ツォン・シュンシー×リウ・ユーニン 美男スター共演!中国ドラマ「江湖英雄伝~HEROES~」をライタートークで紐解く (2/2)

ブロマンスとしてスリリング

小酒 「江湖英雄伝~HEROES~」にはブロマンスの要素もありますが、面白いと思ったのは王小石、白愁飛の2人ではなくそこに蘇夢枕を加えた三角関係なところ。3人は義兄弟の契りを結びますが、白愁飛は蘇夢枕のことをずっとライバル視してるじゃないですか。本当は王小石のことを独り占めしたいのかなと思って。島田さんはどう思いました?

島田 白愁飛は王小石のことが大好きですよね。同居生活のシーンが本当にかわいくて、何をやっても楽しい!みたいな、希望に満ちあふれている2人がほほえましかったです。ファンの人たちからも評判がいいそうで。女子には入れない雰囲気があって、なんとなく仲間外れになっちゃう温柔(おんじゅう)のイラつきもわかる(笑)。物語の後半で王小石と白愁飛の関係性が変わってから幸せだったときのことを思い返すと切なくなりました。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛(左)、ヤン・チャオユエ演じる温柔(中央)、ツォン・シュンシー演じる王小石(右)。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛(左)、ヤン・チャオユエ演じる温柔(中央)、ツォン・シュンシー演じる王小石(右)。

小酒 白愁飛は1人で世を渡ってきた人物で、師匠の教えや門派の伝統による道徳観、使命感を持っていない。だから、王小石に出会ってからは彼が人生における指標になる。彼は誰の目から見ても明らかに闇堕ちフラグが立っているんだけど、王小石がいる間は道を踏み外さない。でも、彼がいなくなった瞬間に逸れていってしまう。そこが悲しいんだけど、すごくエモいなと思いました。

──そんな2人の兄貴分として蘇夢枕がいます。

小酒 蘇夢枕は王小石、白愁飛の両方を好きなんだけど、ちゃんとそれぞれのよさを見ていて。自分のサブとして引っ張り上げるのは白愁飛だけど、信頼しているのは王小石。そういう微妙なバランスが成り立っているのもブロマンスとしてスリリングでした。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石(左)、バロン・チェン演じる蘇夢枕(中央)、リウ・ユーニン演じる白愁飛(右)。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石(左)、バロン・チェン演じる蘇夢枕(中央)、リウ・ユーニン演じる白愁飛(右)。

島田 蘇夢枕はいい上司ですよね。「三国志」って会社組織に例えられることがありますが、この作品もベンチャーのすごい社長のところに野心を持った若者たちが来た、みたいな。

小酒 確かに(笑)。蘇夢枕は英雄としてもすごいんですが、リーダーしても優秀なんだと思います。あとなんでも知ってますよね。「蘇夢枕は知ってたのか!」と視聴者もだまされる展開が多々あって。しかも病弱なのに最強という……パーフェクトなキャラクターですね!

「江湖英雄伝~HEROES~」より、モン・ズーイー演じる雷純。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、モン・ズーイー演じる雷純。

島田 そんな蘇夢枕がモン・ズーイー演じる雷純の前では甘々になるのも……。

小酒 そう、シャープでワイルドなカリスマリーダーが、彼女と2人きりになった瞬間に溺愛ダーリンに早変わり。絶対みんな好きになりますよ(笑)。

出会ったばかりなのにもう以心伝心

島田 先ほど悪役の葛藤の話をしましたが、やっぱり私は雷損が好きで。すごく悪い人なのかなと思いきや実はチャーミングで、家族を大事にしている。若い女の子に入れ込んでいると見せかけて、本当は亡くなった奥様を誰よりも愛していたりとか。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ヤン・トン演じる狄飛驚。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ヤン・トン演じる狄飛驚。

小酒 いい役でしたよね。六分半堂のキャラで言うとヤン・トン演じる狄飛驚(てきひきょう)も好きでした。首を痛めてるからずっとうつむいてるんですが、その佇まいが宝塚の舞台にもなった武侠ファンタジー人形劇「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」に出てくる美しい人形みたいな感じ(笑)。悪の組織の良心というか、ダークヒーローである狄飛驚の人間性が徐々に見えてくるのも面白かったです。

