なかなか肉体関係を結ばないっていうじらしがいい(辛酸)
──三角関係が見どころの1つということもあって、本作には胸キュンシーンが満載です。
辛酸 渤王と摘星が一緒に弓を射るシーンは壁ドンを超えてましたね。
よしひろ 調べたらあのシーンは本国でもキュンポイントだったらしいですよ。そりゃそうだよね!
辛酸 実生活ではなかなかできないですもんね。
よしひろ ないないない。まず弓持たない(笑)。
辛酸 あとなかなか肉体関係を結ばないっていうじらしがいいですよね。
よしひろ そうそう!
辛酸 でも相手が酔ったときにちょっと押し倒してみたり。
よしひろ 一緒に寝てても行為に及ばない。ちょっと! もう一声!みたいな(笑)。
辛酸 そこがいいですよね。エネルギーを小出しにする感じで、ドキドキ感が続いて。あとはお姫様抱っこが多かったり。雨の中倒れているところを助け起こされたり。とにかく助けてくれるシーンがすごく多い。
よしひろ 女子ファンタジーですよね。
──2人の男性から思われるリー・チン演じる馬摘星の印象はいかがですか?
よしひろ あそこまで美人だと嫉妬もしませんよね。
辛酸 摘星自身が女を出すタイプじゃないから嫉妬されにくいのかなって思いますね。お色気キャラじゃないから。
よしひろ それはありますね。変に男に甘えるタイプだったり、甘える顔がうまかったりしたらキェーーー!ってなる(笑)。
辛酸 女性として幸せすぎないところも嫉妬されない1つの理由ですよね。渤王が急にオラオラ夫に豹変したり、疾沖は女好きだったり。そこまで“モテ”を謳歌しすぎてない。適度につらそうなところが応援したいって思えますね。
よしひろ あんだけきれいだったら絶対蝶よ花よなのに、めちゃ苦労してますもんね。
辛酸 矢が刺さったり。生傷絶えないですもんね。
──守られるだけのヒロインじゃなく前線で戦っていますよね。
よしひろ 女性の皇帝を描いた「武則天-The Empress-」が人気を集めたり中国は価値観がアップデートされている国なので、女性は弱いものという昔の価値観で描くとクレームが来たりするかもしれないですよね。
──凜としたヒロインが好きな人には摘星が刺さるかもしれません。メインキャラクター3人以外でお気に入りの登場人物はいましたか?
よしひろ あたしは特にいなかったんですよね。このドラマに関しては3人のキャラ立ちがすごい。もうおなかいっぱい(笑)。
辛酸 シンプルな作りでいいですよね。
よしひろ だから入りやすかったのかもしない。これ以上キャラ萌え作られちゃっても、悶絶してしまう。目移りさせないでよ!って。
辛酸 3人のキャラが立っているのはもちろんなんですけど、最初はうざかった宝娜公主(ほうなこうしゅ)が途中で薬くれて感じがよくなって。
よしひろ あははははは(笑)。
──グオ・シューヤオ演じる耶律宝娜(やりつほうな)は、渤王に思いを寄せるわがままなお姫さまでした。
辛酸 宝娜公主は女を武器にしているキャラだからそうじゃない摘星との差が際立ってよかったです。あと、やっぱり渤王レベルのイケメンを目にしたら自分も宝娜公主みたいに空回りしちゃうだろうなというところで共感しました。
よしひろ 美しい男性が目の前にいるとキョドりますよね。
辛酸 そうなんですよね。ああいうふうな間違ったアプローチしちゃいますよね。だから自分の中の中学生女子が彼女に共感しちゃうんです。
BLじゃないけど萌えます! 三角関係があって、キャラ萌えがある(よしひろ)
──中国ドラマに触れてみようかなと思いつつ、きっかけがない方もいると思います。お二人はどんなときに新しいジャンルに手を出してみようというセンサーが働きますか?
よしひろ あたしの場合は手元にあるものを片っ端から観るんですが、アジアのドラマは最初に飛びついた人たちが盛り上げていて、そんなに面白いんだったら観てみようかなと思うことはあります。「2gether」なんかまさにそうやって広がっていきましたよね。
辛酸 好みが似てそうなファンのお薦めで観るっていうのはあるかもしれないですね。布教シートを作ってくれたり。
よしひろ 懇切丁寧に説明してくださるのでとても参考になります。アジアの作品はファンの熱量が重要ですよね。韓流も最初は熱量がある人たちがわーって盛り上がってくれたから今があるわけで。古くは香港明星にハマった人たちもそう。
──今中国ドラマはそんな盛り上がりが生まれていて、本格的なブームの到来を予感させています。そんな中、「狼殿下」で初めの一歩を踏み出す方も少なくないはずです。
よしひろ 「狼殿下」はBLドラマじゃないんですけど、BLにハマってらっしゃる方だったらハードル低めだと思いますよ。「歴史ものでしょっ……」て遠ざけていても、「2gether」とかフィリピンドラマの「ゲームボーイズ」が好きですっていう方はぜひ! もちろん「陳情令」をご覧になった方は観てほしいです。BLじゃないけど萌えます! 三角関係があって、キャラ萌えがある。あとは韓流ドラマ好きもスッと入れると思います。
──韓流ドラマのようなドラマティックな恋愛描写もありつつ、中国ドラマならではのものも楽しめますよね。
よしひろ そうそうそうそう! 新しいものを観たい方もいいと思います。
辛酸 韓流ドラマの目まぐるしい展開に比べてゆったりしていて、楽な気持ちで観られるかもしれないですね。
よしひろ 韓流ドラマだと1話で人が何人死んだの?みたいな(笑)。おなかいっぱい感ありますけど、それとは違いますよね。
辛酸 戦うシーンはありますけど。そんなに血飛沫が飛ばないですもんね。だから心が疲れている人にお薦めしたいです。
よしひろ 今日本人の8割ぐらいが疲れてます(笑)。
辛酸 大自然、ゆったりしたテンポ、イケメン。すべてが癒やしてくれる。現実の世界でどうでもいい男性に塩対応されていら立ってても、渤王や疾沖と比べたらどうでもよくなります。
よしひろ 虚構の世界に入れますよね。だってファンタジーだもん。全部が全部面白いなんてそんな嘘はつけない! でも5話ぐらいまで耐え抜くと面白い。ハマると思います!
「狼殿下‐Fate of Love‐」第1回特別公開中
プロフィール
辛酸なめ子(シンサンナメコ)
1974年8月29日、東京都生まれ。マンガ家・コラムニストとして雑誌、新聞、Webメディア、テレビなどで幅広く活躍し、独自の視点で幅広い層の支持を得ている。著書に「おしゃ修行」「辛酸なめ子の独断! 流行大全」「スピリチュアル系のトリセツ」「女子校礼讃」「無心セラピー」「新・人間関係のルール」、小説「ヌルラン」「電車のおじさん」など。
nameko (@godblessnameko) | Twitter
よしひろまさみち
映画ライター、フリー編集者。sweetやotona MUSEでカルチャーページの編集・執筆を手がけるほか、SPA!、ananなどで連載。日本テレビ系「スッキリ」の映画紹介コーナーにレギュラー出演している。
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マンガ家・雲田はるこインタビュー