「テッド ザ・シリーズ」神谷浩史×河西健吾インタビュー | 吹替版の魅力や“憎めない”テッドを語る

映画「テッド」の前日譚にあたる全8話のドラマ「テッド ザ・シリーズ」の日本語吹替版が、U-NEXTにて独占配信中。1990年代を舞台とする本作では、魂を宿した“口の悪いテディベア”のテッドが16歳のジョン・ベネットと一緒に高校に通い、10代の山あり谷ありを味わうさまが描かれる。

映画ナタリーでは日本語キャストであるテッド役の神谷浩史と、ジョン役の河西健吾にインタビューを実施。「ずっとしゃべっていたいな」と思えるほど“憎めない”キャラクターを演じ切った2人に、本作の見どころや吹替版ならではの魅力を語ってもらった。

取材・文 / 岡本大介撮影 / 小川遼

「テッド ザ・シリーズ」日本語キャスト予告公開中

「本当にテッドがいる!」と思いました(河西)

──ドラマ版は2013年に公開された映画「テッド」の前日譚という位置付けです。そもそも映画版にはどういう印象を抱いていましたか?

河西健吾 実は僕、映画の本編をがっつりと観たことはないんです。ドラマ版のジョンは35歳の“おじさん”ではなく16歳の“高校生”で、演じている役者さんも違うので。

神谷浩史 ドラマ版は映画の前日譚ではあっても、踏襲したものではないんですよね。

河西 そうなんです。なので映画は全体の雰囲気をつかむためにチラ見した程度ですね。それでも、くだらないことや下品なことを真正面からちゃんと描いた作品だということは伝わってきましたし、そこは今回のドラマにも共通して言えることなんじゃないかなと思います。

神谷 僕は映画の公開当時、リアルタイムで鑑賞していたんですが、「非常に上手な作品」という印象でした。純粋無垢な少年の願いに応える形で無二の親友がやって来るというのは、お話としては「ドラえもん」と通ずる部分があると思うんですが、おっさん化した時間軸を描いているのが新鮮で。これまでありそうでなかった世界観ですよね。しかも、テッドのようなぬいぐるみが動き回る実写作品って、それまでは特撮的な手法で撮影するしかなかったと思うんですけど、CG技術が進歩したおかげで絶妙なニュアンスに仕上がっていて、ビジュアル面も含めてよくできた作品だなと思います。

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

──テッドとジョンの掛け合いが大きな見どころです。実際に収録でご一緒してみた手応えはいかがでしたか?

河西 「本当にテッドがいる!」と思いました。小さい頃からずっと一緒にいる感じというか、唯一無二の相棒感があるんです。テッドとだったらなんだってやれる気がするし、ずっとしゃべっていたいなと思わせてくれる魅力がありますね。

神谷 僕も掛け合いはめちゃめちゃ楽しいです。河西くんはとにかく芝居がうまくて、キャラクターにドンピシャなんですよ! まあ、ジョンにそっくりと言われてうれしいかどうかはさておきですけど(笑)。海外ドラマの吹替って独特の雰囲気があって、なかなかマッチしにくい方もいるんですよ。僕がまさにそうなんですけど、河西くんは僕と同じ中・高音域でありながら、海外ドラマにすごくハマるんですよね。

河西 ありがとうございます! あまりハマっている自覚はないですけど。

神谷 でも、そうなんだよ。まず河西くんはリズム感が抜群によくて、それが海外ドラマのリズムに合うのかなって。あと声にちょっとした“闇”みたいなものがあって、それがとても輝いて聞こえるんですよ。ジョンはテッドや家族の前だと明るいですけど、学校には友達と呼べる存在がいない。だから「こう見えて、なんか問題あるんだろうな」って思わせてくれるというか。

河西 それはそうかもしれないですね。ジョンはテッドがいてくれたおかげでかなり救われているはず。もしテッドがいなかったら、わかりやすく暗い方向へと進んで、学校でももっと浮いていたのかなと思います。

左から神谷浩史、河西健吾。

左から神谷浩史、河西健吾。

僕が演じて成立するテッドでいいんだろうと解釈して(神谷)

──なるほど。それぞれがお芝居で意識されたところはありますか?

