ブラジルドラマ「ゴッド・セイヴ・ザ・キング ~王冠をかけた愛~」が、9月4日からチャンネル銀河で日本初放送される。全80話で構成される本作は、大国モンテモルの王子アルフォンソと、隣国アルテナに住む平民女性アマリアが身分違いの恋に落ちる物語。愛・嫉妬・欲望が複雑に絡み合い、翻弄される2人の運命が描かれる。
映画ナタリーでは、イラストレーター・チヤキによるイラストコラムで、本作の魅力的な世界をご紹介。物語を深掘りする見どころコラムも掲載している。
なお、初回放送日である9月4日10時までの期間限定で、第1話がまるっと観られる「無料オンライン試写会」も実施中だ。「無料オンライン試写会」は、このページの下部から視聴が可能! ぜひ、チェックしよう。
イラスト / チヤキ文 / 前田かおり(コラム)
プロフィール
チヤキ
フリーランスのイラストレーター。女性や動物のイラストを中心に、グッズのイラストや似顔絵、マンガも手がける。
壮大なスケールで愛と戦いの物語を繰り広げていく
南米ブラジルで一大ブームを巻き起こしたドラマ「ゴッド・セイヴ・ザ・キング ~王冠をかけた愛~」が遂に日本に初お目見えする。
物語は、大国の王子が隣国の平民女性と身分違いの恋に落ちたことをきっかけに、長年友好関係を保ってきた2つの国に波乱が巻き起こるというもの。愛憎に嫉妬、裏切り、そして権力争いに翻弄される男女の運命を全80話にわたってエモーショナルに描く大河ドラマだ。
簡単にあらすじを紹介しよう……。
舞台は中世ヨーロッパを彷彿とさせる架空の世界カリア。その中でもモンテモル王国は豊富な鉄鉱石を有する強大な国だが、水不足が悩みの種だった。かたや、隣国のアルテナ王国は、水は豊富だが兵力は弱かった。両国の女王と国王は長年の友人で、持ちつ持たれつの間柄でこれからもその友好関係は続くと思われていた。しかしモンテモル王国の女王は高齢。世代交代も目前で、孫で王位継承者のアルフォンソ王子は祖母を安心させるために水源を探す旅に出る。
アルテナ王国も問題をはらんでいた。現在の王アウグストは賢明で慈悲深い人格者だったが、娘の王女カタリナは父親とは異なり、野心家だった。彼女の頭にはアルテナを強国にすることしか頭になく、父とは価値観の違いから衝突してばかり。のし上がるためなら、生まれながらの美貌を武器に意のままに男たちを利用する女性だった。
そんな2つの国の関係が、身分違いの恋によって大きく揺らいでいくことになる。
王族と隣国の平民女性という身分違いの恋を成就させるために、王位をあっさり捨ててアマリアと共に生きる道を選ぶアルフォンソ。その決断は一見、ロマンチックというか潔い……。だが、彼の代わりに王座についた弟のロドルフォは愚か者で、国に混乱をもたらすことに。一方、アルテナの王女カタリナは自分の野望実現のため、平民となったアルフォンソをアマリアから奪おうと企む……。
愛の成就か、野望の実現か!? 壮大なスケールで愛と戦いの物語を繰り広げていく本作。美しく神秘的な世界観といい、どことなく大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(以下、GOT)」を思い起こさせるところも。実際、「GOT」の成功を受けて制作されたと言われており、「GOT」っぽさを感じるところも多々。愛と憎しみ、富と権力、欲望をめぐる諍いに正義や裏切りが交錯する人間模様が描かれ、先読みのできないスリリングなストーリーが綴られる。また、女性の自立や強い生き様は現代に通じるものがあり、本国ブラジルで幅広い視聴者層に支持されて大ヒットを記録した。壮麗な美術やセット、美男美女揃いのキャストが身にまとう衣装も魅力的。さらに言えば、オープニングのタイトルロールもどことなく「GOT」風というのもご愛敬だ。ただし、「GOT」の呼び物の一つだった血なまぐさいバイオレンスや過激なセックスシーンなどはほとんどない。美男美女が織り成す、中国、韓国のロマンス史劇がお好きな人もきっとハマれるはずだ。
