三田誠・東冬「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」 PR

「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」|頼りない少年から選ばれしロードへ 三田誠と虚淵玄は語る、その男の歴史を 「……ウェイバー、お前はオタクの鑑だよ!」

東冬によるコミカライズがヤングエース(KADOKAWA)にて展開され、7月からはTVアニメの放送開始も決定している「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」。ゲーム「Fate/Grand Order」でのコラボイベントも発表と、注目度急上昇のタイミングで三田誠による原作小説の文庫化がスタートした。

これを記念してコミックナタリーでは原作者・三田誠と、若き日のロード・エルメロイⅡ世ことウェイバー・ベルベットを「Fate/Zero」で執筆した虚淵玄による対談を実施。小説、マンガの見どころをはじめ「他人がいくら設定を詰め込んでも壊れないおもちゃ箱」と評するTYPE-MOON世界への思い、2人の奈須きのことの出会いなどを聞いた。

取材・文 / 三木美波

これだけは知っておきたい!「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」Part I.

文庫版のロード・エルメロイⅡ世。
Q.ロード・エルメロイⅡ世って誰?
ロンドンにある魔術師たちの学舎・時計塔の名物講師。本名はウェイバー・ベルベット。19歳のとき、「Fate/Zero」で描かれた第四次聖杯戦争にライダーのマスターとして参加した。「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」の第1作「剥離城アドラ」での初登場時は28歳。
Q.ロードってどういう意味?
時計塔には12の学部が存在し、それぞれの学部長が「君主(ロード)」と呼ばれる。ロード・エルメロイⅡ世は現代魔術科のロード。
Q.なぜ“Ⅱ世”なの?
先代のロード・エルメロイは、ウェイバーの師匠であり、第四次聖杯戦争にランサーのマスターとして参戦したケイネス・エルメロイ・アーチボルト。ウェイバーは戦死した先代から君主の座を引き継いだ。
Q.ロード・エルメロイⅡ世は「Fate/Zero」以外の
「Fate」作品にも登場している?
2006年に発売されたTYPE-MOONの設定読本「Character Material」にて、「どの話であろうと、舞台がロンドンよりになるとちょこっと顔を出す」と書かれている通り、「プリズマ☆イリヤ」「Fate/Apocrypha」「Fate/stay night[Unlimited Blade Works]」など多くの「Fate」作品にちょこちょこ登場。また「Fate/Grand Order」では諸葛孔明〔エルメロイⅡ世〕として、キャスタークラスのサーヴァントで召喚された。

三田誠×虚淵玄対談

エルメロイⅡ世は「パタリロ」のバンコランの系譜

──「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」は原作小説を中心にコミカライズ、アニメと展開されています。ナタリーでそれらのニュース記事を出すと、エルメロイⅡ世の姿を見たファンから「カッコいい」とか「色気がある」とかのコメントが目立つんですよ。

TYPE-MOON BOOKS刊「case.剥離城アドラ」

三田誠 エルメロイⅡ世、雰囲気美形ですからね(笑)。文章の中で「美形」や「顔が整ってる」と書いたことはたぶんないんですけどね。「滑らかな指の形」とかは、ちょくちょく書いてるんですが。

虚淵玄 マンガ版のエルメロイⅡ世を見ると、長髪のちょっと渋い色男で色気がありますよ。バンコラン感というか。

三田 「パタリロ!」の(笑)。

虚淵 僕ら40代には、“長髪イケメンの文化”があるんですよね。清く正しい昭和のマンガのイケメンっぽさというのかな。「エリア88」のサキ・ヴァシュタールとか。

三田 「スケバン刑事」の神恭一郎とか。

虚淵 そうそう。でもなんでそのイケメン文化を踏襲しているのがエルメロイⅡ世なんだ!という思いはありますがね(笑)。

──ロード・エルメロイⅡ世ことウェイバー・ベルベットの育ての親である虚淵さんは、ウェイバーくんが美形というイメージをお持ちではない?

虚淵 かけらもなかったです。「Fate/Zero」の頃はうだつの上がらない若造というイメージで書いてました。

三田 アニメ版のウェイバーはずっと美少年でしたよ(笑)。

虚淵 小説を読んでファンの方がかわいいと思ってくださった結果、アニメとかの派生作品でどんどんかわいく描かれていって美形の属性が付いていったんだろうな。「案外ウェイバーは美少年だったのかも」と僕自身の記憶が改ざんされてる感じで、それはそれでいいんですよね。原点の小説のイメージが遵守されるべきだとは自分はまったく思ってないので。こうやってキャラクターは厚みが増していって、広がっていくんでしょう。

三田 菊地秀行のドクター・メフィストが、描く人によって顔がまったく異なるのと同じだと僕は思ってます。

虚淵 やっぱり小説のキャラクターって観念なんですよね。それをどう咀嚼するかというのは、読んだ人やメディアミックスした人の手に委ねられるところなので。ただエルメロイⅡ世は小洒落たファッションセンスまで色男感があって心憎い。誰のコーディネートだよ!という(笑)。家に帰ったら大戦略Tシャツのくせに!