神谷 ドラマ版のテッドの声は、映画と同じくセス・マクファーレン監督が演じていて。言ってしまうと、完全におっさんの声なんです! 僕とは声質がまったく違うので、彼の声を完全に再現することはできないんですね。それでもあえて僕にテッド役を振ってくれたということは、僕が演じて成立するテッドでいいんだろうと解釈して、映画に登場した生まれたてのかわいい声と、おっさんになった声の中間をイメージして臨みました。そのうえで、特に下品なワードを言うときは原音に近いしゃがれたニュアンスを付け足している感覚です。

河西 テッドはめちゃめちゃなことも言う。でも憎めないんですよね(笑)。

神谷 「憎めない」というのは、スタッフさんから最初に言われたことです。テッドが本当に嫌なやつに聞こえると、もうその時点で観てくれないでしょうから。これはほかの作品にも言えることですけど、「完全に嫌われてください」というオーダーでない限り、いつも頭の片隅に“憎めない”キャラクターであることを意識しています。

神谷浩史

神谷浩史

──神谷さんならではのテッドを観るのが楽しみです。河西さんはオリジナルキャストであるマックス・バークホルダーの声質とピッタリで、かなり綿密に役を作り込まれているのでは?

河西 それがそうでもなくて、わりと感覚でやっているところが多いです。もちろん俳優さんの声質だったり、音の高低、リズムなどは一度自分の中に落とし込んではいるんですけど、ジョンの素というか、例えばオタクっぽいしゃべり方などは僕なりの感覚で演じている部分が多いと思います。

河西健吾

河西健吾

コメディに限っては絶対に吹替のほうがいい(神谷)

──下ネタや汚い言葉も頻繁に登場します。ほかの作品ではなかなか言わないワードも多いと思いますが、そのあたりはいかがですか?

河西 まあちょっとした下ネタなんかは男同士で雑談してたら言ったりもするじゃないですか。そういう意味では、下品なことを言いまくれるのは役者としてある種の快感かもしれません(笑)。

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

「テッド ザ・シリーズ」場面写真

神谷 この作品って、テッドやジョンだけが下品なわけじゃなくて、わりとみんなが変人なんですよね(笑)。とてもオープンな世界観なので「バカなことしゃべらされてるな」とは感じつつも、何周か回って面白くなってくる感じはあります。

──U-NEXTでは字幕版も公開されていますが、吹替版ならではの魅力はどんなところだと思いますか?

河西 僕は字幕も吹替もどちらも好きなんですけど、内容の伝わりやすさで言えばやっぱり吹替版だと思います。特に「テッド ザ・シリーズ」はセリフ量が多くてスピードも速いので、やっぱり一度は吹替で観ていただきたいですね。

左から神谷浩史、河西健吾。

左から神谷浩史、河西健吾。

テッドのぬいぐるみを愛でる神谷浩史(左)と河西健吾(右)。

テッドのぬいぐるみを愛でる神谷浩史(左)と河西健吾(右)。

神谷 僕は圧倒的に吹替が好きなんです。特に1980年代から1990年代前半にかけての吹替のお芝居は本当にすごくて、個人的に並々ならぬ思いがあるんですが、世間一般では昔から字幕派のほうが主流ですよね。だから僕はずっと「なんで?」って思ってます(笑)。もちろん作品によっては「これは字幕で観たほうがいいよね」というのも理解できるんですけど、ことコメディに限っては絶対に吹替のほうがいいと思うんですよ。中でも「テッド ザ・シリーズ」は100%吹替のほうが面白いという自負があります。字幕派の方からすれば邪道かもしれませんが、でも本当に面白いですから。