青春高校3年C組が2ndシングル「好きです」を7月29日にリリースした。表題曲はデビューシングルに引き続きアイドル部が担当し、カップリングには生徒全員で歌う楽曲のほか、男子アイドル部、ダンス&ボーカル部、軽音部による楽曲がそれぞれ収められている。
彼らの母体であるバラエティ番組「青春高校3年C組」(テレビ東京系)は放送3年目を迎え、今年4月に夕方の帯枠から深夜枠へ引っ越し。週1回の放送となって新たなフェーズへ入ろうとしていた矢先、新型コロナウイルスの影響によってスタジオ収録が行えなくなるなど、当初の青写真を白紙に戻さざるを得ない状況となった。そんな想定外の事態を経て発表される今作は、必然的にこの社会情勢を色濃く反映したものとなっている。
音楽ナタリーでは今回、2部構成でのインタビューを実施。前半はアイドル部から頓知気さきな、日比野芽奈、黒木美佑、兼行凜、ボールドウィン零の5人に、後半ではそれ以外の部活から木目田俊、出口晴臣、宇都木彩乃、久保侑大、藤原侑也の5人に集まってもらい話を聞いた。さらに番組演出の三宅優樹氏にも同席してもらっている。
取材 / 臼杵成晃 文・撮影 / ナカニシキュウ
私たちはプロなんだ
──青春高校3年C組は1月にアーティストとしてデビューを果たしましたが、何か変化はありましたか?
日比野芽奈 目指しているところは変わらずだと思いますが……。
兼行凜 意識が変わったかもしれないです。デビュー前は番組収録とかアイドル活動を楽しむだけだったのが、今は「青春高校を有名にするぞ」ってプロ意識が芽生えてきました。
黒木美佑 もともと全員がアイドルになりたくて入ってきたわけじゃないので、みんながどこに向かってアイドル活動をしているのか不明瞭な感じがあったんです。それが、デビューしてからは向いている方向が一致してきているのを感じています。
ボールドウィン零 まさに美佑が言った通り、私は最初アイドル活動をすること自体に違和感があったんです。でも、どんどん仲間が増えていったり、デビューに向けてレコーディングやミュージックビデオ撮影などを経験していく中で、だんだんアイドルとしての実感が湧いてきました。今は何をどうがんばっていこうかということも明確になってきて。
頓知気さきな 自分たち以外のことで言うと、Twitterとかで青春高校の話をしてくれる方って、以前は私たちの写真だったり番組関連の画像をアイコンに使っているような熱心なファンの方がほとんどだったんです。でも最近はそうじゃない人、特別に私たちのファンではなさそうな人たちも青春高校の話題をツイートしてくれるようになって、着々と広まってきているのを感じますね。もう私たちはプロなんだ、って自覚を持ってやっていかないと。
──そうした意識が生まれた矢先、番組はリモート収録になってしまいました。自宅で1人、画面に向かってしゃべり続ける状況だと、もともと一般公募で集まった3Cの皆さんの中には、一般人の感覚に戻ってしまう人もいるんじゃないかなと。ちゃんとプロ意識は保てていますか?
日比野 気持ちは保てていると思います。確かにMCの方にも会えていない状態ですし、家の中での収録は確かに緊張感が保てないとか危うい部分はあるかもしれないんですけど、その分考える時間はすごく増えたので。
頓知気 青春高校に入ってからずっと「次はこれ、次はこれ」って爆速で続いている状態だったのが、急に何もなくなって。集中力を維持するのが難しい部分もありつつ、私たち的には常に前のめりというか、やりたくてうずうずしながら過ごしていました。「ずっと家にいて素人返りしたんじゃない?」みたいな子はいないと思います。
リモートで見せた新たな一面
──逆に、リモートで新たなポテンシャルを発揮している人もいますよね。この中だと……。
黒木 私ですね(笑)。
──「BL将棋」(対局者が互いに萌えるBLシチュエーションを提示し合う競技)とか最高ですよね。番組を観ていると、黒木さんはそもそものアイドル職能が異様に高いなと。アイドルのライブなどをめちゃめちゃ観てきている人なんじゃないかと感じます。
黒木 もともとアイドルが好きで、自分も昔からアイドルをやっていたというのもあるんですけど、対バン相手も含めてかなりたくさん観てきました。アイドルのライブを観るときは「この子かわいい」とかだけじゃなくて、「こういうところに気をつけてパフォーマンスしているんだろうな」とか「今お客さんを煽ったのはこういう意図だろうな」みたいに分析するのが好きなんです。そういうところは青春高校に還元できてるんじゃないかな。
ボールドウィン いつも勉強になってます。
兼行 みんなリスペクトを込めて「みゆぴプロ」って呼んでる(笑)。
──そういう兼行さんも先ほど「プロ意識に目覚めた」とおっしゃっていました。視聴者目線ではあどけない子供ポジションにずっといるように見えていますけど、周りから見るとどうですか?
