ナムグン・ミンの神演技と鋼の肉体を堪能せよ!スパイアクション「黒い太陽~コードネーム:アムネシア~」を大川ぶくぶも鑑賞

韓国ドラマ「黒い太陽~コードネーム:アムネシア~」のDVDが8月3日より順次リリースされる。「ストーブリーグ」「昼と夜」などで知られるナムグン・ミンが、国家情報院のエリート要員ハン・ジヒョクを演じるスパイアクションだ。MBC開局60周年を記念する特別企画ドラマとして製作され、総製作費は150億ウォン(約15億円)が投じられた大作で、キム・ソンヨンが演出、パク・ソクホが脚本を担当。パク・ハソン、キム・ジウンらが共演した。

映画ナタリーでは、「黒い太陽~コードネーム:アムネシア~」を紐解くコラムを掲載している。“演技の神”と称されるナムグン・ミンの演技力、そして17kg増量したという肉体の説得力、先の読めないサスペンスとしての面白さ、アクションの迫力感など、数え切れない本作の魅力とは。

さらに「ポプテピピック」などで知られ、スパイマンガ「ミッソン インパッセボーゥ」の著者でもある大川ぶくぶによる描き下ろしのレビューマンガも掲載しているので、あわせて楽しんでほしい。

文 / 前田かおりイラスト / 大川ぶくぶ

新たなナムグン・ミンに注目!「黒い太陽」の魅力を紹介

これまでのナムグン・ミンとはギャップのある肉体……でもそれには理由がある

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

「黒い太陽~コードネーム:アムネシア~」で主演を務めるナムグン・ミン。韓国俳優の場合、徹底した役作りによって、「これって同一人物?」と見比べずにはいられないほど別人化していることがある。本作のナムグン・ミンもまさにそれだ。彼が演じるのは、鋭い洞察力と並外れた行動力を持ち、どんな危機も切り抜けてきたエリート要員ハン・ジヒョク。だが消息不明となり、第1話のオープニングでは密航船の中から髪とヒゲが伸び放題のボロボロの姿で発見。鬼のような形相で敵に向かうのだが、とにかく彼の体が凄すぎる! まるでマンガ“北斗の拳”のケンシロウのような逆三角形の上半身に、パキパキに割れた腹筋。ボディビルダー並みの姿に、端正な容姿のナムグン・ミンはどこへ行ったのと、彼のファンならば絶叫してしまいかねないかも。かく言う筆者も正直、ここまで鍛えずとも、もともとの細マッチョな体でも敏腕エージェント役ならやれるのではないかと思った。だが、とことん役作りするのが、“ゴッドグンミン(演技の神)”と称されるナムグン・ミンなのだ。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク(右)。

ナムグン・ミン演じるハン・ジヒョク(右)。

そもそも「リメンバー~記憶の彼方へ~」(2015年)の極悪非道な御曹司役でブレイクして以来、「キム課長とソ理事~Bravo! Your Life~」(2017年)のハチャメチャなお調子者をコミカルに演じ、「ストーブリーグ」(2019年)では冷静沈着なゼネラルマネージャー、そして近作の「昼と夜」(2021年)では連続殺人犯を追う型破りな刑事を演じるなど、シリアスからコメディ、サスペンスなどジャンルもキャラクターも問わず、作品ごとに見事に憑依し、確かな演技で見る者の心を揺さぶってきた。今回の「黒い太陽」で演じるハン・ジヒョクは国家情報院の最高のエージェント。「強靭な身体を持ち、野獣のようなフィジカルが必要だと考えた」というナムグン・ミンは当時43歳にして、17kgも増量して肉体改造。実際、劇中で彼演じるジヒョクは大挙して襲撃してくる敵に素手で立ち向かい、屈強な男たちにも当たり負けしない。ダークスーツに身を包んでいても、にじみ出てくるタフさ。何者にもひるまない正義を全身で体現し、巨悪に挑んでいく。序盤こそ違和感を覚えても、回を追ううちにこの体でなければならないことに納得するはずだ。また、彼は失った記憶の中に埋もれた真実をつかむため、かつての仲間ですら信じることができず、常に疑心暗鬼に囚われたジヒョクの孤独な心の内も演じてみせる。この作品でナムグン・ミンは、「ストーブリーグ」で2020年SBS演技大賞を受賞したのに続いて、本作で2021年MBC演技大賞を受賞するという快挙を達成。まさに役者として真価を発揮したと言っていい。

