増元拓也×浅沼晋太郎、“誰一人まともじゃない”「フランク、アイルランドのダメ男。」 を語る (2/2)

細かすぎて伝わらないモノマネをしろって言われたらそこをやる(増元)

──そんなフランクもドゥーファスも、映画にはやたら詳しいという……。ドラマのあちらこちらに、映画愛を感じさせる描写が観られます。

浅沼 劇中で扱われる映画は全部観ています。「十二人の怒れる男」も、「ミザリー」も、もちろん「ホーム・アローン」も。

増元 初っ端から「メメント」を思わせる描写も出てきましたね。

浅沼 「ミザリー」に関しては、インスパイアされたコメディ舞台を作ったことがあるぐらい好きです。

増元 えー、そうなんですか!

浅沼 最終回の展開に悩んでいるマンガ家が温泉旅館で缶詰めになって執筆しようとしているときに、旅館の女将さんが現れて……という物語で(笑)。

増元 おおお、観てみたいです! あと、第3話ではケヴィン・コスナーがネタになっていましたよね。

浅沼 「ウォーターワールド」がいじられてた(笑)。あの映画の評価が海外でそこまで悪かったなんて、初めて知りました。だって、ユニバーサル・スタジオじゃド派手なアトラクションになってるじゃないですか。映画自体は学生の頃に観たきりですけど。

増元 ほかの作品に比べたらってことなんでしょうね。それまでが“ケヴィン・コスナー無双時代”だったから。「ボディガード」も大ヒットしましたし。

浅沼 僕は「アンタッチャブル」が一番好きです。

増元 僕もそうですね! このドラマで改めて扱ってほしいくらい。

浅沼 僕はもともと映画監督になりたくて東京に出てきた人間なので、映画についてのセリフがたくさん出てくるのが楽しくて楽しくて。第1話の「タクシードライバー」からしてもう……。

フランク役のブリアン・グリーソン。

フランク役のブリアン・グリーソン。

──ただ、彼らの好きなポイントが万人とはちょっと違うんですよね(笑)。

増元 印象的で深いセリフがたくさんある映画なのに、フランクと彼のお母さんはハーヴェイ・カイテルが売春婦の呼び込みをするシーンのセリフがお気に入りで。ものすごくひわいなセリフなんですよね。ろくでもない親子です(笑)。

浅沼 これがクエンティン・タランティーノの映画だったら、「あのときのジョディ・フォスターは……」なんてセリフになるんじゃないかなあ。

増元 僕、そのひわいなセリフを言わなきゃいけなかったから「タクシードライバー」を観返したんです。でも、日本語字幕はもっとマイルドになっていて。あそこまでひわいなことを連呼していたなんて、このドラマを通して初めて知りました(笑)。

浅沼 いますもんね、“そこ!?”っていうポイントが好きな人。

増元 確かに、僕も「タクシードライバー」だったら、好きだった女性と再会するシーンのトラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)が好きです。見送ったあと、バックミラー越しにちらちら見て振り返るのがかっこ悪くていいんですよね。細かすぎて伝わらないモノマネをしろって言われたらそこをやると思う(笑)。

浅沼 あははは! 僕は、映画の中で映画を語るシーンが大好きなんです。タランティーノもよくやるし、「スクリーム」や「デッドプール」にもそういうシーンがあるじゃないですか。ダメな映画をいじるシーン。

増元 悪口になっているものも多いんですけど、そういうのってなぜかリスペクトが感じられますよね。

浅沼 このドラマのケヴィン・コスナーに関しても、コケた映画について触れてはいるけど、そこに愛を感じる。ジョークにしてしまう欧米のスタイルが素敵だなって思います。

増元 それも含め、その人の尊敬すべきキャリアだってことですよね。

──じゃあ、ケヴィン・コスナーがこのドラマを観たら……。

浅沼 どうなんだろう? 「ケヴィン・コスナーさん、『ウォーターワールド』を茶化してもいいですか?」なんて許可は絶対に取っていないだろうし(笑)。でも、ケヴィン・コスナーは受け入れてくれる気がする。「でも、ほかは最高の作品ばかりだろう?」ぐらい余裕で言い放ちそう。

