「るろうに剣心 最終章 The Beginning」|有村架純が語る 佐藤健から受け取った思い、あまりにも神秘的なヒロイン

ミステリアスに生きようとは思っていないんです

──ご自身としてはどのように巴という人物を作り上げましたか?

「るろうに剣心 最終章 The Beginning」より、雪代巴(左)と緋村剣心(右)。

原作やアニメをしっかり見て、巴がどういった経緯でこういう人物になったのか、物語として描かれる以前はどういう生き方をしてきたのかを想像しながら、許嫁の清里に対する思い、剣心に対する思い、そして弟である縁に対する思いを考えました。気持ちを作ってから、声色や所作など、外側の部分を整えていったんです。あとはやはり巴は心にダメージを受けている人間なので、ちょっとやつれて見えるように食事制限もしました。

──まさに巴はささやくような話し方で、普段の有村さんの発声方法とは大きく異なるように感じました。

アニメから情報を得て、少し寄せてみたところもあります。なるべくまばたきをしないように意識もしました。あとはとにかく、衣装とメイクを作り込んでいただいたのが大きかったです。青っぽい髪の入ったかつらをかぶって、眉毛もなくして、アイラインもすごくがっつり引いて……そういったことも巴というキャラクターを作るうえですごく助けになりました。

──佐藤健さんは有村さんについて、イベントで「巴くらいミステリアス。心の奥底で何を考えているのかがわからない、もっと知りたいと思わせるような方」と証言されていました(参照:「るろうに剣心」佐藤健と有村架純が現場を回想「夢の中のよう」「あまりにも美しい」)。巴も感情を表に出さない人物ですが、ご自身と似ている部分があるのでしょうか?

そうですね……いや……(じっくり考え込む)。

──現実離れしたオーラのあるキャラクターなので、なかなか共通点はないですかね……?

ない、ですね!(笑) そうなんです、現実離れしているんですよね! 完成版を観たとき、あまりにも神秘的すぎてこの世に存在しない人たちを観ているような感覚だったんですよ。ファンタジーともまた違うのですが、夢の中のような、言葉で言い表わせない不思議な世界観に仕上がっていて……。うん、巴はいるようでいない、いないようでいる、ちょっと神様のような雰囲気のある人なので、私とは似ていないですね(笑)。

有村架純

──ある目的を持って剣心に近付いている巴は、相手に思考を悟られないようにしている部分も大きいと思います。有村さんは感情を表に出さないようにしているというよりは、自分の気持ちを発信するのが苦手なタイプなのでしょうか。

うーん、自分ではミステリアスに生きようとは思っていないんです。たぶん自分自身のことを人に話したり、「私は今こう思っている」と伝えることに興味がないんですよね。そういう欲自体がないというか。もちろんすごく仲がいい友達には最近の出来事や悩みを話しますが、あんまりあけすけには話さないですね。

今まで観てきた剣心とまったく違う、寂しそうな佇まい

──佐藤健さんとの共演についても聞かせてください。佐藤さんとは2016年公開の「何者」や、声の出演をされた2019年公開作「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」でご一緒されていますね。

私が見てきた健さんの印象は、現場での言葉数は少ないですが、みんなが自然と付いて行く座長というか。本当にプロ意識が高くて、職人さんのようにコツコツと仕事をされる方だと思います。なおかつ自分がどうパフォーマンスしているか、すべて客観的に見えているので、とても聡明な方だなと感じました。「何者」のときは実はほとんどお話できなかったんですが、定期的にお仕事でお会いするうちに「たくさん考えているけど、意外と選ぶものはシンプルな方なのかな」と思うようになりました。

──佐藤さんにとって「るろうに剣心」は約10年間背負ってきたシリーズです。現場で佐藤さんの気合いを感じた部分はありましたか?

ありました! 健さんご自身から「剣心の役作りは巴から始まっているんだ」と伺いましたし、これは自分たちが本当に映像化したかったエピソードであり、個人的にも大好きなエピソードだともおっしゃっていたんです。健さんにとっては20代最後の現場だったそうで、そういった気持ちの入り方も感じました。10年もシリーズを続けていくって誰もができることじゃないですよね。10年同じ役を演じるということはもちろん、シリーズものとしてずっと人気を保つのは並大抵なことではないです。それをやり遂げていらっしゃるところもすごくリスペクトしています。

──佐藤さんは「The Final」と「The Beginning」の撮影の合間、わずか3週間で“人斬り”時代の剣心のビジュアルを作り上げたと聞いて驚きました。

食事制限などで体を絞ったそうで……それだけでなく目も違いましたよね! この「The Beginning」の現場でお会いしたら、今まで観客として観てきた剣心とはまったく違うのでびっくりしました。すごく寂しそうな佇まいで、孤独な空気があって。そういった役作りの面でもすごかったです。

──先ほどの大友監督とのエピソードでも感じたのですが、携わる方々の熱量が高いあまり、有村さんがこのシリーズへ参加するには相当なプレッシャーがあったのではないかと思います。有村さんはプレッシャーが大きいほどそれを糧にできるタイプなのでしょうか?

いや、私は臆病者なのでいつも怖さのほうが勝ってしまうんです! でも今回はこの方たちと一緒にがんばりたい、皆さんの思いと同じくらいの熱量で一緒に走り抜けたいと思えました。

有村架純

──そう思わせてくれるほど熱い現場だったということですね。

私は撮影期間の約1カ月半という短い間しか携わることはできなかったのですが、スタッフの方々と“二人三脚”、健さんとも二人三脚のような気持ちで、同じ熱を持って参加させていただいたつもりです。ぜひ「るろうに剣心」に携わる方々の熱い思いが、多くの人に届けばいいなと思っています。

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