1969 RECORDS × yahyel|イメージを具現化するための音楽と映像の融合

特異な表現をできる人をキャスティングしたかった

──今回はなぜJanさんを起用したんですか?

池貝 常々言ってたよね。「僕らのMVにJanさんに出てもらいたい」って。

左から山田健人(VJ / yahyel)、Jan、池貝峻(Vo / yahyel)。

山田 うん。そして今回はJanくんしかいないなと思ってたくらい。僕らの映像制作って、それぞれのフェチっぽいところを話すところから始まることがほとんどで、「Once」のときは「女の子の顔をぐにょぐにょにしたい」、「Alone」のときは「人をボコボコにしてみたい」って話をしていたんです。今回は「自分の体から出てくるものをすべて裁ち落としたピュアな状態の人がいて、そのピュアな状態の人が分身していく映像を作りたい」と思っていて。ただ現実的に、日本のプロダクションで考えたときにそれをやってくれる俳優さんがなかなか見つからなくて。特異な表現はキャストの美しさを担保しないとギャグにもなりかねないという危惧もありましたし。容姿が整っていることが第一条件であり、かつ現場でコンセプトをきちんと理解できる人……つまり日本語への理解もある人。そういうことを考えていたら、Janくんが浮かんだんです。

Jan 誘われたときはどんな内容なのかは知らなかったんですが、yahyelの誘いならと思って引き受けました。2人の芸術哲学みたいなものについて、深く話し合ったことはなかったけど、作品やライブは素晴らしいし、血の通ったものを作る奴らだと思っていたので、誘われたことが本当にうれしかったですね。

やりたいことがアナログで表現できた作品

──今回衣装のスタイリングはGapのアイテムを使用してるんですよね。

山田 Janくんと“クローン”のスタイリングは、これまでにも僕らのライブやMVの衣装でお世話になっているスタイリストの服部昌孝さんにお願いしました。服部さんは僕らの私物をミックスしながらうまくスタイリングしてくれる人で、Gapさんのアイテムを使いながら僕らのイメージに近いものにしてくれて。ピュアのスタイリングはRemi Takenouchiさんが担当してくださってます。ピュアの衣装は特殊なものにしたかったので、しっかり採寸をして別注で作ってもらいました。

──撮影時のエピソードや映像からはわからない裏側などを教えていただけますか?

山田 Janくんが吐き出した爪がグツグツしているシーンがあるんですが、あのドロドロしたものはいちごジャムなんです。“廃墟の床”をイメージした鉄板を作って、それをコンロで温めてジャムをグツグツさせて撮影しました。そのあとに出てくるモコモコしているものは手なんですけど、廃墟の床のような板に穴を空けて、発泡ウレタンをかぶせて穴から手を出して撮影しているんです。その手が出てくる瞬間のネバネバしている感じはコンドームとローションを使っています。今回CGはほとんど使っていないんですが、発泡ウレタンの部分だけはちょっとB級映画感があったので、CGで処理をしました。

──今までのMVを観るとCGを多用するイメージだったので、アナログな撮影だと聞いて驚きました。

山田健人(VJ / yahyel)

池貝 やりたいことがアナログで表現できることだったというだけですね。「グニャグニャにしたい」「ボコボコにしたい」とかも言葉にするとめちゃくちゃですけど、本当にやりたいことで。でもそれは現実世界ではできないからCGという表現を使ってきたというだけ。今回表現したいと思った映像はアナログな手法を使ったほうがよりリアルな質感になったので、こういう撮影方法になりました。

山田 アナログな手法が多いこともあって、今回は特に入念に準備をして撮影に臨みました。ロケハン中にJanくんの一連の動きを僕が演じた“伝説のサンプル”があるぐらい(笑)。今回の作品については楽曲のほうで僕が求めていた展開を作ってもらったからには、絵力とか演出力でグローバルな次元なものにしたいという強いこだわりがあって。それをちゃんと実現できたかなと思っています。

音楽と映像は同じ魂で作られる

──池貝さんが歌詞を書く時点でMVのイメージも浮かんでいるんでしょうか?

池貝 まずは何か事象が起きていく様子を頭の中で描いて、それをどう歌詞にするのかを考えていくんです。僕が歌詞に使う比喩表現は「燃える」だったり「壊れる」だったり映像的な表現が多いので、それがそのまま映像として表現されることが多いです。

山田 ガイくんの歌詞は1行1行で絵が浮かぶものが多いよね。

Jan ちょっとスピリチュアルな話になるんですけど、僕はそもそも音楽と映像って同じ魂のものだと思っていて。ガイくんが歌っている声と、山田くんが俺に映像について説明してくれたときの声は同じ魂レベルで動いているんじゃないかなって。今回撮影に携わって、yahyelはビジュアルアーティストがいるバンドっていう類まれな個体だと改めて気付いて感動しました。なんか、山田くんが音楽を作って、ガイくんが映像も作ってるとも言えるのかなと思って。

山田 僕らは常にイメージを共有して映像と音楽を作っているから、そう言ってもらえるのはすごくうれしいですね。

1969 RECORDS
「1969 RECORDS」はデニムとレコードを取り扱うセレクトショップとして1969年に誕生したブランドの背景を体現すべく、2016年にGapが立ち上げた新プロジェクト。Gapが今注目するアーティストを起用し、「1969」をキーワードにこの企画のためにミュージックビデオを撮り下ろし、Gapのアイテムを着用したルックと共に公開していく。2年目となる今年はyonige、Tempalay、Maika Loubté、JJJ、yahyelの5組が参加する。
yahyel「Iron / Rude」
2017年8月2日発売 / BEAT RECORDS
yahyel「Iron / Rude」

[アナログ]
1782円 / BRA-18

Amazon.co.jp

SIDE A
  1. Iron
SIDE B
  1. Rude
Mount Kimbie「JAPAN TOUR 2017」
  • 2017年10月6日(金)大阪府 FANJ twice
    出演者 Mount Kimbie / yahyel
  • 2017年10月9日(月)東京都 WWW X
    出演者 Mount Kimbie / yahyel
yahyel(ヤイエル)
yahyel
2015年3月に池貝峻(Vo)、篠田ミル(Sampling)、杉本亘(Syn)の3名によって結成されたバンド。同年8月にライブ活動の本格化に伴って山田健人(VJ)、大井一彌(Dr)の2名を迎え、現体制となる。結成から1年と経たない2016年1月に老舗レコードショップRough Tradeを含む5カ所でのイギリスツアーを敢行。2月に7inchシングル「Fool / Midnight Run」、9月に500枚限定シングル「Once / The Flare」をリリースすると、いずれも発売と同時に品切れ店舗が続出した。同年7月に行われたMETAFIVEのワンマンライブのオープニングアクトに抜擢されたこともあり、音楽ファンから大きな話題を集める中、11月にアルバム「Flesh and Blood」をリリース。2017年は精力的にライブを行っており、Warpaintの来日公演をサポートしたほか、「FUJI ROCK FESTIVAL」のRED MARQUEEにも登場した。8月にアナログ盤「Iron / Rude」を発表。10月にはMount Kimbieの来日公演への出演を控える。
Jan(ヤン)
Jan
ミュージシャン、俳優、モデルとして活躍するアーティスト。現在はGREAT3、jan and naomi、自身のソロプロジェクトであるJan Urila Sasなどで音楽活動を展開している。