地元の友達も「#たぬきのデンゴン」を知っていてびっくり
──実際にできあがった作品を観られたときはいかがでしたか?
山田 映像は、東急の「縁線図鑑」や「SALUS」などの関連サイト・雑誌のような温かくて優しい印象と重なる部分があり、東急線沿線やストーリーとマッチしていて素敵だなと感じました。内容は切ないところもあればキュンキュンするところもある純愛ラブストーリーですが、琴音ががんばってたぬきを描いている姿がかわいかったり、怜央とその部下である多摩川(演:吉澤要人 / 原因は自分にある。)のやり取りが面白かったりとくすっと笑える物語でもありました。
源河 ビジョンって音声が流れないのでどうしてもテロップと身ぶり手ぶりに頼ってしまうんですけど、自然な日常の1コマの感じが素敵だなと思いました。物語としては、短尺かつ2つの視点でストーリーを交差させるという複雑なことをしているのに、あれだけ素敵にまとめていたのはさすがだなと思いました。
──視聴者からの印象的だった声はありますか?
山田 東急線沿線を活用したオリジナルショートドラマってすごいよね、という声を多くいただきました。沿線を活用したオリジナルショートドラマはさまざまな調整や金銭面でハードルが高いですが、そこをすべてクリアして放映したことに同業界の方からも驚かれました。また、ほかのコンテンツホルダーさんからも「こういうことってできますか?」とTOQ IMMERSIVE OOH_MOVIEの次のコンテンツにつながるようなお声もいただけたので、すごくよかったです。あと地元の友達と仕事の話になったときに「#たぬきのデンゴン」のInstagramを見せたら、「これ観たことあるよ」と言われて盛り上がりました! 東急線ユーザーがターゲットではあるんですけど、私の地元の友達まで「#たぬきのデンゴン」を知っていたときはびっくりしましたし、SNSの力ってすごいなと思いましたね。
──それはSNSとTOQビジョンのどちらも本編にしたからこそですよね。あとはプロモーションにも工夫があって面白かったです!
木内 東急の街や駅の媒体を活用していきたいという思いはあったので、企画を進めながら、宣伝についても「通常とは違う取り組みをやりたいですよね」と源河さんと話していました。実際に伝言板を特別設置することや、主演の鈴木仁さんと恒松祐里さんによるオリジナルの構内アナウンスを流すことを提案したところ、各所調整をしていただけました。
源河 伝言板の設置にあたっては、駅の皆様に重さや大きさ、設置場所などの条件を確認して完全オーダーメイドで作っていただきました。
小林 特別設置した伝言板に毎日いっぱいコメントが寄せられたり、作品の聖地巡礼をしてくれている様子をSNSで見たりして、「#たぬきのデンゴン」が愛されていることを実感できたのはすごくよかったし、やりがいにもなりましたね。
冒頭2秒で心をつかみ、ちゃんと物語で見せる
──STUDIO sauce全体の話になりますが、「#たぬきのデンゴン」をはじめキャストの豪華さにいつも驚かされます。以前ショートドラマ業界の方に話を聞いたとき、ドラマや映画で活躍されている方をキャスティングするのはすごく難しいとおっしゃっていたのですが、STUDIO sauceではなぜ実現できるのでしょうか?
小林 数々の映画を作ってきたアスミック・エースさんの力は大きいですね。スマホで手軽に観られるショートドラマだけどクオリティは映画並のものを作る、という縦型ショートドラマの新しい試みに、興味を持ってチャレンジしてくださる方が多い印象です。出演者の方々も「一緒に作品を作っている」という感覚なのかなと感じています。
木内 第2弾「Toshio-free-Wi-Fi」で主演を務めた沢村一樹さんも、撮影しながら「こんなふうになるんだ!」と、初めての取り組みをすごく面白がってくださいました。
──縦型ショートに挑戦してみてわかった、難しさや面白さについても教えてください。
木内 常に試行錯誤しなければならないところが一番の大変さであり面白さかなと思います。ショートドラマって、基本はTikTokやYouTubeで受動的に観るもの。自分から選んで観にいく人もいますが、“そのつもりじゃなかった人にランダムに当たる”ということも起きる環境なので、2秒ないし1秒でお客さんをつなぎ止める必要があります。次の動画にスクロールさせないために、いかに冒頭でつかみやフックを作るか。通常のドラマや映画だとあまりない考え方のため、脚本段階や編集のときにも意識しています。あと、世に出てすぐ反響もわかるので、それを受けて「冒頭はこっちのほうがいいんじゃないか」といった最適解を模索できる。大変でしたが、そのスピード感ゆえに再生数を伸ばしていけたり、予期せぬものが急に跳ねたところから学んだり、そういったサイクルを作り手として楽しみながら取り組んでいます。
──2秒でスクロールさせない、を重要視しすぎると品のない動画になってしまいがちですが、それをまったく感じさせない作品でした。
木内 もちろん強い画やセリフは意識しつつ、「ちゃんと物語で見せたい」と考えていたからですかね。映画会社だからこそ“情緒”を大切にして、泣けるショートドラマを目指していました。
──ショートドラマの業界は可能性がまだまだ広がっていくと思うんですが、今後挑戦してみたいことをそれぞれ皆さんにお聞きしたいです。
源河 今回は映像を制作することが1つの目的でしたが、今後はそこも生かしつつ別の選択肢として映像を中心に据えたさらなる全体的なプロモーション施策ができればなと。あとは、東急(株)グループの新たなリソースの活用法発掘。伝言板の特別設置や検車区での撮影以外にもまだまだできることはあると思うので、皆様と協力しながら可能性をどんどん広げたいです。もっといろんなパートナーを巻き込んで大きなチームを作り、唯一無二の体験を生み出していきたいなと思っています。
山田 コンテンツを作るだけでなく、その世界観を生かしてクライアントの課題を解決するブランデッドコンテンツやインフォマーシャルのような企画商品も作りたいと思っています。そして、今回の作品で聖地巡礼をされる姿も見られたんですけど、田園調布駅だけじゃなくてもっとほかの駅やお店を使う企画にも挑戦したい。“訪問”だけではなく“購買”につなげて街を活性化させるところまでできたらいいなと。そんな大きな目標にも取り組んでいきたいと思っています。
小林 KDDIとしては、引き続き「スマートフォンライフを豊かにする」というテーマを軸にしつつ、映像コンテンツだけではなく、リアルとデジタルを融合させた“体験価値”を作れたら面白いなと思っています。スマホを使って、より広い層の方にそういった取り組みを知ってもらえるようなチャレンジをしていきたいです。
木内 東急さんのおかげもあり、普段関わっている事務所の方やクリエイターの方々から「ショートドラマとは思えないスケール感」と高く評価いただいて、「リアルの場を使った取り組みができるなんて思いもしなかった」と魅力を感じてもらえました。映画やドラマで活躍する方々の新しい表現の場としてSTUDIO sauceがあってもいいと思っていますし、STUDIO sauceの作品を起点に小説やイベントなどほかのコンテンツに広がったらいいなとも思っています。そんな企画ができないかなと水面下で動いていますし、今皆さんがやりたいと話されていたことを、映画会社のアスミック・エースとしてクリエイティブで実現できるようつなげていきたいです。