三田 ははは(笑)。半分くらいライネスのコーディネートじゃないですかね? ファッションに関しては、(坂本)みねぢさんの貢献が大きいですね。僕からは「ロードなんだから当然オーダーメイドであろう」「イギリス紳士なんだからサヴィル・ロウ(注:ロンドン・メイフェアにある高級紳士服が立ち並ぶ通り)あたりで仕立ててもらってるだろう」というイメージをお伝えしています。みねぢさんはファッションにこだわりのある方のようで、毎巻ほぼすべてのキャラクターが新しい衣装で登場しているんですよ。

ウェイバー……お前はオタクの鑑だよ(虚淵)

──2014年末にTYPE-MOON BOOKS(注:TYPE-MOONオリジナルの書籍ブランド。一般の書店には流通していない)から1巻が発売された「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」も、いよいよ次の10巻で完結します。虚淵さんは1巻の解説でウェイバーと再会できた喜びを語っていましたが、今はどんなお気持ちですか?

「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」のコミカライズ1巻より。「Fate/Zero」に登場したマスターたちが描かれたシーン。一番下にいるボブカットの少年がウェイバー。

虚淵 いやー、もう田舎で孫の成長を見守るおばあちゃんの気持ちですよ。「こんなに立派になっちゃって!」みたいな。

三田 あはは(笑)、5年も続いて巻数も多くなりましたからね。

虚淵 ね。またね、僕が全然意図していなかったエルメロイⅡ世と生徒たちとの交流がいいんですよ。

──エルメロイⅡ世自身は平凡な魔術師ですが、時計塔の教室の1つである「エルメロイ教室」の名物教師ですし、新世代の才能を次々と開花させることにかけては傑物ですからね。

虚淵 そうそう、あのウェイバーが頼られる立場になって。でもいかんせん、若い頃の自分を省みると問題行動ばかりの生徒たちに強く言えない。

三田 自分が師匠であるケイネスの聖遺物を盗んで第四次聖杯戦争に参加しちゃったもんだから(笑)。

虚淵 三田さんには、僕が風呂敷だけ広げて放っておいたものを、すごくきれいに畳んでいってもらっている感謝と感動があります。ウェイバーは先生として大成することだけは「Character Material」で決まってたけど、実際に第四次聖杯戦争の後にどれだけの苦労をして、どれだけの勉強をして大成したかというビジョンは一切なかった。いやー、「お前いっぱい本読んだんだな」「魔術オタクの衝動を、ちゃんとプラスの方向に向けたんだな」っていう感動がありますね。ちゃんと知識を集めるだけじゃなく、系統立てて整理して考察して、それを踏まえて人に語れる。そのうえ、その話が魅力的。もう本当にオタクの鑑ですよ!

三田 あはははは(笑)。

虚淵 自分のカルデアの諸葛孔明(注:「FGO」のサーヴァント・諸葛孔明は、ロード・エルメロイⅡ世が依り代となっている)は、第二再臨なんですよ。偉くなったお前はやっぱりこれ(第二再臨)だ!って。ロード・エルメロイⅡ世なら人理を救ってくれるかもな!みたいな思いが湧いてくるわけです。

──第三再臨ではウェイバーくんの姿に若返りますからね。

虚淵 ウェイバーは英霊じゃないだろ!と。

三田 まあⅡ世にとって最も輝かしい主役だった時期は、イスカンダルと駆けたあのウェイバー時代だったからじゃないかなと思ってますが……(笑)。

──確かに、そうかもしれませんね。少し話は戻りますが、エルメロイ教室の中でお気に入りの生徒は誰ですか?

虚淵 生徒ではないですが、青春の葛藤をがっつり見せてくれるという点で、内弟子のグレイが愛おしいです。ほかの奴らはなんだかんだ言って、青春を一歩突破した場所で暴れている節があるんだよね。それは時計塔が魔術協会の学校で生徒はみんな魔術師なんだから当たり前だし、老成してて当然なんですが。でもグレイだけは青臭い青春を生きてるところが、なんというかかわいいんです。

文庫版のグレイ。

三田 グレイは企画のかなり初期にできたキャラクターです。「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」はエルメロイⅡ世が探偵役であり、グレイがすごく戦闘能力が高いワトソン役であるというポイントさえ掴めば、単行本の5巻くらいまではどの事件からでも読めるように書いています。

