山崎貴が語る「バンブルビー」 | CGは優秀な助演俳優、スピルバーグのテイストが濃厚な人間ドラマ

「トランスフォーマー」シリーズ最新作「バンブルビー」が、3月22日に公開される。

1980年代が舞台の本作は、オプティマス・プライムの右腕として活躍してきたバンブルビーと、心に傷を抱えた少女チャーリーの冒険を描く物語。14歳のときに映画初出演作「トゥルー・グリット」で第83回アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたヘイリー・スタインフェルドがチャーリーを演じた。

映画ナタリーでは、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「STAND BY ME ドラえもん」など多くのヒット作を手がけた映画監督・山崎貴に本作を鑑賞してもらった。本作の監督トラヴィス・ナイトが手がけた「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を大絶賛しており、製作総指揮に名を連ねるスティーヴン・スピルバーグの作品に強く影響を受けたことを公言している山崎。彼が「バンブルビー」に見出したスピルバーグのテイストとは? また、「トランスフォーマー」シリーズ1作目から本作までのCGの進化についても語ってもらった。

取材・文 / 斉藤博昭(P1、2)、秋葉萌実(P2) 撮影 / 小坂茂雄

物語重視の1作目の世界に戻ってきた

──この「バンブルビー」は、「トランスフォーマー」シリーズの新たなスタートです。これまでの作品と比べて、どんな印象でしたか?

「バンブルビー」

「トランスフォーマー」シリーズは、ほぼ観ていました。その流れで観ると、この「バンブルビー」は、物語を重視したシリーズ1作目の世界に戻ってきた気がします。出会いと別れ、異種間の友情など青春映画の要素もうまく絡んでいましたね。このあたりは、製作総指揮に入っているスティーヴン・スピルバーグのテイストが濃厚だと感じます。主人公の父親の“不在”という点も「E.T.」を思い出しました。

──「トランスフォーマー」の1作目は男性が主人公でしたが、今回は女性が主人公です。

脚本家(クリスティーナ・ホドソン)も女性なので、女子目線で描かれる部分がけっこうリアルでしたね。そもそもシリーズではアイドル的存在だったバンブルビーが、今回はフォルクスワーゲンのビートルに変身するので、曲線を意識して丸みを帯びたデザインになったりして、さらにキュートさが強調されて登場します。これまでの「トランスフォーマー」シリーズに比べ、男女問わず楽しめる作りではないでしょうか。

──スピルバーグの話が出ましたが、山崎監督の“原点”はスピルバーグだそうですね。

自分のお小遣いで劇場に行き始めた中学2年生の頃、出会ったのが「未知との遭遇」でした。映画館から家に帰ってくるやいなや、いかにすごい作品だったかを親に話し続けたのを覚えています。4時間くらい話が止まらず、親は迷惑そうでしたが(笑)。その「未知との遭遇」と「スター・ウォーズ」が、僕がこの仕事を目指した“二大原点”であり、当時受けたショックを胸に抱えたまま、ここまでキャリアを続けた感じです。

──映画監督になってからも、スピルバーグを意識して作品を撮っているのでしょうか。

意識的ではないですが、作品の重要なポイントになると、少年時代に受けた感覚を入れ込んでいる気がします。特に最初の2作、「ジュブナイル」と「Returner(リターナー)」はスピルバーグの影響下にある作品かもしれません。「ジュブナイル」は「E.T.」のように子供たちが自分と違う存在(ロボット)と出会い、友情が芽生える。大事件に巻き込まれて、そこから日常に戻ってくる流れはスピルバーグ的ですよね。

──「バンブルビー」のトラヴィス・ナイト監督も、スピルバーグのDNAを受け継いでいるように感じますか?

山崎貴

トラヴィス・ナイト監督は前作の「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」も大好きでした。「KUBO」はストップモーションのアニメも素晴らしかったですが、ユーモアとシリアスさのバランスが見事だと感じたのです。今回の「バンブルビー」もそのバランスが非常に的確で、そのあたりはスピルバーグに近いと感じます。深刻な場面に笑いを挟み込んできたり、逆にユーモアからシリアスへ変換させたりして、「トランスフォーマー」の1作目に近い感覚ですよね。キャストの若さや、学校での上下関係なんかも、スピルバーグが深く関わったという1作目に似ています。「バンブルビー」は背景も1980年代だし、その時代のスピルバーグ作品とも重ねられました。けっこう今回も、スピルバーグ自身が積極的に関わったんじゃないでしょうか。