先の読めない展開、映画並みのスケール

サスペンスとしての面白さも一級だ。職務に復帰したジヒョクは自分を陥れた裏切り者を探ろうと奔走する一方で、次々と発生する事件も捜査する。その中で、自分が記憶を失った前後を知る人々の出現や、犯罪集団に闇組織、国家情報院内での権力闘争が絡み合い、次第に巨大な陰謀が露わになる。韓国だけでなく北朝鮮、中国とスケールが拡大し、現在と過去が行きつ戻りつしながら、真相に迫っていく。幾重にも張り巡らされていた伏線が緊張感を呼び、最後の最後まで目を離すことができない。その一方でハードなアクションも見ものだ。銃撃戦からカーチェイスまで、まるで映画を見ているようなド迫力にアドレナリンが全身をかけめぐる。世界を席巻する韓流ブームで注目される韓国ドラマのクオリティの高さに、総製作費150億ウォンという映画級のバジェットで作り上げた本格派スパイアクション。スピンオフを含めた全28回だが、第1回からの怒涛のような展開、鍛え上げられた体で繰り出すナムグン・ミンの本気のアクションに息を吞みながらグイグイとハマっていく。その感覚はマット・デイモンが記憶を失ったCIAエージェントを演じた映画「ボーン・アイデンティティー」や、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル」シリーズ、はたまた「007」シリーズに夢中になったことがあればわかるはず!

パク・ソハン演じるソ・スヨン。

パク・ソハン演じるソ・スヨン。

キム・ジウン演じるユ・ジェイ。

キム・ジウン演じるユ・ジェイ。

「賢い医師生活」のチョン・ムンソンも! 要注目のキャスト陣

また注目したいのは、孤高のスパイと化したナムグン・ミンと熾烈な演技合戦を繰り広げる豪華キャストの顔ぶれだ。「トンイ」や、日本のドラマ「昼顔」をリメイクした「平日午後3時の恋人たち」のパク・ハソンがジヒョクを敵視するエリート女性要員を演じ、謎めいた存在感でドラマを彩る。もう1人のヒロインには新星キム・ジウン。「ドクタープリズナー」でもナムグン・ミンと共演しており、本作では単独行動しがちなジヒョクに食らいつき、彼と共に国家を揺るがす事件に取り組むパートナー。恋の予感も匂わすがそういった要素は劇中ではわずか。ITが得意で、年下ながらもジヒョクをしっかりサポートする仕事ができるキャラクターという描き方のため、あくまでサスペンスがメインである作品のテイストには合っていて好感が持てる。韓国ドラマ好きならば、「サイコだけど大丈夫」など名脇役で知られるチャン・ヨンナムが国家情報院の女性幹部役で出演していることも見逃せない。驚きは「賢い医師生活」で気のいい医師ジェハクで人気のチョン・ムンソンが謎めいたブラック要員役で登場すること。上半身“脱いだら凄い”の細マッチョになり、怪演を見せる。さらに、「友へ・チング」「シンイー信義ー」や、近作「狼たちの墓標」などの映画で活躍する名優ユ・オソンが正体不明の人物として登場しているのは出色。クライマックスの彼の演技は圧巻だ。
この夏一番の注目作! 俳優として脂の乗ったナムグン・ミンの神演技、鋼のような体に魅了されつつ、圧倒的なスケールで描くスパイアクションにぜひともハマってほしい。一見の価値は絶対にあります!

スパイマンガ「ミッソン インパッセボーゥ」
著者・大川ぶくぶによるレビューが到着!

大川ぶくぶによる描き下ろしレビューマンガ

大川ぶくぶによる描き下ろしレビューマンガ

大川ぶくぶによる描き下ろしレビューマンガ

大川ぶくぶによる描き下ろしレビューマンガ

プロフィール

大川ぶくぶ(オオカワブクブ)

マンガ家。代表作に「ポプテピピック」「GOHOマフィア!梶田くん」など多数。2012年から2014年まで竹書房のWebマンガサイト・まんがライフWINにて、超人的な力を持つが奇行が目立つエージェントのレジェンドと、ルーキースパイ・メリモニーを描いたスパイマンガ「ミッソン インパッセボーゥ」を連載していた。2022年10月より「ポプテピピック TVアニメーション作品第二シリーズ」が放送される。またYouTubeチャンネル「宮っ子クソ中年少年」を運営しており、2022年6月にはVTuberとしてもデビューした。

「黒い太陽」の魅力が詰まった4本のスペシャルPVと第1話を公開中!