人生は自分で切り開く!物語を牽引する2人のヒロイン
タイトルこそ、「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」=国王万歳!だが、身分違いの恋から始まる愛と戦いの物語を牽引するのは、自分の人生は自分で切り開いていくという信念を持つ強い女性たちだ。まず注目したいのは、平民女性のアマリア。彼女には商人の父親のお眼鏡にかなったビルヒリオというリッチな婚約者がいるが、「一生添い遂げるのが、本当にこの人でいいのかしら?」という迷いがあった。そんな彼女が、突如現れたアルフォンソに惹かれてゆく。隣国の王子とは知らなかったが、彼こそは運命の人と思った彼女は、自分の信じる道を突き進もうとする。アルフォンソとの間には次々と試練が降りかかり、観ていてジリジリしてしまいそうだが、障害が多い方が恋は燃えるのは万国共通。封建的な社会の中でどうやって、自分の愛する人と共に歩く人生をつかみ取るか、現代に通じるものがあるだけに見ものだ。演じているのは、ブラジルを代表する人気女優のマリーナ・ルイ・バルボサ。女優業だけでなく、その美貌とスタイルの良さを生かしてファッションアイコンとしても活躍、Instagramのフォロワー数が4200万を超える世界有数のインフルエンサーとして知られている。
もう一人は、アルテナ王国の王女・カタリナ。野心家で、自分の欲しいものは手に入れないと気が済まない性分で、アルテナが強大でないことが歯がゆくてたまらない。娘の性格を見抜いている父アウグスト王は穏やかな趣味人の侯爵にカタリナを嫁がせようとするが、そんな親心は完全スルー。自分の美しい容姿を武器に群がってくる男たちを意のままに操り、自身の欲望も満足させる。計算高く策略家でもある彼女は、平民となったアルフォンソを我が物にしてモンテモル王国の王妃の座に就こうとあの手この手を仕掛けてくる。なかなかキョーレツなキャラクターだが、男たちが権力を握る世界で生き抜く強かさは見逃せない。
演じているのは、2023年8月に全米で公開されたDCコミック原作のラテン系ヒーロー映画「Blue Beetle(原題)」でヒロイン役に抜擢され、世界的にも注目を集めているブルーナ・マルケジーニ。ブラジル本国ではサッカー選手、ネイマールの元カノとしても知られ、美貌と演技力で人気を誇る国民的スターだ。
終盤に向かってアルフォンソを巡るアマリアとカタリナによる対立がエスカレートしてゆく。ラテン美人の2人の女優たちがどんな熱い演技を見せるのか、ますます目が離せなくなるだろう。
王子の本当の試練は王位を捨ててから
そんな女性たちとは対照的に、運命に翻弄されるのがモンテモルの王子アルフォンソ。王位継承者として幼い頃から帝王学を学び、聡明で誠実な人柄である彼は、民衆からの信頼も厚い。祖母である女王からも頼りにされ、自身も王になる自覚を持ち、水源を探す旅から帰ったら、退位する女王の後を継いで王位に就くはずだった。それが、アマリアと恋に落ちたことで、当たり前だった人生が一変する。アルフォンソの本当の意味での試練は、王位を捨ててから始まるのだ。平民になってもアマリアとの恋は波乱含み。アマリアの元カレのビルヒリオは未練が断ち切れず、アマリアの家族や親友まで巻き込んで彼女を取り戻そうと画策する。そしてカタリナにも恋路を邪魔され、ままならない展開。一方、モンテモル王国のことは王位を継いだ弟ロドルフォに任せたはずが、まさかの暴君と化し、王国は大混乱に陥っていく。最後まで先読みのできない展開にグイグイと引き込まれて行く。
演じているロムロ・エストレーラは、ブラジルの人気テレビドラマ「Bom Sucesso(原題)」などで活躍、甘いマスクで女性人気の高いイケメン俳優だ。
情熱の国ブラジルで熱狂の渦を巻き起こしたという大ヒットドラマ。観ればきっとあなたも夢中になるはず。