TELASA「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」|松本穂香インタビュー「刃牙さん、かわいい顔してるな」|岡山天音×神尾楓珠

岡山天音×神尾楓珠 対談ッッ!

ひたすら「刃牙」のことしか出てこない(神尾)

──強烈なタイトルですが、オファーを受けたときの印象は?

金田淳子「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」書影(河出書房新社)

岡山天音 タイトル見てこんなに「?」が浮かぶ作品もないですよね。脚本より先に企画書を読ませていただいて、徐々になるほど!となっていきました。

神尾楓珠 「刃牙」なのかな? 「刃牙」じゃない日常のことなのかな?みたいな(笑)。でも「刃牙」は格闘マンガとして知っていたので、BLとして読む発想にまず驚きました。

岡山 その人独自の視点や解釈を持ってして、まったく新しい価値を見出す作業っていいなと思いました。最初、タイトルだけ聞いたときは意味がわからなかったですが(笑)。

神尾 脚本を読んでも本当にひたすら「刃牙」のことしか出てこない(笑)。僕も最初はあまり知らなかったので、何を言ってるのか全然わからなかったんです。でも勉強していくうちに、いろいろな発見があって面白かったですね。

岡山 実在するフィクションが別の作品の主軸に組み込まれてるってレアな形式ですよね。ドラマではオリジナルの要素として、あかねさんの会社での人間模様がバランスよく追加されていて。非常にニッチな作品だと思うんですけど、「刃牙」に触れたことがない人もスムーズに入っていける作りになってる。知らない人に向けても丁寧に設計されたドラマ。面白い試みだなと思いました。

ドラマの相関図にマンガのキャラクターが1人いる(岡山)

──お二人が演じたキャラクターについても教えてください。岡山さんはあかねの職場の後輩・竹野航平、神尾さんはあかねの同級生・柴本大寿を演じられています。

岡山 竹野は特別、複雑なキャラクターではないです。けっこう大胆と言いますか、一方的にあかねさんにアプローチする男。

──脚本を読んでいて、竹野の行動には本当にヒヤヒヤさせられました。

岡山天音演じる竹野航平。

岡山 そうですよね。現実にいたらけっこうキツい……。でも魅力的なキャラクターにはしたかったので、監督とも観てる方が嫌悪感を示すような印象にはしたくないと最初に話しました。だから見た目は清潔感や服装のセンスを大事にして。外側でポイントを貯めて言動で減らして、ちょうどプラスマイナスゼロです(笑)。

──竹野の勘違いな言動がドラマの推進力になっている部分もありますね。あかねの好きな人は愚地克巳なのに、柴本と思い込んでいて。

岡山 主人公の好きな人が、実在しない2次元のキャラクターっていうのが変化球ですよね。竹野の気持ちはシンプルですが、ドラマの相関図にマンガのキャラクターが1人いるのが新鮮です(笑)。

──神尾さんは出演発表時のコメントで、柴本のことを「そんなに色のある役ではない」とおっしゃっていますね。

神尾楓珠演じる柴本大寿。

神尾 ほかの人たちに比べると、本当に普通に生きてきた男だと思います。ただ普通に生きていたら、学生時代のあかねにトラウマを植え付けてしまっていた人。それは別に嫌がらせでも、意図的でもないんですよね。

──あかねからは、BL愛をクラスメイトにさらした“天敵”として認識されています。

神尾 監督とは柴本の他人との距離の近さ、について話してました。あかねにトラウマを植え付けた覚えもないので、同級生と久々に会ったノリで仲良くしようとする(笑)。そういう無意識な距離の近さは意識しました。

ほのぼのした松本さんとのギャップ(岡山)

──松本さんとの共演はいかがでしたか?

「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」

神尾 松本さんはセリフがすごく多いんです。朝から夜まで出ずっぱりでも、セリフが飛ぶことはほぼない。あの量のセリフがちゃんと頭に入っているのは、本当に衝撃でした。

岡山 僕の場合、共演シーンは竹野がずっとしゃべってるので(笑)。完成作品を観てすごいと思ったのは、松本さん1人のシーン。あかねが「刃牙」を読みながらキャラクターのセリフを言ったり、脳内妄想でニュースキャスターや講師になったり。その声が毎回違くて、この引き出しの多さはなんなんだ!と驚きましたね。声のお芝居が本当にうまい。脚本に書かれてる難しい球を華麗に打ち返していました。

──神尾さんはまだご覧になってないですか?

神尾 僕はまだ観れていなくて……。楽しみになりました。

「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」

岡山 本当に痛快で楽しいと思います。コメディとして上質で、あかねさんの妄想の世界はかなり凝っている。普段のほのぼのした松本さんの空気とドラマでの表現力にギャップがあって、かっこよかったですね。

──現場で松本さんと「刃牙」の話はされたんでしょうか?

