“横浜流星の代表作”を作りたい!「線は、僕を描く」プロデューサー・北島直明が語る制作の舞台裏 (2/2)

清原さんなら表現できると確信した

──清原さんとは2018年公開の「ちはやふる -結び-」でもご一緒されていましたね。

清原さんは「ちはやふる」のときに、いい意味で“負けず嫌いな人”という印象を受けて、だからこそ広瀬すずさんや松岡茉優さんと芝居で対峙した中で、ものすごいインパクトを残してくれたんだと思います。それで「線は、僕を描く」のキャスティングを考えたときに、周りの大人たちからの期待に応えなければいけないというプレッシャーの中で、才能に恵まれながらもあらがうエネルギーを持っている千瑛を、清原さんなら表現できると確信したのでオファーしました。あと霜介と千瑛はライバルっぽくもあり、お互いを認め合っている同士でもあるので、そういう意味でも横浜さんと清原さんはぴったりなキャスティングでしたね。

清原果耶演じる篠田千瑛。

清原果耶演じる篠田千瑛。

──本作の横浜さん、清原さんのお芝居で、一番印象的だったシーンを教えていただけますか。

やはり一番印象的だったのは水墨画を描くシーンです。実際に水墨画を描かなければいけないので、彼らはクランクイン前から本当に一生懸命練習していました。千瑛が薔薇を描くシーンの撮影では、清原さんはカットがかかるたびに東雲先生に「今の大丈夫でしたか?」と確認していましたし、横浜さんは霜介が水墨画を下手くそに描く前半から、上達した後半までを見事に体現してくれました。

「線は、僕を描く」場面写真

「線は、僕を描く」場面写真

──短い期間で水墨画をマスターするだけでも難しいと思いますが、さらに“キャラクターの成長の変化を見せる”という高度なお芝居に横浜さんは挑戦されていたんですね。

かなり難易度の高い芝居だったと思います。しかも“水墨画の線は人を表す”と言われていて、横浜さんは“横浜流星自身”ではなく霜介として描いた線を芝居で表現しなければいけなかった。それを見事にやり遂げた彼は素晴らしいし、横浜さんも清原さんも期待以上の芝居を見せてくれたと思います。

横浜流星が“青山霜介”として描いた春蘭。

横浜流星が“青山霜介”として描いた春蘭。

座談会では、横浜流星の驚きのエピソードも

──北島さんのお話を伺って、改めて横浜さん、清原さん、江口さん、三浦さんといった豪華キャストの皆さんのお芝居をじっくりと見返したくなりました。

そんなときのためにBlu-rayとDVDがあるのでぜひ(笑)。横浜さん、江口さん、小泉監督の座談会など、3時間超えの特典映像も見応えがあるのでおすすめです。この座談会では、横浜流星の驚きのエピソードも語られているので、これからご覧になる方にも楽しみにしていただきたいですね。

三浦友和演じる篠田湖山。

三浦友和演じる篠田湖山。

「線は、僕を描く」場面写真

「線は、僕を描く」場面写真

映画の中に“日常が崩壊するシーン”を盛り込むこと

──話は変わりますが、北島さんが大きな影響を受けた映画プロデューサーはいらっしゃいますか?

尊敬するプロデューサーは「ハリー・ポッター」シリーズを手がけたデヴィッド・ハイマンです。「ハリー・ポッター」シリーズというゴリゴリのファンタジーのあとに「ゼロ・グラビティ」というリアリティにものすごくこだわった作品をプロデュースされたときは驚きましたね。ほかにも「パディントン」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などもプロデュースしていて、とにかく振り幅がすごいし、彼の仕事の仕方はとても勉強になるんです。実は僕自身も三池崇史監督や廣木隆一監督のような大御所から、福田雄一監督、入江悠監督、小泉徳宏監督、石井裕也監督といった年齢もタイプもバラバラな方々とご一緒させていただいていて、プロデュースした作品も幅広いんですよね。それはデヴィッド・ハイマンの影響を受けているからなのかもしれません。

──映画プロデューサーとして大切にしていることも教えていただけますか。

原作のある作品であっても、オリジナル脚本であっても「自分がお客さんだったらこういうのが観たい」と思える企画は考えますが、「僕がやりたい」という、ただの自己満足になってしまうような企画はやらないようにしています。なぜかというと、自分の頭の中にある妄想を企画として誰かに話したときに「それ、つまらないですよ」と言われたらダメージが大きいから(笑)。大前提として、映画はお客さんが楽しむために作られるものなので、自分の好みを反映する必要はないんです。それからもう1つ大事にしているのは、映画の中に“日常が崩壊するシーン”を盛り込むこと。具体的に言うと、「22年目の告白-私が殺人犯です-」の「初めまして、わたしが殺人犯です」というシーンや「ちはやふる」のオープニングで千早が屋上に駆け込むシーンですね。

横浜流星演じる青山霜介。

横浜流星演じる青山霜介。

──どちらも印象的ですよね。

かなりインパクトのあるシーンになっていると思います。「線は、僕を描く」だと冒頭の神社で行われた水墨画の展示会のシーンになるのですが、あそこでお客さんが“水墨画すごい!”と思わなかったら、この作品は破綻してしまうぐらい重要だという意識で作りました。物語の起点となる“日常が崩壊するシーン”があるのとないのとでは、映画の印象や感じ方がまったく変わるので、そこはこれからも大事にしていきたいですね。

プロフィール

北島直明(キタジマナオアキ)

日本テレビ所属の映画プロデューサー。映画「ちはやふる」シリーズや「キングダム」シリーズ、「22年目の告白-私が殺人犯です-」「藁の楯」「町田くんの世界」「新解釈・三國志」「ノイズ」「オオカミ少女と黒王子」などを手がけてきた。待機作に3月31日公開の「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」がある。