──5巻までというと、「剥離城アドラ」「双貌塔イゼルマ」「魔眼蒐集列車」の3つの事件ですね。確かにそれぞれ独立したストーリーです。

虚淵 僕はグレイの成長に一本芯が通ってるという点で、最初の「アドラ」から読んでほしいですけどね。

三田 グレイの考え方が少しずつ変わっていきますからね。「アドラ」のときは「あれこれあってエルメロイⅡ世の内弟子になった。でも魔術師ってなんだか胡散臭いな」くらいの気持ちだったのが、「イゼルマ」の途中からエルメロイⅡ世の核にあるものや、ライダーへの思いに触れて。

──どうしようもなく魔力が凡庸なのに、ライダーに与えられた使命のために高みを目指し続けるエルメロイⅡ世の思いを「尊い」と感じるようになっていく。

虚淵 グレイのそこが愛おしいですよね。

三田 作中でグレイの内面は語られることも多いから、そう思ってもらえるとうれしいです。逆にエルメロイⅡ世の内面はほぼほぼ語られないですが。

──エルメロイⅡ世に少し情けないところがあるのがグレイ視点からも垣間見えて、そこにちょっと在りし日のウェイバーくんを感じて「Zero」からのファンはうれしくなると思います。

虚淵 確かに、エルメロイⅡ世の根っこがヘタレなところは、女性ファンの心をくすぐるんじゃないでしょうか。

三田 根っこがヘタレ、というのは書くときに意識しますね。

虚淵 か弱い男だけど、でも芯は強いんだよね。

漫画:東冬、原作:三田誠/TYPE-MOON、キャラクター原案:坂本みねぢ、ネーム構成:TENGEN
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿①
発売中 / KADOKAWA
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漫画:東冬、原作:三田誠/TYPE-MOON、キャラクター原案:坂本みねぢ、ネーム構成:TENGEN
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿②
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漫画:東冬、原作:三田誠/TYPE-MOON、キャラクター原案:坂本みねぢ、ネーム構成:TENGEN
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿③
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魔術協会の総本山「時計塔」においてロードに叙されているエルメロイⅡ世は、義妹のライネスから依頼を受け「剥離城アドラ」の遺産相続に立ち会うことに。弟子のグレイを伴い訪れた城で、悲愴な事件が始まる。東冬によるコミカライズ。

著者:三田誠、イラスト:坂本みねぢ、原作:TYPE-MOON
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿1「case.剥離城アドラ」
発売中 / KADOKAWA
著者:三田誠、イラスト:坂本みねぢ、原作:TYPE-MOONロード・エルメロイⅡ世の事件簿1「case.剥離城アドラ」

小説 821円

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「Fate」シリーズに連なる“あの男”の物語が待望の文庫化!
時計塔においてロードに叙されているエルメロイⅡ世は、剥離城アドラの遺産相続に立ち会うため、弟子のグレイをともない城へと向かう。そこで待ち受けていたのは悲愴なる殺人事件だった……。

著者:三田誠、イラスト:坂本みねぢ、原作:TYPE-MOON
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿2「case.双貌塔イゼルマ(上)」
2019年5月24日発売 / KADOKAWA

小説 691円

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魔術における究極の美とは何か? 待望の文庫版第2弾!
双貌塔イゼルマに住まう至高の美を持つ黄金姫・白銀姫のお披露目に、エルメロイⅡ世の義妹であるライネスも参加することとなった。三大貴族、冠位の魔術師、魔術と美、幻想と陰謀とが交錯する第2幕開演。

三田誠(サンダマコト)
TVアニメ化された「レンタルマギカ」ほか「クロスレ×ガリア」など、ライトノベルの執筆を中心に活躍。近年では、TRPGのリプレイ形式創作物「レッドドラゴン」のフィクション・マスター、オリジナルマンガ「Bestia ベスティア」の原作、「魔法使いの嫁」のスピンオフマンガ「魔術師の青」の原作など、多岐にわたり活躍している。
虚淵玄(ウロブチゲン)
1972年12月20日生まれ、東京都出身。ニトロプラス所属のシナリオライター、小説家。PCゲーム「Phantom PHANTOM OF INFERNO」で企画、シナリオ、ディレクションを務めデビュー。小説「Fate/Zero」、アニメ「ブラスレイター」(シリーズ構成・脚本)、「魔法少女まどか☆マギカ」(シリーズ構成・脚本)、「楽園追放 -Expelled from Paradise-」(脚本)、「PSYCHO-PASS サイコパス」(脚本)、特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」(脚本)、アニメーション映画「GODZILLA」(ストーリー原案・脚本)など代表作多数。原案・脚本・総監修を務めている日台合同映像企画の布袋劇「Thunderbolt Fantasy Project」では、新作「Thunderbolt Fantasy 西幽玹歌」と第3期の制作が決定している。