左からドゥーファス役のドーナル・グリーソン、フランク役のブリアン・グリーソン。

左からドゥーファス役のドーナル・グリーソン、フランク役のブリアン・グリーソン。

“ここが好き”は僕にもありますね(浅沼)

──ちなみに、フランクたちにとっての「タクシードライバー」みたいに、“あまり理解されないけどここが好き”という映画はありますか?

増元 うーん……。普通に大好きな映画は「ダイ・ハード」なんですけど。

浅沼 いいですねー!

増元 エンタメが詰まっていて、すべてのシーンが大好きです。

浅沼 僕も大好きな1本ですね。あっ、「ダイ・ハード」で思い出した。悪役がビルから落とされるシーンがあるじゃないですか。あそこはスタントコーディネーターが「3、2、1、Goで手を離すからね」と言っておいて、実際は「1」で落としたんだそうです(笑)。

増元 ああー! じゃあ、あのシーンのアラン・リックマンは本当にびっくりしているんですね!

浅沼 あと、ビルから人質が逃げるシーンがあるんですけど、その1人の頭にビルのでっかい破片がポコーンと当たるカットがあって。

増元 なんですか、それ!(笑)

浅沼 おじさんの頭に、ポコーンと。本物だったら死にますから、発泡スチロールかなんかなんでしょうけどね(笑)。

増元 うわー、観返してみます!

浅沼 ……みたいな、メイキングや裏バナシ的な“ここが好き”は、いっぱいあります(笑)。

左からフランク役のブリアン・グリーソン、オーニャ役のセーラ・グリーン。

左からフランク役のブリアン・グリーソン、オーニャ役のセーラ・グリーン。

──ちょっと失礼かもしれませんが、フランクたちと話が合いそうな……。

浅沼 いや、そこは距離を取りたいです(笑)。

──ですよね(笑)。話は尽きませんが、そろそろ、最後にメッセージをお願いします。

増元 いい大人たちが思いきりふざけ合って企画されたであろうドラマなので、ご覧になる方も構えずに観ていただきたいです。アイルランドの風光明媚な土地が育んだ人たちが、こんなことをやるんだなって(笑)。その製作背景も含め、楽しんでもらえたらいいですね。

浅沼 「コンプラ」という言葉が浸透した世の中で、コメディに元気がなくなったと感じている人にこそ観てほしいです。こんなにもバカバカしいものを作ろうという名優たちがいることを知ってほしい(笑)。観てもらえさえすれば、元気があるときはより元気に、元気がないときにはちょっとだけマシになるような作品です。

「フランク、アイルランドのダメ男。」場面写真

「フランク、アイルランドのダメ男。」場面写真

「フランク、アイルランドのダメ男。」は、Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX」で独占配信中

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プロフィール

増元拓也(マスモトタクヤ)

3月19日生まれ、広島県出身。海外の映画、ドラマ、アニメの吹替版や日本のアニメに多数出演している。主な出演作にはスターチャンネルEX独占「80日間世界一周」(パスパルトゥー役)、映画「マリッジ・ストーリー」(チャーリー役)、ゲーム「APEX LEGENDS」(クリプト役)、スマートフォンゲームアプリ「アイドルマスター SideM」(信玄誠司役)などがある。

浅沼晋太郎(アサヌマシンタロウ)

1976年1月5日生まれ、岩手県出身。脚本家・演出家・俳優・コピーライター・声優として活動する。主な出演作は、「あんさんぶるスターズ!!」(月永レオ役)、「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」(碧棺左馬刻役)、「ピーターラビット」シリーズ(トーマス・マグレガー役)など。2007年に加入したエンタテインメントユニット・bpmでは、脚本・演出を担当している。