「探偵はBARにいる3」大泉洋インタビュー|4年ぶりに名コンビ復活!イラストコラム&レビューも

イラストコラム

探偵と高田の相棒関係に注目!

イラスト / 松崎りえこ

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レビュー

こだわりと気概あふれる待望の新作! “ヒロインの物語”と“東映らしさ”の融合

文 / 内田正樹

祝・「探偵BAR」IS BACK! 思えば記念すべきシリーズ第1作「探偵はBARにいる」が公開されたのは2011年9月、続編であり前作に当たる「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」の公開は2013年5月だった。

「探偵はBARにいる3」

つまり1作目と2作目の間はおよそ1年半だったことに対し、前作から今回の「探偵はBARにいる3」までは4年もの時間が空いたことになる。

理由の1つは、探偵を演じる大泉洋の「より面白い『探偵BAR』を」というシナリオに対する強いこだわりだったという。ブランクを恐れず、第1作から脚本を手がける古沢良太をはじめとする制作陣と綿密なやり取りを重ねた大泉の姿勢から、彼がこのシリーズに注いでいる並々ならぬ情熱のほどが汲み取れる。

「探偵はBARにいる3」

監督が橋本一から吉田照幸にバトンタッチしたのも驚きだった。本シリーズはこれまで脚本の古沢、音楽の池頼広ともども、「相棒」シリーズで知られるチームが手がけてきたのだが、ここでNHK連続テレビ小説「あまちゃん」「サラリーマンNEO 劇場版(笑)」「疾風ロンド」を手がけた吉田を起用したあたりにも、変化を恐れず新たな風を取り入れんとした制作陣の気概がうかがえる。

こうして完成を迎えた4年ぶりの「3」だが、まず探偵と高田(松田龍平)のコンビネーションはブランクなどみじんも感じさせない。ハードボイルドを背負ったセリフは控えめに、さらに少ない口数であうんの呼吸が成立していて、まるで物語の中でも(現実と同じ)4年の歳月が流れていたかのように熟成されている。もっとも2人の足となる“高田号”(※光岡自動車の初代ビュート)のオンボロ具合は熟成されすぎだけど(笑)。

「探偵はBARにいる3」

さらに今作は過去2作と比べて、より“人間ドラマ”にフォーカスが絞られている。そこで機能するのが北川景子演じるヒロイン・岬マリだ。背景に奥行きを持たせたヒロイン像が用意されたという点において、この「3」は“ヒロインの物語”と言ってもいい。

もしも“探偵”とか“ハードボイルド”といったワードで劇場に行こうか迷ってしまう女性客が存在するのならば、「いや大丈夫!」と背中を押したい。マリを好演した北川は試写を観て(自分で演じたにもかかわらず)号泣してしまったそうだ。むしろ今作はもっとも女性が楽しめる「探偵BAR」だと思う。

そもそも本シリーズは、テレビ企画部(当時)に所属していた東映の須藤泰司プロデューサーが立ち上げた企画であり、前述の通り「相棒」のスタッフで船出した。吉田もこれまでに2作の映画を監督しているがもとはNHKの出身である。

「探偵はBARにいる3」

さらに言うと本シリーズしかり、2018年5月公開の「孤狼の血」しかり、近年の東映は1960年代後半から1980年代に自社が持っていた“東映らしさ”という娯楽性への回帰を目指した“男っぽい”映画に着手している。

「孤狼の血」が「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」に代表される実録シリーズの延長線上にある作品だとすれば、アクションに笑いと人情味も擁した本シリーズはさしずめ「トラック野郎」シリーズやセントラル・アーツ作品群(「ビー・バップ・ハイスクール」「あぶない刑事」)のそれといったところか。

「探偵はBARにいる3」

テレビドラマ的な軽快なテンポと、男を震わせる古きよき娯楽映画の醍醐味という、かつての“東映らしさ”。そこに加味された女性も楽しめるヒロイン像。それが「探偵はBARにいる3」の魅力の大筋だ。もちろん願わくは過去2作を観てから臨んでほしいが、ぶっちゃけ今作から観てもほぼなんの問題もなく楽しめる。

あと、映画ナタリーの読者には釈迦に説法だと思うけど、今作のもう1つのファクターである相棒・高田の行方を見逃さないためにも、劇場ではエンドロールが終わるまで絶対に席を立たないように!

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キャラクター紹介

「探偵はBARにいる3」
2017年12月1日(金)より全国ロードショー
「探偵はBARにいる3」
ストーリー

「恋人の麗子が失踪した」。探偵は、高田の後輩からのありふれた女子大生失踪事件の依頼を引き受ける。調査に乗り出すと、麗子がモデル事務所に所属していたことが発覚。事務所のオーナー・岬マリに既視感を覚えた探偵は、周囲を嗅ぎ回っていたところその手下に襲われてしまう。やがてマリが裏社会で暗躍する北城グループの代表・仁也の愛人であること、そしてグループが殺人事件に関与している可能性が明らかになる。そんな中、探偵の頭によぎったのはある女との思い出。巨額の薬物取引と2つの殺人事件が交錯したとき、マリが探偵に“最後の依頼”を持ちかけて……。

スタッフ / キャスト

原作:東直己「ススキノ探偵」シリーズ(ハヤカワ文庫)
脚本:古沢良太
音楽:池頼広
監督:吉田照幸
出演:大泉洋、松田龍平、北川景子、前田敦子、鈴木砂羽、リリー・フランキーほか