岡山 居酒屋のシーンは、3人でしゃべった記憶があります。ただ撮影当時「刃牙」を読み込んでいたわけではないので、盛り上がることはなかったです(笑)。

神尾 僕もアニメに触れただけだったので「刃牙」トークでは盛り上がることはなかったです(笑)。

岡山 実は撮影後に「グラップラー刃牙」からちゃんと読み返してるんですよね。仕事が終わったあとに、題材になった作品を読むってあんまりない(笑)。めちゃくちゃ意欲が湧いてきて、ものすごい大作に手を出してしまいました。

──ではいずれ最新の「バキ道」まで……?

岡山 そうですね、その頃にはまた新しいシリーズが出てそうですけど(笑)。

マンガ「刃牙」への入口(神尾)

──1話だけ拝見したんですが「刃牙」のマンガのコマが、これだけテレビに映る作品は今後も出てこないと思います。

「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」

神尾 「グラップラー刃牙」と「バキ」は僕よりも上の世代で青春時代に読んだ人が多いと思うんですが、ドラマを観ると懐かしい気持ちにもなりますよね。こんなシーンあったな!となるし、BLという新しい見方も知れる。

岡山 心の中で思わずツッコみながら読んでしまうマンガがあると思っていて。刃牙もその1つ。その楽しさをドラマ作品に落とし込んで昇華させた作品。あかねさんの視点は超個人的なものですが、BLや「刃牙」を知っている人には共感しながら楽しんでもらえる作品になっていると思います。

──また必ずしも「刃牙」を知らなくても、あかねさんの熱量に引っ張られるドラマですよね。

岡山 あかねさんがそもそも楽しそうだから、観てるこっちもハイテンションになって同調していくんですよね。

神尾 「刃牙」の魅力も詰まってますし、形式やキャラクターも単純に面白い。実際にあかねさんが熱く語っているシーンが早く観たいです。

「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」より、届いた「刃牙」シリーズ全巻を愛でるあかね。

岡山 僕、本郷奏多さんのYouTubeを観るのが好きなんですけど、奏多さんがめちゃくちゃ楽しそうにポケモンカードの開封とかしてて。ポケモンのことは全然詳しくないですけど、観ていて楽しいんですよね。あかねさんが「刃牙」を読んでるのを観るのと、ちょっと似た感覚(笑)。「刃牙」を知ってる人も知らない人もまったく違った種類の楽しみ方ができると思います。

神尾 シリーズの長さで敬遠してる方もいるかもしれないですけど、あかねのフィルターを通すことで「刃牙」にも入りやすくなると思います。

刃牙的一問一答ッッ! 挑戦者 岡山天音&神尾楓珠

お二人にとって闘いとは?

神尾 あんまり好きじゃないですね

岡山 僕もなるべく避けたいです(笑)

好きな格闘技は?

岡山 ボクシング。ドラマの撮影で始めて今も続けてます

神尾 空手。小学生のときに習っていて、今もやりたいです

闘い(撮影)の前に食べるものは?

神尾 コンビニのたまごサンド。毎回食べるわけじゃないですが

岡山 水。渇くとよくないんですよね

今、闘ってみたい(共演してみたい)役者は?

神尾 菅田将暉くん

岡山 ブラピです

もし実写版「刃牙」があるとしたら、演じたいキャラクターは?

神尾 範馬刃牙

岡山 範馬勇次郎

岡山天音(オカヤマアマネ)
1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009年に主演を務めたドラマ「中学生日記 シリーズ・転校生(1)〜少年は天の音を聴く〜」で俳優デビューを果たす。その後は映画、ドラマ、CMを中心に活躍。2017年公開「ポエトリーエンジェル」では第32回高崎映画祭の最優秀新進男優賞を獲得した。主な主演作は映画「王様になれ」「踊ってミタ」、ドラマ「I"s」「ヴィレヴァン!」など。2020年には「ワンダーウォール 劇場版」「青くて痛くて脆い」「おらおらでひとりいぐも」など8本の出演映画が公開された。
神尾楓珠(カミオフウジュ)
1999年1月21日生まれ、東京都出身。2015年にドラマ「母さん、俺は大丈夫」で俳優デビュー。主な出演作は「兄に愛されすぎて困ってます」「うちの執事が言うことには」「HiGH&LOW THE WORST」「私がモテてどうすんだ」、ドラマ「恋のツキ」「3年A組―今から皆さんは、人質です―」「左ききのエレン」「鈍色の箱の中で」など。2021年には「樹海村」「裏アカ」「彼女が好きなものは」が公開。2022年には主演作「20歳のソウル」が公開を控える。