──スピルバーグを介して、山崎監督の「ジュブナイル」とナイト監督の「バンブルビー」がリンクしている感じですね。

「ジュブナイル」のテトラとバンブルビーの顔が似てますよね(笑)。子供がロボットと出会い、そのロボットの秘密やパワーがなかなかわからない中で、心が通じ合ってサポートし合う。知らない世界に来たロボットが不安を感じながらも、自分の使命を果たそうとする……。本当にスピルバーグ作品も含めた共通点が多いです。

CGは優秀な助演俳優

──「トランスフォーマー」1作目から、今回の「バンブルビー」まで、CGの進化をどのように感じていますか。

山崎貴

1作目の変形シーンは、それまでのどんな映画にもなかった衝撃でしたし、何より実写として説得力がありました。「トランスフォーマー」の初期の時代はCGが売りものでしたが、今や映画にとってCGは“当たり前”の存在です。映画がサイレントからトーキーになり、カラーになったように、あえてCGをセールスポイントにはできない時代になりました。僕自身も「ALWAYS 三丁目の夕日」あたりからそう感じていましたから。「バンブルビー」にしても、CGかどうかなんて、もはやどうでもいいんです。映画にとって重要なのは、物語やキャラクターの心のありようなんだ、という地点に戻ってきた気がしますね。よく言うのは、映画が“絵”だったら、CGは“立派な額縁”。CGはあくまでも優秀な助演俳優。その人がいないと映画はうまく機能しないけれど、あくまで中心にあるのは人間のドラマなんですよ。ただ、誰も観たことのない世界をCGでもう一度作ってみたい。CGを主演に返り咲かせたい、という密かな思いも少しだけありますね。

「バンブルビー」

──CGはあくまでも“助演”と言いつつ、「バンブルビー」のCGはやはりハイレベルですよね。

CGのバンブルビーと実写の人間が接触しまくってますからね。今までそんなことなかったですから。(主人公の)チャーリーを抱きしめるし、壁は壊すし、現場でどこまで実写で撮ったのかは気になります。バンブルビーがチャーリーの頭をなでるシーンは、髪の毛もCGかもしれません。でも、どこまでCGかなんて気にしないで観るべきなんですよ。

「バンブルビー」
2019年3月22日(金)より全国公開
ストーリー

父を亡くしたショックから立ち直れず、ふさぎ込んだ日々を送る少女チャーリー。彼女は18歳の誕生日に、近所の廃品置場で廃車寸前の黄色い車を見つける。それを譲り受けて自宅へ帰ると、車は突如として形を変え、“黄色い生命体”が姿を現して……。

スタッフ

監督:トラヴィス・ナイト

脚本:クリスティーナ・ホドソン

プロデュース:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、ドン・マーフィ、マイケル・ベイ、マーク・ヴァーラディアン

製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ブライアン・ゴールドナー、クリス・ブリガム

キャスト ※()内は吹替版

チャーリー:ヘイリー・スタインフェルド(土屋太鳳)

バーンズ:ジョン・シナ(楠大典)

メモ:ジョージ・レンデボーグJr.(志尊淳)

オーティス:ジェイソン・ドラッカー(藤原夏海)

サリー:パメラ・アドロン(津田真澄)

ロン:スティーヴン・シュナイダー

B-127(バンブルビー)の声:ディラン・オブライエン(木村良平)

オプティマス・プライムの声:ピーター・カレン(玄田哲章)

シャッターの声:アンジェラ・バセット(悠木碧)

ドロップキックの声:ジャスティン・セロー(濱野大輝)

ブリッツウィングの声:デイヴィッド・ソボロブ(山岸治雄)

山崎貴(ヤマザキタカシ)
1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年に「ジュブナイル」で監督デビュー。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」「STAND BY ME ドラえもん」など話題作を多く手がけてきた。2019年には監督作「アルキメデスの大戦」が7月26日、総監督と脚本を担当する3DCGアニメーション映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が8月2日に全国で公開される。

フィギュア / ミュージアムマスターライン「バンブルビー」バンブルビー ©2018 TOMY. © 2018 Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM & ® denote Japan Trademarks. Manufactured under license from TOMY Company, Ltd. For sale in Japan only. 「トランスフォーマー」「TRANSFORMERS」は株式会社タカラトミーの登録商標です。