日比野 自主練の声かけとか頻繁にしてくれますし、最年少なのに頼りになるんです。
頓知気 グループ内でもトップレベルのハングリー精神がありますね。バチバチしてるとかではなく、自分を高めていこうみたいな意識がすごく高い。
兼行 ……?
頓知気 あれ、あんまり納得してない?
ボールドウィン 「ハングリー精神」がなんだかわかってないんじゃない?
兼行 おなかすいてるって意味かと思った。
頓知気 おなかもすいてるんですよ(笑)。
ボールドウィン いつも何か食べてる。
頓知気 若さがみなぎっていていいなと思います。あと垢抜けるスピードも速くて、リモートになってからは収録のたびに化粧が違うんです。「あ、凜ちゃんまたアイラインの引き方新しくしてる」って。
兼行 青春高校に入る前は全然化粧をしていなかったので、下地とかファンデーションとか知らなくて、最初はすっぴんで番組に出てたんです。この1年でいろいろ学んだし、みんなに追い付きたいと思って、リモートになったのを機に研究するようになりました。
青春高校という“塊”が面白い
──そうやってリモートで新たなポテンシャルを発揮する人もいれば、逆に自分を出せなくて悩んでいる人もいるのかなと。そのあたりについて三宅さんはどう見てます?
三宅優樹(演出) 夕方の帯で放送していたときは毎日収録があったので、この子たちは自分で考える間もなく「これやってね」と言われたことをこなすだけだったんです。それが2週間に1回という収録ペースになった今、間にできた時間でものすごく努力をする子が現れた。例えば桃山あすか(日比野が扮する過剰なぶりっ子キャラ)とかって、ポンと出たキャラだけでやっているように見えますけど、実は陰でものすごく努力してるんです。MCにどう振られたらどう返すかっていうのを2週間ひたすら悩み続けて、マネージャーさんとかにも相談して、それが終わったあとで「三宅さん、どうしたらいいですか?」って来る。で、収録前日にリハーサルするんですよ。僕が日村さん(バナナマンの日村勇紀。三四郎と共に「青春高校3年C組」の“担任”を務めている)役をやって、やりとりをひと通りシミュレートしてから収録に臨んでるんです。これまでの2年間も努力しない子ではなかったですけど、ここまでではなかった。なぜ姿勢が変わったかというと……これ、どんどん暴露しちゃっていい?
日比野 嫌です!
三宅 (無視して)この子にとってはドラマが大きかったんです。
──4月から放送開始予定だった「あなた犯人じゃありません」(テレビ東京系)ですね。日比野さんが主演に抜擢されたもののコロナの影響で撮影が中断し、放送延期になってしまいました。
三宅 ドラマの主演を任されて、自分が中心になって青春高校を引っ張っていかなきゃならないプレッシャーもあった中で、全部がストップしちゃって。このハッピーガールが毎日泣いてたらしいんです。その中で「今がんばれるものは青春高校の収録しかない」と、分散していた力を改めてバラエティに100%注いだ結果、今までにない努力ができるようになった。
──なるほど。災い転じて、じゃないですけど。
三宅 日比野に限らず、番組がリモートになって「面白くなった」と言ってもらえることが増えた裏側には、確実に生徒の努力があります。がんばった子が正当に評価されるようになった。実は深夜枠へ移った際、夕方のときのように個人個人や個々の部活をフィーチャーするのではなく、「青春高校という“塊”が面白い」方向へシフトチェンジすることにしたんですね。結果的にリモートでMCの人たちが面白がってくれるような新たな一面も出てきましたし、僕らの目指す青春高校を打ち出せているんじゃないかと思っています。
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死んでた人がよみがえったみたいな