島田 私も首、ずっと心配でした(笑)。

小酒 ふふ。

島田 このドラマの中で女性に対する細やかさを持っているのが蘇夢枕と狄飛驚。そのほかのキャラが女性の変化に全然気付かないので、繊細な2人が愛おしく思えました。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、クリス・スン演じる方応看。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、クリス・スン演じる方応看。

小酒 クリス・スン演じる方応看(ほうおうかん)は清々しいまでに卑劣なイケメンでしたね。

島田 久しぶりにドラマでここまで悪い人を見ました(笑)。クリスが台本を読んで、このキャラをどう感じたのかも気になりますが、よくぞ引き受けた!という思いです。大チャレンジだったと感じます。

──王小石と温柔のカップルについてはいかがですか?

小酒 2人が理屈抜きで恋に落ちる運命のカップルというのがよかったです。王小石は、誰かのために抜いたとき相手と一生離れられなくなる相思(そうし)刀挽留(ばんりゅう)剣を持っていて、それを抜いた瞬間から温柔との恋は始まっている。そこで「えーなんで」とか頭で考える必要はないんだなと。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石(左)、ヤン・チャオユエ演じる温柔(右)。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石(左)、ヤン・チャオユエ演じる温柔(右)。

島田 私は、刀を抜いたことで好きにならないといけない……みたいな思い込みもあるのかなと思った(笑)。

小酒 そこは見る人によって感じ方が変わってきそうですね。そもそも王小石と白愁飛が義兄弟になるのもまったく理屈じゃなくて2人はすぐに心が通じ合う。最初に2人で敵と対峙するとき、屋根の上に立っている白愁飛と下にいる王小石がうなずき合うシーンがありますよね。出会ったばかりなのにもう以心伝心みたいな。

島田 蘇夢枕が2人について「一度会うだけで友になるのに十分」と話す場面もありますよね。

小酒 彼らが出会ったのも、王小石が温柔のために剣を抜いたのも、そのときはそれ以外に道がなかったので運命なんだと思って、私はそこにロマンを感じました。

「BANANA FISH」好きにお薦め

小酒 武侠ドラマって組織やキャラクターがいっぱい出てくるのでとっつきにくさがあると思うんですが、「江湖英雄伝~HEROES~」はそういう方にこそお薦めしたいなと。ストーリーも追いやすいし、用語も難しくない。

島田 私もそう思います。軽々しく手が出せないと思いがちだけど、ハラハラドキドキ、ときめきもある若者たちの成長記として観てもらえたら、あっという間に完走できると思います。

小酒 ブロマンス、恋愛、抗争、復讐ありで盛りだくさんですよね。同じく中国ドラマの「琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、風雲起こす~」とかが好きな人はハマるんじゃないかな。あと吉田秋生のマンガ「BANANA FISH」みたいな世界観やブロマンスが好きという人にもお薦めしたいです。

島田 温柔を演じたヤン・チャオユエのファンにも絶対に観てほしいです。気が強くて簡単に泣かないイメージのある彼女ですけど、この作品では涙するシーンがけっこうあって。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ヤン・チャオユエ演じる温柔。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ヤン・チャオユエ演じる温柔。

小酒 そのたびに強くなっていくタフな温柔がヤン・チャオユエらしくて魅力的でしたね。

島田 ですよね! このタイプのドラマって、女性キャラがどうしても薄まってしまう印象がありますが、今作では温柔の成長や葛藤がちゃんと掘り下げられているので、そこにも注目してほしいです。

「江湖英雄伝~HEROES~」第1回特別公開中

プロフィール

小酒真由子(コサカマユコ)

フリーライター。アジアから欧米までドラマについて執筆。「韓国TVドラマガイド」(双葉社)にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。編集協力・執筆のぴあMOOK「2023年 見るべき中国時代劇ドラマ」が3月10日発売予定。

島田亜希子(シマダアキコ)

ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「アジア俳優名鑑」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)などにも執筆している。