映画ナタリー Power Push - 「シン・ゴジラ」配信記念特集

虚淵玄(ニトロプラス)、ゴジラの哲学を語る

1作目「ゴジラ」の悲劇性にしびれるような感動を覚えた

──ところでアニメーション版「GODZILLA」の脚本を執筆するにあたって、過去の「ゴジラ」シリーズは改めてチェックされましたか?

はい、かなりまとめて観直しました。僕は1972年生まれで、実は特撮映画の黄金期にはギリギリ間に合わなかった世代なんですよね。実際、幼い頃に観たきりの作品も多かったのでいろんな発見があって楽しかったです。

虚淵玄

──例えば、どういうところが新鮮でしたか?

なんだろう……特撮と映画の蜜月関係っていうのかな(笑)。かつての怪獣映画というのは、その時々の映像クリエイターが生み出した最高の工夫をぶつける場だったんですね。当時の熱気と輝きは、映像の端々から確かに伝わってくる。「ゴジラ」シリーズの旧作を観返す過程で、その時代を追体験できたのはよかったなと。ただ同時に、VFXとかCG技術がとんでもなく進化した今となっては、ある種アーカイブとして観ざるを得ない側面もあって。

──映像的には、どうしても時代性が目立ってしまうジャンルです。

これはもう宿命だと思うんです。「今ならこれ絶対アニメでやるだろう」という企画も、すべて怪獣映画として作っていたわけですからね。ただ、時代が経って映像が古びても作品の価値自体は損なわれないと僕は思います。例えば美術館で古い青磁の壷を目にして「耐久性が低い!」って批判する人はいないですよね(笑)。特撮もそれと似ていて、その時々の最新技術カタログとして想像力を膨らませれば、感動もするし観方も広がるんじゃないかと。

「ゴジラ(1954年)」より。

──では、数ある「ゴジラ」シリーズからあえて1本選ぶとしたら?

うーん……どれか1本だけ選ぶとなると、やっぱり1954年の第1作目になってしまいますね。最初に観たときには「え? ゴジラってこんなシリアスなお話だったの?」と深いショックを受けました。

──まさにゴジラではなく「ゴジラに壊される側の物語」ですね。

ええ、なんと言っても戦争が終わってまだ9年目ですから。きっと当時の観客にとって、核実験や放射能によってせっかく手にした日常がまたしても壊される恐怖はものすごくリアルだったと思うんです。しかも第2次世界大戦の記憶もまだ生々しい。科学技術がいかに戦争をエスカレートさせ、人間の死生観をも変えてしまうような惨事を引き起こすかも身に染みている。もしも再び戦争が起きたら、今度は人類まるごと死滅してしまうんじゃないか。そんな恐怖の中で登場したのが、1作目の「ゴジラ」だったと思うんですよね。でも、すごさはそこだけじゃない。

──どういうことでしょう?

あの映画の本当の恐怖は、ゴジラという怪物すら消滅させてしまう兵器を、人間は作ってしまえるのだという悪魔性にあると思うんですね。劇中、あらゆる生物を液状化する化学兵器「オキシジェン・デストロイヤー」を生み出した芹沢博士は、あまりの威力を恐れ、自らの手でそれを封印します。ところが彼は、その手段に頼ることでしか、原子爆弾の呪いであるゴジラを封じることができない。目の前にある脅威を克服するために、さらに新たな恐怖を生み出してしまう科学者の悲哀と葛藤。「ゴジラ」の核にあるのは明らかにこの悲劇性だと思います。少なくとも僕は、そこにしびれるような感動を覚えました。

アニメーション版「GODZILLA」も人間の哀しさが1つのテーマ

──そういう人間の悪魔性や悲劇性は、もしかして虚淵さんご自身の作風にもつながっていくものでしょうか?

はい。それがあるからこそ今回、アニメーション映画「GODZILLA」のお仕事を引き受けた部分もあります。アニメ版の脚本は、共鳴するであろうと思われるものだけを自分なりにかき集めて書かせてもらいました。

──その“共鳴するもの”とは、具体的になんですか?

人が生きていくうえで、“真にやるべきこと”と“今できること”とが完璧に噛み合うケースって、実はほとんどないと思うんですね。大抵の場合、人は答えも知らないまま何かを選択するしかない。例えばベストを尽くしたとしても、それが事態の解決に結び付くかどうかは、究極的には賭けでしかない。それでも何かやらずにはいられないのが、人間じゃないかなと。そういう哀しさみたいなものは、今度のアニメ版でも1つのテーマになってる気がします。

──そう考えると、1954年の初代「ゴジラ」と「シン・ゴジラ」、そして次のアニメーション版「GODZILLA」は、1本の太い線でつながっているのでは?

そう信じています。あくまでも自分の中では、という話ですけれど(笑)。

──では最後にアニメーション版「GODZILLA」の見どころを少しだけ教えていただけますか?

虚淵玄

具体的なことはまだお話しできないんですけど、「シン・ゴジラ」を作るにあたり庵野さんがおそらく削り落としたであろう要素を積極的に拾っていこうというのはありました。今の時代にリアリティある映像として成立させるには邪魔になってしまうような過去のゴジラシリーズの諸要素も、アニメーションなら拾い直せると思ったんです。あとは自分なりに「ゴジラ、かくあるべし」というエッセンスは突き詰めて書いたつもりです。

──ちなみに「ゴジラ」と「シン・ゴジラ」に共通するテーマ──ゴジラよりゴジラが踏み潰した側をしっかり描くという哲学は、アニメ版ではどのように継承されていますか?

どうでしょうね。それは、観てのお楽しみということで(笑)。ただやっぱり、怪獣映画は「どう乗り越えていくか」という部分に尽きると思うんですよね。超人的なヒーローが飛んできて助けてくれたりしない。人間が向かい合って、どうにか落とし前を付けていくしかないんだと。「ゴジラ」「シン・ゴジラ」に共通するその鉄則を踏まえた作りにはしているつもりです。

「シン・ゴジラ」2017年3月22日(水)配信開始

「シン・ゴジラ」

ストーリー

東京湾アクアトンネルを走行中の車輌が、突然の浸水に巻き込まれる原因不明の事故が発生。首相官邸では閣僚たちによる緊急会議が開かれ「原因は地震や海底火山」という意見が多数を占める中、内閣官房副長官・矢口蘭堂だけが海中に棲む巨大生物による可能性を指摘する。その直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。政府関係者が情報収集に追われる中、謎の巨大生物は船舶や橋梁を破壊しながら、呑川を遡上していく。環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミは、上陸の可能性を指摘するが、官邸側は記者会見を開きそれを否定。だがそのとき、巨大生物は蒲田に上陸し、建造物を次々と破壊しながら街を進んでいた。この事態を受けて、政府は緊急対策本部を設置し自衛隊に防衛出動命令を発動。米国国務省からは女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンが派遣される。

スタッフ

総監督・脚本:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣

キャスト

長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭ほか

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虚淵玄(ウロブチゲン)

1972年12月20日生まれ、東京都出身。ニトロプラス所属のシナリオライター、小説家。PCゲーム「Phantom PHANTOM OF INFERNO」で企画、シナリオ、ディレクションを務めデビュー。小説「Fate/Zero」、アニメ「ブラスレイター」(シリーズ構成・脚本)、「魔法少女まどか☆マギカ」(シリーズ構成・脚本)、「楽園追放 -Expelled from Paradise-」(脚本)、「PSYCHO-PASS サイコパス」(脚本)、特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」(脚本)など代表作多数。ストーリー原案と脚本を手がけたアニメーション映画「GODZILLA」が2017年に公開される。