、なんかセットみたいになってるとこあるよな。

インタビュー風景

ダニー 東京が情報発信の中心になっとるのは間違いないし。東京で1週間とか過ごして若い子らが遊ぶようなとこに顔出すと「なるほどな。なんかみんな垢抜けとんな」みたいなんは感じるんすよ。アメリカで言うたら、東京はニューヨークみたいな存在やろし。でも大阪もカリフォルニアかサンフランシスコやからな!

ボギー(Dr, Vo) ええように言うた!

ダニー 負けとると思ってない! 今日撮った写真やって、すごい独自の文化の匂いが出とる思うし。まあこの街が好きなんすよ。もちろん東京は刺激的やし、つながりを求めて仕事が欲しくて欲しくてしゃーないみたいな人にはええかもやけど。でも、俺ら大阪いながらも、全国でライブやって、レコード出して、やりたい放題やらせてもらってるから。まあ、悪く言うと、欲がないんかもしれないですね。でも、今そんなん訊かれたから考えただけで、普段は何も考えてないですけど(笑)。

ドリー どうしても出なあかん理由があったら、出るかもしれないですけどね。

ダニー 個人的にちょっと煮詰まってきたとか、同じような曲しかできへんとか、ウダウダ悩むんやったら、東京行って新しい刺激を求めたほうがええかもしらんけどね。でも今は、明日にも新しい曲ができそうな、毎日やりたいことが次から次へとあるような状況やのに、なんで引っ越しなんぞにパワーを使わんとあかんのやと。単純に「金がない!」という話もありますけどね! ここだけの話!

ドリー 言うてもうた(笑)。

関西のバンド独特のノリが好き

──ザ50回転ズはメジャーデビューが2006年ですけど、5年も東京のレコード会社とやっていけてるっていうのはバランスがええんかなと。

ダニー あっ、今ちょっと考え直したんですけど、東京に行くことに抵抗があるかというとないんですよ。でも大阪で気持ちよくやれとんやったら、行くメリットをどこに見出すかですよね。東京に出ていくだけで5000万円くれるんやったら、行きます!(笑)

インタビュー風景

ボギー やっぱ金なんや?

ダニー 金です! ……言わすんじゃない!

──その5000万円システムならみんな行きますよ(笑)。ボギーさんは、大阪にいることについてどう考えてますか?

ボギー そら、やっぱり大阪はコンディションというか、ノリを培ってきた場所というのが……。

店員 はい、お待たせ!(串カツが運ばれてくる)

ダニー おおきにー!

──(一同爆笑)

ダニー ボギーってこういうとこあるよな! 一番ええこと言おうとしたら、うまいこといかへんっていうか(笑)。

ボギー そうそう運が悪い! っていうか、もう何を言おうとしたかわからへん! さっきのはカットで!

ダニー 今の一連の流れが大阪在住ならではのノリ(笑)。東京だと、店員さんが串カツ持ってきはって会話を中断されても、「あっ、串カツ来たんだ」って終わっちゃうから。

インタビュー風景

ボギー この掛け合いというかバンドの関係というか……、例えばKING(BROTHERS)やワッツーシ(ゾンビ)とか、ほかの関西のバンドもこういう独特のノリはあると思いますけどね。まあ単純に大阪が好きです!

──KINGやワッツーシの会話は、ここまでベタベタではないけどね(笑)。でもテンポの良さというか、メリハリは東京のバンドよりは効いてるでしょうね。

ドリー 僕は大阪生まれやないですけど、さっきダニーが言ってたみたいに、ニューヨークとサンフランシスコの関係って、そのとおりやなと思ったんですよ。ニューヨークもすごくいいけど、例えばサンフランシスコってラテン的なノリというか。

ダニー 大阪とそっくりやもん。俺、アメリカで一番肌が合うのはサンフランシスコやから。

ニューアルバム「ロックンロール世界旅行」 / 2011年7月13日発売 / 1890円(税込) / Sony Music Associated Records / AICL-2260

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CD収録曲
  1. 首狩り族の逆襲
  2. ハワイはいいわ
  3. ベラルーシより愛をこめて
  4. 荒野のタンゴ
  5. KILLER
  6. ロッキン・カンフー
  7. カリブ野郎に気をつけろ!
  8. Trip! Trip!
  9. 船乗りたちのメロディ
ザ50回転ズ(ごじゅっかいてんず)

アーティスト写真

ダニー(G, Vo)、ドリー(B, Vo)、ボギー(Dr, Vo)の3名により2004年に大阪で結成。「なにわのラモーンズ」と呼ばれるパンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「SUMMER SONIC」などの大規模フェスに多数出演。世界最大の音楽見本市「SXSW」やドイツ「ASIA PACIFIC WEEKS」へ招聘されるなど海外での活動も積極的に行う。2010年、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍し、約2年ぶりとなるミニアルバム「ロックンロール・マジック」をリリース。2011年7月に「ロックンロール世界旅行」を発表した。